SMに目覚めた転生悪役令嬢は今日も豚を叩く
乙女ゲームの本編が終わった後の令嬢のお話
ピシィッ!
「あひぃいいっ!」
「あらあらいけない豚さんですこと…貴方は豚ですのよ?豚さんはそんな鳴き声ではありませんでしょう?」
ピシィッ!
「ぶひぃいいいいいっ!」
とある国の貴族が住む屋敷の薄暗い地下の一室で、女が鞭を打ちそれを受けて男が悲鳴とも嬌声とも取れる声を上げる。
「ねぇ豚さん…?私言いましたわよねぇ?領地の改善を図るように…と…ねぇ豚さん?これはどういうことかしら?どうして税金がまた上がっているのかしら?」
「そ、それは領地を改善するためには相応の金が必要になるからであって愚民共から徴収するのはとうぜ」
突き付けられた書類を見ながら男が早口に喋ろうとすると女の持つ鞭が奔り。
ピシィッ!
「んぶぅあああああっ!」
「おかしいわね?醜い豚さんが人の言葉を話した気がするわ…疲れているのかもしれないわねぇお医者様に見ていただこうかしら?」
女は顔に困惑した表情を浮かべながらそう嘯く。
「それで豚さん?これはどういうことかしら?」
「……「ピシィッ!」ぶっひゅぃいいいいいっ!」
言い訳しようと口を開くと叩かれるため、黙っていると再度鞭が奔り男は情けない声を上げる。
「黙っていては分からなくてよ?はっきりと仰いなさいな?ほらっ!早くっ!」
手足を拘束され四つん這いで地に這わされたまま顔を俯かせ男は答える。
「…ぶ、ぶひぃ…」
「まぁっ!そうだったのね。悪い子…そんな悪い子の豚さんにはお仕置きをしてあげないとダメねぇ…」
「ぶひゅっ!?」
お仕置きの言葉を聞いた男は青ざめた顔を上げ、頭を左右に全力で振って嫌だと意思表示する。
「あら?そんなにお仕置きされたくないの?でもダメよ?悪い子にはお仕置きしなきゃイケないもの…」
満面の笑みを見せる女に対して絶望を顔に張り付けた男は項垂れる。
「うふふふふ…大丈夫よ…?私は回復魔法も使えるのだもの…万が一なんて起こり得ないわ…」
屋敷に男の悲鳴にも似た嬌声が響くが、使用人達は揃ってベッドに入り耳を塞いで聞こえない振りをする。今日もまた哀れな生贄の醜い豚は体ではなく心に深い傷を負いながら一日を終える。
――――――――――
悪役令嬢side
また興が乗って豚さん…いや自分の旦那である公爵を苛めてしまった。
本来の目的は領民に重税を課し領地をやせ衰えさせる愚物の矯正を目指していたのだが、どうも苛めるのが楽しくてしょうがない。
前世の私はこんなことに楽しみを見出す変態では無かったはずなんだけど…
前世の私はそれはもうどこにでもいるごく普通の…いや、ちょっと…そうほんのちょっとだけど変わってたかもしれないけど、農家を営む実家に生まれ、男が生まれなかったもんだから後を継がせられた可愛い女の子が好きな普通の25歳の女だったはず…
好きと言っても性的な意味ではなく、可愛い女の子を眺めるのが好きだっただけだ。恋愛対象は男だったしね?ほんとだよ?
そんな私が何の因果か乙女ゲームの世界に転生してしまった。
転生してすぐに私が悪役令嬢だと分かった時には世界を呪いそうになったが、一縷の望みを掛けて両親に汚職などないか調べてみたら、出るわ出るわ証拠の数々山と積まれた真っ黒な証拠に目の前が真っ暗になりそうになったが、何とか持ち直しヒロインを観察することにした。
前世で乙女ゲームをプレイしたのだが、ヒーローは好きになれなかった。その代わりというかヒロインがもうめっちゃ可愛くて暇さえあればそればかりやっていた。
同時に今の自分である悪役令嬢も好みのドストライクで、この悪役令嬢は王子ルート以外では一切でてこず、ある程度王子と仲良くなると嫉妬からかヒロインを苛めてくる。
学園に入学してすぐにヒロインを見たのだが一目見てから自分を抑えることができず、王子と仲良くなる前に接触し、数々の暴言とか辛辣な言葉で彼女を苛めてしまった。
元となった悪役令嬢の資質とかそういったものに私の精神引き引きずられた結果かもしれない。
苛められて憔悴していたヒロインを慰めたのがヒーローである王子様だ。そんな王子様にさえ怖がっていたヒロインだが、徐々に心を開いていき頑なに話そうとしなかった弱っていた理由を打ち明けた結果、私の生家である公爵家は取り潰され、私は隣国の豚公爵と呼ばれる愚物の嫁として出荷された。豚の嫁だけに…なんちゃって!てへぺろ
初めて公爵に会うまでは不安に押しつぶされそうだったが、会った途端に私の悪い癖が出て夜ベッドに誘われた時に魔法で生み出した鞭で思い切りぶってしまった。
当然公爵は怒り狂ったのだがもう後には引けないのでどうせなら思い切り楽しもうと豚さんを苛めに苛めたら、豚さんの心が折れ私に屈服してしまった。
その後は夜に誘われることもなくただ毎日を過ごすだけの退屈な日々が続いたが、どうも落ち着かないようになって豚さんを苛める様になった。
昼夜を問わず豚さんに張り付き私の気にくわないことをしでかしたら鞭を打つ様にしていた。ずっと張り付いて居たおかげか領地のあれこれが分かる様になり、領民を雑草か何かだと勘違いしている豚に躾を開始した。
多少改善したかな?と思っていた矢先に豚さんがやらかしたのでお仕置きしたのが冒頭の一幕という訳だ。
――――――――――
豚さんside
手足を拘束されて四つん這いで地に這わされているワシは大国の公爵だ。
そしてそんなワシを頭上から蔑んだ目で見下ろしながら慈愛の笑みを浮かべているこの女は忌々しいことにワシの3番目の妻だ。
どこからか取り出した鞭で手のひらを叩いていた女が徐に鞭を振り
ピシィッ!
