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05-28 激震!! 三河一向一揆⑩

かなりお待たせしてしまい、すいません!

 亮太達が戦闘に入った頃はまだ夕暮れだった日ノ本の時刻は既に夕暮れを越え、海が微かに夕陽に照らされて茜色に染まり、空には澄んだ夜空に浮かぶ星達が彩る昼と夜の狭間にある、幻想的な世界が広がりつつありました。


 しかしその美しい景色すらも怨んでいる様な、醜い邪蛇の雄叫びが、岡崎周辺に轟きます。


『キシャァァ!!!』


 その雄叫びの発生源である場所は、長年に渡り松平家が敵対してきた宿敵織田家に対抗する為に菅生川と矢作川の合流地点にある【龍頭山】という丘陵の上に建てられ、その周囲の土地に兵士達が待機する兵舎を備え。周囲を巨大な外堀で囲われた平山城であり。


 戦国時代の中でも戦略的価値がとても高いと評価されていて、数時間程前までは立派な石垣の上に三階建ての階層を持ち、松平家のシンボルとして深く信頼されていた岡崎城の本丸の内側からは、まるで鳥の雛が卵の殻を破る様にして、日本神話に登場する【ヤマタノオロチ】に似た大怪獣がうねっていました。


『シャァァァ……!!』


 空に浮かぶ雲に届きそうな程に長く、八本もの巨大な首と巨体を“持っている化け物”は、自身の視野の遥か先にうっすらと見えている、自らの野望を阻まんとする妨害者達に対して強い憤りを抱いています。


 何故ならば、夕焼けが美しい遥か水平線の先へと沢山の船が逃げて行った方角をよく目を凝らして見て見ると、微かに見える黒い煙りと海鳥達に交じって、何かがこちらに飛んできているのが分かったからです。

 そして、その光輝く物の正体は先程頭上で大爆発を起こした、八つからなる鉄の砲弾達でした。


『キシャァァァ!!!』


 一度、その砲弾による攻撃をヤマタノオロチは受けても平気で有った事も有り。負け犬が吠えて来たと言う程度にしか危機感を感じていません。

 しかし、二度目に放たれた【戦艦長門】からの砲撃は先程の様な威嚇射撃とは全く異なっていました。


『ーーーーーー!!!?』


【戦艦長門】の主砲である4基の41㎝連装砲から雷の如く豪音と共に飛び出し、ミサイルの様に翼が付けられた砲弾は再度岡崎城上空へと急接近。

 やがて予め定められた時間に起爆する様にセットされたタイマーと、魔力を弱める効果を持つ【対魔力拡散粉末】が弾頭にセットされた八発の砲弾は、地面に着弾する前に化け物に生えている八本の内、5本の首を貫通する事でへし折ります。


 そして根元から切り離された首はボウリングのピンの様に吹き飛ばされ、ある首は目と口を開いたまま田園に激しく転がり、また有る首は川に頭を突っ込み、有る首は殆ど原型を留めていない状態で外堀にはまってしまいました。


『ーーーー!!? ーーーーー!!???』


 そしてその後、彼等が痛みで悲鳴をあげる間も無く、最早複数の砲弾により巨大なクレーターと化してしまった岡崎城周辺の地面に深くめり込んだ砲弾から、突然殺虫剤の様に大量の白い煙りが発生。


『クァァ……!!』


 その城全体を包み込む程の白い霧は勿論只の霧ではなく、魔力を著しく弱体化させる効果を持つ、対魔力粉末であり。

 一発の砲弾だけでも以前亮太達が戦った、魔石化したラムセスすら無力化する効果を持っています。


『グル……ルルルル……』


 やがて黒煙と白煙が入り交じった中に浮かびあがる、残ったヤマタノオロチの全身は白い粉にまみれていて。まるで揚げられる前の天ぷらの具材の様なファンシーな容姿となっおり。

 本来であれば、自らの姿を魔力を持って無理矢理変貌させているであろうヤマタノオロチはこの時点で力を失い、身動き一つ取ることすら困難である筈です。しかしーー


『シャ……シャァァァァ……!!』


 水の様に澄みきった水色の身体に白い粉末を吹き掛けられ、砲弾に体のあちこちを打ち抜かれて醜い姿になってしまった化け物の戦意は、何故か衰える処か増している様にすら見えます。


 やがてそのギラギラとした目は、遥か先の海を進む三隻の駆逐艦の装甲すらケーキの様に切り裂いて見せたウォーターカッターによる攻撃を、狙った村人を助けるだけでなく、弾いてすら見せた大盾を構える二人の獲物。

