その3 サティのお買い物
アイクの忠実なるメイド、サティは少々抜けているところがある。
いわゆる天然というやつで、時折、間の抜けた行動する。
例えばであるが、ある日、街に買い物にでかけたとき、彼女はこんな行動に出た。
サティは大好きなご主人さま、アイクに手料理を振舞うため、市場にある肉屋へ向かう。
しかしその肉屋、異国の地から移住してきた店主が経営する肉屋で、この国の標準語が通じなかった。
この肉屋は外国人が主な顧客なのだ。
普通ならば店を変えるのだが、サティはめげずにジェスチャーで肉を購入することにした。
この店の肉はおいしいと巷で評判なのである。
まずは牛のタンシチューが作りたかったので、自分の舌をべえっと差し出してみる。
店主はそれで理解したのか、上質な牛の舌を譲ってくれた。
その夜、おいしいタンシチューをアイクにふるまうことができた。
翌週、サティは鶏のソテーを作るため、鶏の胸肉を買いに出かけた。
サティは少し顔を紅潮さえながら、自分の胸を指さした。
しかし、なかなか店主に意図が伝わらない。しょうがないので胸を少しはだけさせるとそれを指さし、鳥の鳴きまねをした。
店主はにやにやとサティの胸を見つめると、鶏の胸肉を譲った。
その夜、アイクはおいしい鶏肉のソテーを食べた。
さらに翌週、サティはアイクに鶏のから揚げを作るため、市場に出かけた。
店主は最初からニタニタしている。
サティは鶏のもも肉を譲ってもらうため、軽くスカートをまくしあげる。
スカートのうちにある太ももを見せるため——、ではなく、裾を持ち上げて挨拶するため。
サティは「はじめまして」と挨拶すると、流暢な外国語で鳥のもも肉を注文した。
「…………」
あっけにとられる店主。
サティは、アイクにお願いをし、「異国語翻訳」の指輪を借りたのだ。
サティは店主から鶏のもも肉を受け取ると、それを館に持ち帰り、ジューシーで熱々のから揚げを愛するアイクに振舞った。




