魔王と呼ばれた少女の本音 ††
††(ダイロクテン魔王視点)
ダイロクテン魔王と呼ばれている少女は思う。
さて、あの場であのように取り繕ったが、どうするべきであろうか。
と――。
魔王軍全体として考えるならば、喧嘩両成敗。
セフィーロとバステオ、どちらも処刑すべきなのだろう。
バステオに叛意があるのは明確であったし、セフィーロも部下の管理が行き届かなかったのだ。
ここでけじめを付けておかなければ、魔王軍全体への影響が出る。
「……魔王という商売は、舐められたらお終いだからな」
ただ、一つだけ気になることがある。
それはセフィーロの配下の男だった。
先日のアーセナム攻略の一件以来、あの男に注目してきたが、あの男、調べれば調べるほど面白い。
その魔力はすでに旅団長の域ではない。
その知謀は軍団長のそれに匹敵する。
もしも、セフィーロとバステオを処罰するのならば、あの者を次の軍団長に据えてやっても良いくらいだ。
「……いや、それはまだ早いか」
そう独語する。
その実力の方に疑いの余地はないが、まだまだ足りないものがある。
「奴は甘すぎる。ロンベルクの孫ゆえ、仕方ないのかもしれないが」
己の前世が人間だからだろうか。
ろくに面識のない男だが、出会った瞬間から、その甘さが気になっていた。
実際、奴はその甘さゆえに、無駄な殺生をせず、他の魔族から軽んじられているようだ。
そのような男をいきなり軍団長に据えるのは時期尚早というものだろう。
――だが、
「余の思い描く世界を作るには、あのような男が必要なのだがな」
そう漏らす。
何の因果か、前世でも今世でも、魔王と呼ばれる立場になってしまったが、何も最初からそう呼ばれたかったわけではない。
前世では、戦国大名の子供として生まれてしまったから。
今世では、高位の魔族に生まれてしまったから。
そんな理不尽な理由で魔王と呼ばれるようになってしまった自分だが、何も『魔王』めいた真似がしたいがために魔王と呼ばれる存在になったわけではない。
「……余には余の夢があるのだ」
ダイロクテン魔王と呼ばれている少女は、ぽつりとそう漏らすと、その世界を作るために必要な男を試すことにした。
もしも奴がその夢を叶えるのに必要な男ならば、その難題も解決するだろう。
そう思いながら、少女はセフィーロとバステオに決闘の方法を伝えることにした。




