表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/186

騎士団長アリステアの困惑 ††

 ††(白薔薇騎士団団長アリステア視点) 


 

 驚くべき事態が起きた。

 白薔薇騎士団の団長であるアリステアは困惑した。


 まず驚いたのは、城の城壁が修復されていたということだ。


 無論、その情報は斥候から受けていたが、まさかあそこまで見事に修復されているとは思っていなかった。


 どうせ急ごしらえの安普請、その場しのぎの物であろうとたかをくくっていたが、そうではなかった。


 以前とまったく同じ城門がそこにそびえ立っていたのだ。


 否、とアリステアは首を振る。


「同じどころではない。あれはそれ以上のものであった」


 アリステアは幼き頃、父に連れられてイヴァリースに訪れたことがあるが、あのような仕掛けなどされていなかった。


 イヴァリースは元々、農業都市。一応、城壁は設けられているが、簡易的なもので、弓兵を大量に配置できる作りにはされていなかったはずである。


 あの都市に滞在する部隊の長は、それをたったの1ヶ月で成し遂げ、更に以前よりも強化した、ということになる。


「一体、ドワーフの建築家を何人雇えばそんなことが可能なのであろうか?」


 否、アリステアは再び首を振る。


「そんなことができるわけがない」

 と――。


 ドワーフの職人は一際(ひときわ)頑固だ。


 魔王軍の支配を潔く受け容れるわけがないし、強圧的に命令しても決して働かない。


 己の自尊心をねじ曲げてまで相手に従うような種族ではない。


「ならば一体どうやって……?」


 王立士官学校を首席で卒業したアリステアであったが、まったくその方法が思い浮かばなかった。


「なにか人智を越えた魔力を持ったものが行った仕業であろうか……」


 そうとしか考えられなかったが、いや、考えたくなかった、というのがアリステアの本音かもしれない。


 自分は人智の及ばぬ「魔力」を持った魔物に負けたのだ、そう思い込まなければ、その自尊心がずたずたに引き裂かれそうだった。


 オークの重装歩兵の見事な運用。

 組織だった弓兵の運用。


 途中、強引に陣形を切り裂いてきたサキュバスの部隊は、旧来の魔王軍のやり口そのものであったが、それ以外は、アリステアの常識、いや、人間の常識をすべて覆すものであった。


 特に最後のスケルトン兵の活用は、凡人の思いつく業ではなかった。


「自分は途方もないものに負けてしまったのではないか?」


 考えれば考えるほど、そういった結論にたどり着く。

 無論、部下の前ではそんな発言はできない。


 事実であったとしても部下の前で、


「私たちが戦った相手は人智の及ばぬ化け物だった。次回は勝て」


 などと言えるわけがない。


 ただ――

 国王陛下にはどう報告するべきであろうか。


 無論、敗戦の責任は取り、辞任さえ覚悟していたが、国王陛下にありのままの事実を話すべきであろうか。


「………………」


 思案に暮れる。


 今後の王国のため、いや、全人類のためにはそう話すべきなのであろうが、どう説明すべきであろうか。


「イヴァリースを守護する敵旅団はとても1個騎士団では敵わない。最低でも5個騎士団は必要」


 とアリステアは思っている。


 もしも正直に話せば「臆病者」、と罵られるか

 それとも「無能者」と罵倒されるかもしれない。


 しかしそれでもアリステアは国王に具申するつもりでいた。


 辞任どころか、解任、いや、下手をすれば投獄さえされるかもしれないが、それも仕方ないことであった。


 あの旅団に自由な行動を許せば、必ず人類の災いとなる。

 それだけはどうしても防ぎたかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