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04-09 語らい

・【その剣は、主の為に】の説明文が抜けていた部分を訂正しました。

・つかの誤字を修正いたしました。

・ラストシーンを修正しました。(2018年 1/31)

 白塗りの部屋にあるベットの上に二人の男女が別々の部屋で拘束されていると言う不可解な状況で、亮太の命を保証すると言う約束を前提に始まったマリナに対する尋問は、亮太とマリナにとって正に胸をえぐる為の物であった。


「では、最初の質問とさせて頂きますねマリナさん……」

 《はい!》


 どんな試練であっても乗り越えて見せようとする意思が感じられるマリナの返事を聴き、尋問者であるリチャードは気に触ったのかピクリとこめかみを震わせてから一つ目の質問をする。


「先ず、貴方達は過酷な戦場に自らが駆り出される事を知っていた上で、神を名乗る者達に協力する事を決めたのですか?」


 《はい。私はこれから訪れるであろう転生者達の安全を確保する事、そしてより良いサポートを出来る様に訓練を受ける事を前提とした契約を結びました》


 その答えにリチャードは何か思っていた事と違う答えを聞いたためか「ふむ……」と小さく溜め息を吐いてから、今度は角度を変えた質問をする。


「なるほど、それは転生者達が命令に従わずに反抗した場合を想定した訓練も含まれていましたか?」


 《それは……えっ……?》


 思わず言い淀むマリナであったのか、彼女の耳につけられたピアスが突然淡く光だし。マリナは身体を一瞬ビクンと震わせてから、虚ろな目で答え始めた。


 《はい……もしも転生者の方達が暴走した場合……私が反抗する転生者の始末を……する事になっていました……》


 その都合の良い答えを得たリチャードはにたりと笑みを浮かべ、彼女の解答を冷や汗を額に垂らしながら聴いていた亮太に感想を聞く。


「どうかな亮太くん。彼女が決して君の為に純粋に付き従うサポーターでは無かった事が分かってしまった訳だけども?」


「それは……最悪の場合を想定した場合でしょう!? しかもマリナの様子があの怪しげなピアスが光はじめてからおかしくなったのは何故なんですか?!!

 貴方達が無理矢理にその様な事を語らせている可能性が産まれてしまった以上、この話し合いに意味は無い筈です!!!」


 その感情に任せて必死に語る亮太の訴えを聴いたリチャードに鼻で笑われてしまう。


「あのピアスはね、以前共に戦場で戦ったアクセサリーに特殊な力を持たせる事が出来る戦友に貰った物でね。あのピアスをはめられた者は全ての事に正直に答える人形の様になる仕組みになっている……」


 そう言ったリチャードの目と口はそれが紛れもない真実である事を確信している様に、何処までも真っ直ぐなものであり。


 彼は悔しさの為か、ワイシャツの小さな左胸ポケットに手を当てて悔しそうに怒りを籠めて呟いた。


「……お前も私達と同じ様に騙されている被害者の一人である事が、彼女の解答により確定してしまった訳だ」


 そのまだ確信するには些か早すぎるリチャードの考えに亮太は堪らず反論する。


「待ってくれ! あんただって武器を持った強盗がいた場合、その暴走を止めないと行けないと考えるだろ!? マリナが言っているのは最悪の場合にどう対処すれば良いか教えられた事を答えただけだ!!」


