05-14 交流会は波瀾万丈②
激しい戦闘を終え、これからの事について其々の陣営のトップが話し合いを持つ事となったので、黒船の甲板上で解散する事となり自由行動となった織田家と松平家の兵士達はそれぞれに興味をそそられた町の建物や、城に備えられた施設等を思い思いに訪れていた。
町の住居関係に関しては、イトウさんがモデルルームの案内をするので割愛させて頂くとして。今回は彼等の好奇心を刺激した【津島山自然公園】を中心にお話をさせて頂きます。
この全4階層に別れ秀吉により建設された津島山自然公園は、自然公園・観光施設・宿泊施設・防衛拠点と言う本来であれば相容れない筈の四つの要素を組み込んだ拠点であり。
最悪、日ノ本全ての大名達を敵に回した場合を想定し、外からの援助が得られずに孤立したとしても生活に困ることが無い様、敷地内に街と畑等の生産拠点を組み込んで設計された大阪城に似たコンセプトではあるが。
秀吉は亮太の援助と与えられた知識と技術を元にして更なる改築を今尚続けており、それはまだ共に建設に関わっている亮太達にしか明かされてはいない。
そんな津島山自然公園には、今回の防衛戦に投入された4000人近い数の織田家の兵士達に加え、増援で遥々来てくれた500人の松平家の兵士達が思い思いに休暇を楽しんでいた。
「くぅ~!! ここにあるお酒はどれも最高に旨いな!!」
「しかも美人な女の子達がお酌してくれるんだもんな……。俺永住したいわ」
「まあ! お侍さん達ったらお上手なんですから! ふふふ」
彼等には今日一日の疲れを落とすために津島で一泊する事が事前に伝えられていたので、中には既に防衛成功を祝して無償提供で特別営業を始めている和風な内装の酒場で料理をつつきつつ、勝利の祝杯をあげで浮かれ騒いでいたり。
「おお……貴重な紙が綺麗な純白なだけでなく、これだけの量を買っても格安で仕入れられるだなんて」
「この犬のぬいぐるみと言う奴は可愛いな!! 帰りを待ってくれている妻と娘の為に貰って買えるとするか!!」
「ゲホッゲホッ!! あー……この赤い色の煙が出るハバネロ煙草と言う奴は癖になるな!!」
それぞれ気になった品を手にいれたり、故郷にいる家族のために様々なお店を巡ってお土産を買っていく者達もおり。
「どうでしょうか先生? ワシの目は良くなるんでしょうか?」
「はい、大丈夫ですよ。朝昼晩と指しておけば視力が良くなる目薬を出しておきますので」
怪我の治療を診療所で受け、隣に建っている薬局で薬を受け取っている人達等がいた。
中でも盛り上がりを見せていたのは秀吉が気合いを入れて作った、三階層の半分近くを絞めているサバイバルゲームコーナー(以下サバゲーコーナー)である。
そのサバゲーコーナーに何が有るのかと言うと、先ず津島山の正面から見て三階層の左右両端に遊園地の様な入場ゲートがあり。
そこを越えると周囲をドーナツ状に囲っている石垣に隣接する形で、深さ6メートルの堀が有ったり、木々が残る森林地帯や、吊り橋が架かっている湖に砦までがあるサッカーグラウンド二つ分の広さを持つ競技用フィールドが存在し。
そのフィールドの周囲には弾が外に飛んでいかない様にする為に、特殊素材を用いた空色の透け透けのネットがくるりと囲っていて。その透明率の高いネットのお陰で、そこで行われている試合の様子はスポーツ観戦の様に外から眺める事が出来るようになっている。
またフィールド以外のコーナーには何が有るのかと言うと、右側のゲート付近に世界大戦で用いられた銃を中心にした実銃とモデルガンの両方で人間の上半身に見立てた的や、丸太の上に固定され中に粘土が詰められたペットボトルを撃つことが出来る射撃場や。
ゲートの両側に見た目はコンビニだが取り扱っている商品の半分が身に纏う装備や、モデルガンのレンタル販売までしているお店があり。
他には公衆トイレが点々とあったり、ゲートの左側には無料でお水とスポーツ飲料が飲めるウォーターサーバーや、個室タイプのシャワー室などが完備されているログハウスが何件か建っている。