 そして、遥か上空を妙に耳に残る甲高いジェットエンジンの音と共に、視線の左上の先で左旋回している一機の偵察機に向けられていました。


「くっ、どうやらやっこさん此方に気がついたみたいだ! 映像はちゃんと撮れているか?!」

「はい! 地上にある村の状況も合わせてバッチリ録れてますよ!!」


 動揺する【RF-4EJジェット偵察機】のパイロットに対して、威勢良く答えて見せた後部座席に座る撮影担当の彼の言うとおり。

 ヤマタノオロチに似た化物と、その化物から襲撃を受けている【三河額田郡浦部村】の様子は、岡崎城周辺の様子を記録する為に再度【空母大鳳】から出撃した【RF-4EJジェット偵察機】の下部に装備されている、低高度パノラマ・高高度パノラマ・前方フレームの3種のカメラを通して遠距離からの撮影がされていました。


 彼等は自分達が出撃する前、自分達と同じ偵察機で任務に向かったが、何等かの形で機体の操縦が不能となり、地上へと撃墜してしまった一番機の事例を踏まえ。

 撃墜のリスクを出来る限り減らす為、岡崎城からかなりの距離と高度を取りながら飛行しており。

 飛行機から見て左側にカメラを向けつつ、ヤマタノオロチを中心に反時計回りで旋回する事で安全マージンが得られる、超遠距離撮影をしていました。


『シャアァァァァ!!!』

「うおっ、こっち見てますよ!!」

「退避するぞッ!!」


 先程までは亮太達がいる村に対して頭を向けていたヤマタノオロチですが、遠くから自分を監視している邪魔者を排除する為、そのキリンの様に長い三本の頭をゆっくりと視線の遥か遠くの上空にチラチラと映る偵察機に向け、その三つの口を開けます。


 そして何をするのかと思う前に、まるでうがいをするかの様にヤマタノオロチは『ゴロゴロゴロ』と喉を鳴らし始め。

 次の瞬間、艦隊や、亮太達を襲った時と比べると細いが、大地を切り裂く程の切れ味を未だに持つ三本のウォーターカッターは、星が輝き出した大空へと放たれ。

 急速に視界から腹を見せながら遠ざかり始めた、偵察機にその線が後数秒で届こうとするのですがーー


「A.M.F.(アンチ・マジック・フレア)放出ッ!!」


 偵察機がウォーターカッターに捉えられるその前に、偵察機のお腹の部分から花火の様にキラキラと光る大量の火の粉が撒かれ、その大量に撒かれた火の粉にウォーターカッターが接触した所で、ウォーターカッターのその威力はまるで蛇口を締められた水の様に、大幅に軽減されて消滅します。


『シャァァ……!!!』


 その一部始終を目撃したヤマタノオロチが動揺を隠せずにいる中、頭上で先程から何度も起きている鼓膜をぶち破る程の大爆発音や、衝撃波だけでなく。

 バケツをひっくり返した様な大量の粉と共に、鉄の破片と熱風がヤマタノオロチに襲いかかります。


『ギィヤァァァァァ?!!』


 その結果、先程までは青白く美しかったその身体は、まるで刺だらけのイバラの様な痛々しい姿に変わり果て、その余りの痛みの為に遂に出たヤマタノオロチの大絶叫が岡崎城周辺にこだまします。



 ーーーーー◇ーーーーー



「【長門】による砲撃と誘導式噴進弾(ミサイル)による爆撃により、ヤマタノオロチの魔力量の大幅な低下を確認したとの事です!」


「ふう……了解しました。【長門】には先程と同じ、対魔力砲弾の再装填を急ぐようにと御伝えください……」


 そう表面上は落ち着いた口調で、【空母大鳳】の艦橋の中で共に居る通信兵とやり取りをしているのは、艦隊の指揮を任されている少女ナグモであり。

 先程からヤマタノオロチに対して行っている猛烈な反撃の結果、良い戦果報告を得られているにも関わらず、彼女のその表情はとても険しく。頬に一滴の冷や汗すら垂らしています。


 その理由は、先程ヤマタノオロチにより艦隊が受けた先制攻撃による被害が彼等が思っていた以上に酷い物であったからでした。


(……先程受けた化け物からの良くわからない攻撃により、我々は三隻もの駆逐艦を成す統べもなく大破させてしまいました……!! これ以上の失態は許されません……!!)