「そう言うがな亮太くん、我々は彼女の様に同行していたメイド服の少女に作戦に異議を唱えた仲間を殺されているんだ!!! それすらも正当化出来ると言うのか君は!?」


 その予想だにしない反論に亮太は必死になって言葉を探す。


「す、少なくとも私達が彼女と共に虐げられている人達を助ける任務に就いている内は、彼女は身体を張って私達の事を助けてくれたし、危害を加える様な事はしていない!!」


 その必死な亮太の弁護をリチャードは夢見勝ちな少年だと言わんばかりに鼻で笑い、再び尋問を開始する。


「そこまで言うなら直接聴いてみようじゃないか……。マリナ、君は命令されたのであれば亮太くんを殺せるか?」


 《え……》


 自白薬の様な効果を持つピアスをつけられて、朦朧としている意識の中であってもマリナはその質問の意味を理解できず、旨く解答する事が出来無かった。


「繰り返し聞くよ。君は、命令であれば亮太くんを殺す事が出来ますか?」

「いい加減にしろよあんた……!! 何だってそんな酷いことをマリナにーー」


 思わずマリナを追い詰める様な質問を続けるリチャードに、亮太が怒鳴ったその時だった……。


 《出来……ます……》

「マリナ……?」


 それは子供が泣きながら謝罪しているかの様なとても小さく、胸を締め付けられる様なマリナの悲鳴であった。


「は……ははは……。マリナ、君は命令されれば亮太くんを殺せるんだね!!」

 《ひっぐ……はい……私は、うっうう……亮太さんを……殺す事が……うぅ……出来ます……》


 まるで証拠を掴んだかの様に生き生きとした様子で、この世の絶望を味あわされて号泣しているマリナを写す天井のモニターを指差して、リチャードは歓声をあげる。


「どうだね亮太くん!! 君がどれだけ危険な者達に信頼を置いていたかを理解できただろう!? 君も私達と同じ様に、何時背中から討たれるか分からない状況にあると言う事だよ!!!」


 その声はどうやら泣きじゃくるマリナにも聞こえたままであったらしく、ふと我に帰ったマリナが声をあげる。


 《え……今の話、亮太さんも聴いて……?》


 壊れた彼にとってその質問は甘いデザートの様に感じられ、彼は狂喜に満ちた目を見開いたまま満面の笑顔で答えた。


「あははは! 喜びたまえマリナくん!! 君がずっと抱えていた思い煩いの種を君は自らの手によって取り除くことが出来たんだ!!! その影響で、私の隣にいる彼はベットにもたれ掛かって震えているけどね!!! はは……あはははは!!!」


 そのとんでもない暴露を聴かされたマリナの目に光が戻ったが、それと同時に彼女の中の何かが壊れてしまう。


 《は……ははは……嘘だよね……そんなの……。それじゃあもう……亮太さんと一緒に……》

「居られなくなって仕舞うよねぇぇ!!! 自分の命を狙っている人間何かと一緒にいたいだなんて誰も思うわけ無いもんねぇぇぇ?!!」


 何とか心の中で捨て去ろうとしていた可能性をリチャードに悪魔の様な声で論破されたマリナは目を見開き、血の気も希望も失せた彼女は悲鳴をあげながら泣きわめく。


 《嫌だ、嫌だよぉぉ!! やっとわかり会えて来たのに!!! お母さん以外で初めて出会った大切な人なのに……!! こんなのあんまりだよぉ!!! うわぁぁぁ!!!》


 その絶望に沈むマリナの様子を見たリチャードは、一仕事を終えたとばかりに胸ポケットから煙草とライターを取り出して煙を深く吸い込み、満足そうに吐き出す。


「……悪魔の使いが、何を偉そうに。これで分かったでしょう亮太さん、彼等が決して私達の味方では無いと言う事ーー」


 そう言ってリチャードが顔を苦痛に歪ませているであろう亮太の顔を見るため、先程からベットに頭を名一杯埋めると言う不審な行動を取っていた彼の顔が自らの影がかかった所で、


「オラァァ!!!!」

「グボォアァ?!!」


 限界まで力を溜めていた亮太のビックリ箱の様な頭突きをモロに顔面で受けてしまい。リチャードは鼻血を吹き出しながら後方に吹き飛ばされ、身体を何度か床に打ち付けてから身体を痙攣させながらノビてしまった。


 それを確認した亮太は朦朧とした頭の中で、本能に従って動き始める。


「マリナが泣いてる……慰めてあげないと……」


 天井にあるモニターには替わらず、痛々しい程に泣きわめくマリナの姿と声が響いており。

 亮太は朦朧とした意識のまま立ち上がろうとするのだが、がっちりと太い蜘蛛の糸の様に固められた拘束具はびくともしない。


 そこで亮太は脳内で消耗している今の自分に先ず出来る事を模索する。


「取り合えず、ソルトとハルちゃんに戻って貰おう……」


 そう言って亮太が先ず取った行動は、現在外で活躍しているであろうその二人を回収すると言うもので。


 それには力を取り戻す事の他にも意味があって、【騎士達の誓いVer2】に収録されている味方の士気と各騎士達と召喚者の戦闘力が強化させるボーナスカードである【その剣は、主の為に】を発動させる条件として【騎士達だけで軍団を編成した場合】と言うものが設定されていて。


 今回の作戦目的が敵との戦闘では無く、救出任務であるが故にそれほど意識されていなかった為に活用されずに埃を被っていた訳なのだが。


 転生者であるラムセスとルルは召喚された者には含まれていない様なので、これにより外にいる騎士達と亮太の能力がカードを二枚所有している事により、能力が4割り程上昇する事となる。