そんな各地で実銃の射撃音とモデルガンの射撃音と共に男達の笑い声が聴こえてくる泥臭いコンサート会場に、二人の少年少女が右側のゲートから足を踏み入れようとしていた。
「思っていたよりも凄い熱気だね、康姉!!」
「皆激戦を終えた後で尾張の兵士達は休憩を取っていると言うのに、やはり三河武士が日ノ本一の侍達である事が証明された訳だな忠勝!!」
無邪気に自国の仲間達を誉め称えているのは、先の戦闘でも活躍していた僅か12歳と言う黒髪短髪の日に焼けた若き少年、本多忠勝と。
忠勝より一歳歳上で、141㎝程の身長と強気なおねえちゃんである事を伺わせる強い目力と、鍛えられ程よく筋肉のついたアスリート体形を持ち、少し茶色かかった前髪を左に別け、二本の短めのおさげを垂らしている本多忠勝と同年である13歳の少女であり。
彼女は桶狭間の合戦後、松平元康(徳川家康)に初めて謁見を果たし。
その後は自ら志願して忠勝と共に様々な訓練に参加し、好奇心旺盛で無茶をする忠勝の強気な姉を名乗っている良き相棒兼、お姉ちゃんでもある榊原康政である。
そんな二人の格好は津島に訪れる時に着用していた足軽用の胴と腕を守る鎧は既に脱いでいて。
今は亮太達により着替えとして提供された、それぞれ忠勝が赤、康政がピンク色の上下ジャージ姿にスニーカーと言う年相応の容姿で期待に胸を踊らせて訪れていたのである。
その期待する物は何なのかと言うと……。
「絶対にあの亮太と名乗っていたお兄さんが持っていた装備を手に入れて帰るぞ!!!」
「うん、その意気だ忠勝!!」
津島村での救援活動中に亮太達が身に付けていた近未来の装備を手に入れる事であったのだが……。
「あっ、ごめんなさいねー。このお店に置いてある物しか提供する事が出来ないんですよ」
「なっ、何だってー!?」
胸を踊らせ装備を貸し出してくれるコンビニとサバゲーショップを両立させた様なお店に訪れた二人に、レジで働いている優しそうな男性店員によって忠勝に告げられた言葉は大きく期待を裏切るものであった。
それもその筈、二人が訪れたショップには亮太達が使用していた【MP7短機関銃】の様な現代で用いられている銃ではなく、戦国時代と比べれば遥かに高い性能を持つ世界大戦で使用されていた銃しか扱っておらず。
防具に関しても、弾丸等から身を守ってくれるガチガチのボディーアーマー等は付いていない機動隊用の防具等が置かれていた。
「実は亮太さん達が持っていた装備は今回の交流においては軍事機密の為に支給される事にはなっていないらしくてねー。これから日ノ本との関係が良くなるまではどうなるか誰にもわからないんだ」
「なるほど……こればかりは時に任せるしか無い様だな……。忠勝、今回は我慢しよう」
申し訳なさそうに丁寧に説明してくれた店員の言葉を聴き、切り替えの早い康政は少ししょげた様子で忠勝を促すが、忠勝は諦めていなかった。
「いや! 俺は種子島の様な棒切れ見たいなカッコ悪い銃じゃなくて、あの小さくて格好いい銃を使って見たいんだ!!! 頼むよお兄さん!! 亮太さんを呼び出してでも、あの銃を試し打ちさせて欲しいんだよ!!」
「え? あのちょっとお客様ー?!!」
そう言って忠勝は間にあったレジを乗り越えて戸惑う店員に詰め寄って抱き着くと言う駄々っ子を始めてしまい、周囲でその様子を見ていた康政のみならず他の足軽達も顔を青ざめさせる。
「こ、こら忠勝!! 敵国の機密を無理矢理に聞き出そうとするだなんて、下手すれば打ち首だ!! 今回は諦めろ!!」
「ううう!! 止めないでくれ康姉!! このチャンスを逃せば二度と手に入れられなくなる、そんな予感がするんだよ!!!」
そう言って店員さんにコアラの様に抱きつき続ける忠勝を同じくレジを跨いで中に入り、何とか引き剥がそうとする康政が奮闘していると言う、一見すれば微笑ましい光景のショップの中で。
突然軽快な音と共に引き戸式の扉が開けられ、新たな入店者が現れた。
「ほーう、相変わらず三河の武士は後先を考えない脳が筋肉で出来ているようじゃの~う?」