 岡崎城から約50キロ近くと言う超遠距離から、ヤマタノオロチにより放たれた複数のウォーターカッターに対して。

 第二次世界大戦中の旧日本軍の軍艦で、尚且つ速度を出すために装甲が薄い【陽炎型駆逐艦】で有るとは言え。

 たった一撃で、まるでケーキが切られた様に軍艦の先端部分である艦首や、胴体等が皆、真っ二つに両断されてしまった光景を唖然とした表情で見ている事しか出来なかった事を思いだしながら、ナグモは震えながら続ける。


(損害を受けた艦。及び搭乗員が、直ぐ様閣下により無事に回収されたとはいえ……。このままただ逃げ帰るのならば、決して許されるものではありません……!!)


「ナグモさん。ナグモさん?」


 特に旧日本海軍に取って“軍艦”と言う物は只の兵器としてではなく、“天皇陛下から頂いた大変貴重な船である”と言う認識が旧海軍には有り。

 初見殺しとは言え、いきなり三隻もの艦船を戦闘不能にさせてしまった責任に、過去のトラウマも相まってナグモは押し潰されそうになり。肩と声は震え、目には涙が滲み出してしまいます。


(このままでは閣下に御見せする顔が無い……。汚名を覆すには……それ以上の功績で応えなくてはなりません……!!)

「……えい」


 そんな彼女の右頬をしなやかで、白い誰かの手がつねります。


「いひゃはぁ?!! なひほふるのへふか、クサカひゃん?!!」

「さっきから顔色が青くなったり、白くなったり忙しそうだったので……つい」


 そう言って何の反省も無さそうな澄ました顔で、今も慌てるナグモの頬をつねっているのは艦隊の補佐官を任されている、クールな眼鏡少女クサカであり。

 彼女はナグモの顔が真っ赤になった所でその手を離した。


「あいたた……。もう、クサカさん!! 今は作戦行動中ですよ!? 遊んでいる場合じゃ……」


 両手をばたつかせながら怒っているナグモに対して、クサカは表情を変えずに、飽くまで冷静に答える。


「はい。ですので困っていたのです」

「え……それってどういう……。あっ……」

「お気づきになられましたか?」


 冷静になったナグモがふと、艦橋内を見渡して見るとそこには自分の事を心配そうに見ている船員達がおり。ナグモが我に返った事を確認したクサカは、A4サイズの一枚の白い紙を手渡す。


「先程から何度か呼び掛けていたのですが、声が聴こえない程、追い詰められていたみたいだったので」


 その一言を聞いたナグモは自分がパニックに陥っていた事を理解し、皆に真っ赤になった頭を下げつつ「はうっ……。ごめんなさい皆さん……」と告げてから手紙を受け取った。

 そこには亮太からの“ある指示”が書かれており、慌ててナグモは穏やかに此方を見ているクサカに指令を出す。


「クサカさん! 閣下からの指令通り、偵察機で撮影している映像を【護衛艦ひゅうが】を中継して【タイタニック号】へと送ります!!」

「はい。準備は出来ております、ナグモ司令」


 指示が出されてからこの時点で四分程が経過していたが、この後、ヤマタノオロチを映した映像は松平家と織田家の面々が乗っている、【タイタニック号】へと転送される事となる。



 ーーーーー◇ーーーーー



「いったい何が……」

「奴等めッ!! 姫様とワシ等が席を空ける時をじっと伺っておったのか!!」


 彼等が声を荒げているその場所は、【タイタニック号】の甲板上から下に数えて三階層分設けられているレストランの様な場所で。

 赤を基調とし、金の装飾が施された洋風の高級カーペットが床一面に敷かれ。白いテーブルクロスが敷かれた、一度に六人の乗客が左右に別れて座れる長方形のテーブルと六つの茶色の椅子のセットが大量に設置されており。

 その周囲には床から天井目掛けて支柱が複数本立っていて、支柱の真ん中部分の上下左右、各四面に立て掛けられた、ノートパソコンのモニターに近い20インチ程の液晶モニターがあり。

 そのモニターを通して、撮れ立て新鮮なカラー映像は戦闘を繰り広げている亮太達のみならず、松平家と織田家の人々が乗船している【タイタニック号】にも動画として届けられていました。


「ごほっ!! ごっほ!? おじさん達が居る筈の岡崎城になんであんな化物が居るんだよ!?」


「これは……真の事なのか……?」


 その映像を見て驚愕して蒸せているのは、先程まで目を輝かせてウェイトレスさんによって持ってきて貰ったコシのある狐うどんと鮭おにぎりを美味しそうに平らげていた本多忠勝であり。