 そしてこの判断が地上で戦っていた仲間達を救う結果に繋がって行く事はまた別の話となる。


「ソルトの怒りを感じるけどこいつは凄いな……。身体に力がみなぎって来るのが良くわかる……」


 亮太はここに来るまでに大軍を召喚した事と、城壁、そして4機のパワードアーマーを召喚した際に失われた力を半分程取り戻す事が出来た。


「じゃあ、この糸を破って貰うとするか……」


 そう言ってベットの隣に召喚されたのは白銀のフルプレートアーマーを身に付けた熟練の騎士《Rank,N》五人であり、最初はリチャードの鼻血によって血塗れになっていた亮太に彼等も戸惑いはしたが。


 亮太は「気にするな」と彼等を制した後、その剣をもって糸を断ち切る様に命令する。


「か、畏まりましたマイマスター! 失礼致します!」


 そう言って彼等が両手両足に絡み付いている糸を切れ味抜群の両刃剣で慎重に取り除いてくれたお陰で亮太は自由となり、すかさず気絶しているリチャードを睨み付けながら騎士達に命令する。


「……その男を引き連れて地上に戻ってくれ。後はまた違う仲間達に頼んで何とかするから」

「はっ! 畏まりました!!」


 そう言って命令に忠実な彼等は先程まで亮太を拘束していた白く太い糸をリチャードに巻き付けて、アスパラベーコンの様にしてしまい。

 その様子を見て取った亮太が、一度確認出来た場所ならば何処えでも連れていける転送の杖を用いて一人づつ外へと送り届ける。


「マリナ、直ぐ行くからな」


 亮太は顔に着いている血を着せられていた白い検査着で拭き取り、その血まみれになった検査着を脱ぎ捨てて馴染みのある機動隊用の服と防具と89式小銃とリボルバー式拳銃等の装備を身に纏い、戦闘体勢を整えるのだがある事に気づかされる。


「この部屋、出口が無いぞ……」


 どうやら捕虜の逃走を警戒して部屋を作成した者が牢屋を扉の無い部屋にしてしまったらしく、どう出たら良いものかと亮太は悩まされる事となる。


 そんな所であった、突然マリナが監禁されている部屋にアジア系の男が乗り込んできたのは。


 《さっきからキャンキャンうるせぇぞ小娘!! 廊下中にお前の泣き声が響いているお陰で落ち着けやしねぇじゃねーか!!!》


 《きゃあ!?》


 そう言って白い無地のTシャツに黒いジーンズと言うラフな格好の男は、突然の男の乱入に戸惑っているマリナがいるベットの上に登って、彼女の全身を舐め回す様に見詰めながら一言呟く。


 《……誰も見てないし、良いよな?》


 そこから本能のままに動き始めた男の行動は速かった。


 《いやぁ!! やめて!!》

 《うるせぇ!! こっちに来てから俺は散々な目に会ってきたんだ!!! これぐらい許されなきゃやってられっかよ!!!》

 

 先ず、嫌がるマリナのお腹の上にのしかかり。彼女の身体が動けない事を良いことに、身に纏っていた薄い検査着を力に任せて引きちぎり始める。


「マリナ!!! この野郎!!!」


 その衝撃的な現場を見せられた亮太は小銃の安全装置を解除し、ボルトハンドルを引いて薬室に初弾を装填してから、迷わずに使いきりの奇跡《Rank,UR+》を発動させる。


「いい加減にしやがれバカ野郎ッ!!!」

「何だ……アー!? ぎぃゆわぁーー!!?」


 マリナが強姦されている部屋にワープし、男の真ん前に現れて間を開けずに男の股間を蹴りあげ、男の体が宙に浮いてマリナの身体に被さる前に男の胸ぐらを掴んで引き寄せてから、正面の壁に投げつけると言う豪快な技を決めてみせ。


【出】と言う漢字の形で壁に叩きつけられた男は、そのまま壁にめり込んだまま蚊の様にぴくつきながら気絶した。


 その一連の流れに着いていけてないマリナは半泣きの状態で「え? え?」と震える声を吐きながら混乱するばかりであったが、自分の頭を踏まないように仁王立ちで立っている男が防護ヘルメットを脱ぎ捨てたので彼が誰なのかを理解し、思わず息を詰まらせてしまう。