「あひぃいいっ!」
一瞬ではあるのだが襲い来る激痛に情けない声がでてしまう。
「あらあらいけない豚さんですこと…貴方は豚ですのよ?豚さんはそんな鳴き声ではありませんでしょう?」
ピシィッ!
「ぶひぃいいいいいっ!」
「ねぇ豚さん…?私言いましたわよねぇ?領地の改善を図るように…と…ねぇ豚さん?これはどういうことかしら?どうして税金がまた上がっているのかしら?」
「そ、それは領地を改善するためには相応の金が必要になるからであって愚民共から徴収するのはとうぜ」
何とか今この状況から逃げ出そうと早口で答えようとするが
ピシィッ!
「んぶぅあああああっ!」
「おかしいわね?醜い豚さんが人の言葉を話した気がするわ…疲れているのかもしれないわねぇお医者様に見ていただこうかしら?」
悪魔だ、この女は悪魔だ…説明しろと言うのに説明しようとすると豚が喋るわけない等と…
「それで豚さん?これはどういうことかしら?」
「……「ピシィッ!」ぶっひゅぃいいいいいっ!」
口を開けば叩かれるのだから口を閉ざしていたらまた叩かれた。ぐぬぅうう!このワシが、このような小娘にいい様にされるなど…!
「黙っていては分からなくてよ?はっきりと仰いなさいな?ほらっ!早くっ!」
内心で女に沸々と湧き出てくる憎悪だったが、女の冷笑を見てまた心が折れる。
「…ぶ、ぶひぃ…」
「まぁっ!そうだったのね。悪い子…そんな悪い子の豚さんにはお仕置きをしてあげないとダメねぇ…」
「ぶひゅっ!?」
お、お仕置きだと!?嫌だ嫌だ!あれだけは!あれだけは嫌だ!頼む!やめてくれ!
ワシは首を振るが、
「あら?そんなにお仕置きされたくないの?でもダメよ?悪い子にはお仕置きしなきゃイケないもの…」
これから起こるであろう事を想像して頭が真っ白になり項垂れるが頭上から
「うふふふふ…大丈夫よ…?私は回復魔法も使えるのだもの…万が一なんて起こり得ないわ…」
という女の声を聞いてワシはどうしてこうなってしまったのだ…と嘆くが今さら過去を変えることはできはしない。
鞭で叩かれ、お仕置きされると聞かされワシは絶望し、体中から熱が引いていくが下半身のごく一部だけが滾る様に熱い…
そんなはずはない…ワシが…大国の公爵であるこのワシが鞭で叩かれ興奮するなどあり得ない。きっとこれは何か悪い夢なのだ…頼む早く目よ覚めてくれ…でなければワシは…
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はい、という訳でSMに目覚めた転生悪役令嬢…どうでしたか?暇つぶしくらいにはなりましたか?
もうちょっと書くつもりだったんですがどうも書こうとすると手が止まりましてね…
主人公が農家の生まれなのは領地改善のためにそう言った知識を有していなければならないからなんですが、全く意味のない設定になってしまいました。
豚に鞭打って健全(笑)な領地運営をする女傑を書いてみようかな?と思って書いて見たら全然筆が進まないしそもそも領地運営とか訳ワカメなことに気づいて中途半端なモノになってしまいました…
お目汚し申し訳ないです。
とは言え色々書いてもっと文章力や設定を考える力と言うものを養いたいと思っているのでアップすることにしました。俗にいう黒歴史なんですが、そういった物も必要だと考えているので、もしよろしければ感想などいただけると幸いです。心をへし折るような罵詈雑言もどうぞ。