 彼の左隣に居る戦友の榊原康政も、思わず橋を止めて呆然としていた。


「……あんな事になっちまってるなら」

「ああ……」


 周囲に居る本多家の面々は直感ではあるが岡崎城の守りを任されている同じ本多家の親族達が無事では無いことを悟った。


 その非現実的な映像から目を離せなくなってしまっているのは松平家だけでは無く、織田家の面々も目の前に映し出されている、神話を現実にした様な映像の中で、岡崎城をタコツボの様にして居座っているヤマタノオロチ以外にも度肝を抜かれる物が映っている事に気がつきます。


「おい! 良く見たら城下町に住んでいる人達が皆倒れてるぞ!!」

「本当だ!! 霧で良く見えないけど倒れたままでピクリとも動いてないぞ!!」


 彼等の声に反応したかは分からないが、亮太達が居る村を見下ろす形で視線を向けて三つの大口を開けて、今も空を飛んでいる偵察機を威嚇しているヤマタノオロチから映像は下の方へと降りて行き、彼等が注目していた城下町の方へとカメラが移ります。


「なっ……うわ……」

「何があったらあんな事になるんだ……」


 歴戦の勇士達であっても思わず小声になってしまう程の衝撃を与えた映像とは、岡崎城内に設置されていた住居に住んでいて、身体をロープでぐるぐる巻きにされた老若男女の人達が、乾ききったミイラの様な姿で目を開けたまま倒れている姿でありました。


「…………」

「おい!! これはどういう事なんだよ!? 誰か説明してくれ!!!」

「あの倒れてる子……まさかゆみちゃんじゃないのか……?」


 その中には船に乗船している三河出身の者達の知り合いも勿論おり、有るものは言葉を失い、有るものは動画の意味を問い、有るものは変わり果てた知り合いの姿に動揺します。


 しかし、そんな者達の中でも冷静さを保ちつつ、画面を凝視している者も居ます。


「……ふん。ズルズルッ!! 焦って尻尾を出しおったなバカ坊主め……ズルズルッ!!」


 織田信長の弟であり、今は自分達を助けに来てくれた松平家を守る為に、共に【タイタニック号】に乗船し、お供として連れてきた柴田勝家と豪快に狐うどんを啜っている織田信勝である。


「やはり、数年前本願寺の奴等が南蛮人から魔石を手に入れたと言う情報は、本当だったのですな……」


「ふん! ズルズッ!! おおかた石ころの使い方もよく分からん内に使って、取り返しがつかなくなったんじゃろう!! ズルズルッ!!」


「ん? 信勝様。奴等が石を使った後、取り返しがつかなくなったとはどういう意味ですかな?」


 引っ掛かる言葉が気になり、尋ねて来た柴田に対して信勝は近くを歩いているウェイトレスにうどんのおかわりを頼んでから答える。


「あの映像が本物の現地の物なら……。縄で縛られている人の横で、【浄土真宗】の旗を背負いながら同じ様に倒れてる奴は何なのじゃ?」


「何ですと……!?」


 その指摘を受け、改めて柴田がテレビに映っている幾つかの映像に目を通す。

 すると信勝が指摘した様に、縛られた地元の人達だけでなく幾人か【浄土真宗】の旗を背負っていながらも、同じ様にミイラ化している者がちらほらと確かに確認出来た。


「むっ、確かに……!! と言う事はあの化け物は、奴等が意図せずに産み出してしまった化け物であると!!」


「……ズルズル。あくまで推測の一つじゃが、少なくとも奴等の計画通りでは無い部分もあるじゃろな。……ん?」


 そんなやり取りをしていると、ふと信勝の視線の先、食堂の外側の廊下を慌ただしく機動隊の防具を身に着けた朝露国の兵士達が慌ただしく動いているのが見えた。


「ふーん……?」


 その中には数時間前、サバイバルゲームで見掛けた【渡辺】の姿があった。

 彼の事を信勝は兄である信長から「彼は間違いなく、本物の元康の亡き父で有った」とわざわざ伝えられていた事も有り、自然と視線が外せ無くなる。


「…………お盆はまだじゃが、確かめてみるかの。勝家、付いて参れ」

「はっ」


 そんな信勝の態度と視線の先を確認した柴田勝家は、文句も出さずに共に動揺が広がる食堂の席を立つのだった。




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