「亮……太さん……」


 悲鳴の様に漏れた声を聴き、気絶した男から彼女へと注意を移した亮太は慌てて左側からベットを降りて、彼女に声をかける。


「マリナ、ずっと嫌な思いをさせて本当にごめん! 怪我は無いか?!」

「なんで……」

「え」


 思わず怒りに任せて暴れ尽くし、我に帰えった亮太が彼女にかけた言葉は辛い思いをし続けていたであろうマリナに対する謝罪であり。


 それは心が余りの罪の意識で決壊してしてしまった彼女を救う物では無かった。


 だからこそ彼女は堪えられなくなった激痛を泣き叫ぶ。


「何で、何で私の事を怒ってくれないんですか?! 何故軽蔑してくれないんですか……!? 私は、私はずっとずっと亮太さんが私の事を信頼してくれている事を知っていながら、あの人の言う通りもしもの時は命すら奪う覚悟を持っていたのに……!!! 何で……!!?」


「俺はマリナが側にいてくれ無ければ今まで通り只のアルバイターのまま、駒の様に生きられれば良いと思ってた!! だけど、その……!! マリナが全力で俺と一緒に色々な事と戦ってくれたからここまで来れたんだよ!!」


「そんなの嘘です!!! 亮太さんは私なんかよりも器用で、色んな事を知っていて、不器用だけど困っている人を見捨てない優しい人です!!!」


「だけど俺は平和ボケしてるし、危機管理も出来てないし、放っておけば余計な事にまで首をつっこんじまう!!! マリナ、君が居なければ俺はここまで生き残れていない!!! 

 こうしてここに居られるのはマリナ、君が僕の事を支えて……くれたから……じゃないか……。うっ……」


 感情の波を抑えきれず、亮太は話の途中で思わず涙ぐんでしまい。

 それに気がついたマリナも貰い泣きし始め、不器用な凸凹コンビである二人は嗚咽を噛み殺しながらそれでも顔を背けずに話続ける。


「でも……でも……!」


「……マリナ、この旅の中で君の優しさも、君の弱さも、君の抱えている物が何れだけ重いものかも気づけた。だからこそ言うよーー」


「亮太さん……?」


「僕はマリナが誰よりも好きだ。例え元々犬であろうが、年下であろうが、僕の命を狙っていようが関係無い!! 愛している人と一緒にいたいと言うことは苦楽すら共にしたいと言うこと何だよ!」


 最早、何でも屋の亮太と言う存在を演じていた青年は本来の自分をさらけ出して嗚咽を堪え、目を潤ませているマリナに“心からの告白”をする。


「だからこそ、これからはどうか僕にもその抱えている物を持たせて欲しい。僕と恋人としてお付き合いしてください!!」

「え、ええええっーーー!!?」


 その言葉を受けたマリナは顔を真っ赤にさせながら言い返す。


「ななな、なんでそんな大切な事をここで言うんですか?! そう言う言葉はもう少し積み上げるべき段階って物が必要なんじゃないですか?!」


「今言わなきゃ、2度とマリナに思いを伝えられなくなる。そんな気がしたんだ!」


「だからって……ああ、もう!!」


 頭の中を色んな思いが一度に押し寄せて来たせいで、激しく混乱させられてしまいながらも、彼女は腕立て伏せの様な姿勢で、自分の事を上から見つめている亮太に瞳をうるうるとさせながら見上げる形で視線を合わせる。


「……亮太さんの気持ちはとても嬉しいです。でも私、正しい恋愛の仕方なんて知らないから……」


「僕だってそうだよ。子供の頃色々あって女性の事は苦手だったしね。だけどマリナは正面から僕と向き合い、支え、励ましてくれた。そのお陰でこんな僕にも目標が出来たんだ」


「目標……ですか?」


 思ってもいなかった亮太の返事に、小首を傾げるマリナに亮太は穏やかな表情で頷く。


「そう。今までダメダメだった僕自身が、今度はマリナが与えて来てくれた以上の愛情で答え続けて生きたいんだ。マリナ。だから、これからも共に生きて欲しい!! マリナとはもっと話しあいたいことも、分かち合いたい事だって溢れる程にあるんだ!!」


「亮太さん……」


「頼りないとは思うけど、今一度、僕を信じて欲しい。マリナを必ず幸せにしてみせるから」


 その熱い告白を顔だけでなく、両耳まで赤くしながらも目を背けずに聴いたマリナは、観念したかの様に微笑みを浮かべながら答えた。


「亮太さんは凄く、凄く卑怯です……。後悔しても、もう遅いんですからね、亮太さん?」


「ああ、任せてよマリナ……」


 一番身近にいながら実は心の奥の方ではすれ違っていた二人はその日、御互いの思い重ねる様に唇を重ねた。



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