「なんだと?! 三河武士を馬鹿にする奴は誰だ!!」
そこに立っていた者は黒いジャージにスニーカーを履いているまでは忠勝達と同じだが、何故かその上に金の装飾が施された赤いマントを羽織り、艶やかなセミロングの黒髪を赤色の紐で後ろでくくっていると言う色々とこじらせている信長の弟である織田信勝(23歳)と。
そのお付きとして後に続く鎧を身に纏ったままの柴田勝家であった。
「なっ、信長の馬……こほん。信長の弟である信勝様だと?!」
「おい三河の小娘ッ!! 今明らかにワシを馬鹿と呼ぼうとしておったよな?!」
「ふーん、相変わらず変な趣味の信勝様は脳みそがお味噌で出来ているようだね~?」
「少し旨いこと煽り返せただけでしたり顔をするでないわ小僧め!!! ふん、まあよいわ! 寛大なるワシは小さき事は気にしない海の如く大きな男であるからな!!!」
そう言いながら店内へとつかつか入ってきた信勝は三人の前に立ち、困惑している定員に向けていい放つ。
「店主よ、ワシに頭を垂れない非礼は許してやろう……。じゃがその代わりに!! 亮太殿達が持っていたあの格好いい銃をワシに売るーー」
「あ、すいません。それ家では扱って無いんですよー」
「なっ、なんじゃとー!?? ナンジャトー……ナンジャトー……」
思わず先程と同じ下りだったので食いぎみに答えた定員の予期せぬ返事に、信勝は驚きの余りに仰け反り、目を真ん丸に開きながらセルフエコーまでしてしまう程に仰天させられた。
その様子を見ていた忠勝と康政が思わず笑いだしてしまう。
「くっ……あはははは!! カッコ悪いな信勝様!! ここでは亮太殿が使用されていた様な最新装備は売ってないことぐらい、ちょっと考えれば分かる筈なのに!!! あはははは!!!」
「くくく……忠勝よりも見栄を切っていた信勝様の方がよっぽど……あははは!! 駄目だ堪えられない!!」
そんな二人の様子を先程は驚きの余りに真っ青になっていた顔を今度は羞恥心と怒りで真っ赤に染めた信勝は、二人に向かって白い手袋をした右手を突きだしていい放つ。
「ぬぐぐぐ!!! お主達……!! この織田家において二番目に重要人物であるワシを笑い者にしおったな……!! よろしい!! ならば決闘なのじゃ!! おまえ達、武器を借りて表に出ろ!!」
「おもしれぇ!! 堂々と織田家の家臣と戦えるだなんて中々に無い機会だ!! その喧嘩乗った!!」
「ちょ、ちょっと待て忠勝!? こんな大っぴらに楯突けばこれからの元康様の評判に雲が差すぞ!!」
思わず後先考えずに勢いだけで進む二人を慌てて康政が止めようとするのだが、二人は既に店内に置かれている気に入ったモデルガンや、防具の物色に夢中な様子で。片手に持っているカゴがパンパンになるまで詰め込み始める。
「うーん、出来るだけ取り回しが良くて、一杯撃てる奴が良いんだけど……。おっ、このMP38短機関銃って良いかも」
「ほーう……このりぼるばーと言う奴は、大きくて強力な弾丸を打ち出す事が出来るのか……。よいぞよいぞ……」
それぞれの吟味タイムはやがて終了した様で、二人は色々な期待と興奮が押さえきれ無い気持ちがキラキラとした瞳や、にやけ顔に出ていて。
殆ど同時にレジの上へとカゴを置いて、営業スマイルに戻っている定員に告げた。
「料金は織田家に付けといてくれ!!」「俺の出世払いで付けといてくれ!!」
その滅茶苦茶な二人の言葉を聴いた定員は穏やかに告げた。
「かしこまりました。本日は御試し会みたいなので、無料で提供させて頂きますのでどうぞルール説明を聴いて、楽しんで行ってくださいねー」
「やったー!! 流石亮太殿!! わかってるー!!」
「だったらここにある武器を全部試して見なくてはな!! 今日は暴れるのじゃ!!」
その言葉を聴いてより一層表情を輝かせた二人のピュアボーイ達は嬉しそうにハイタッチ仕合い、その様子を御付きの二人に笑われながら、自分達がレンタルした装備を店の外で装備して行くのでした。




