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ウセナサマ(後編)

そこから先は闇だった。

何処まで行っても、何処までもが闇だった。

歩けども歩けども、出口はおろか何らかの光源すらも見えてこない。

普通、いくら廃墟でも、ここまで暗くなるものなのだろうか?

そんな疑問が頭を過る。

せめて月光とか星々の輝きとか、それくらいのものが壁の隙間からとか漏れてきても良いのではないか。

──つまりこの暗さは異常だ。

そう思った瞬間、体を冷や汗が伝う。

今俺は、息を潜めて闇に紛れるよう進んでいる。

それはもちろん、あの影に見つからないようにするためだ。

けれども、こうも考えられないだろうか。

向こうも息を潜め、闇に紛れている。

それはもちろん、俺に気づかれないようにするために──。

そう思い至った時、総毛立つような感覚に襲われる。


(………!)


この感覚は、経験がある。

以前、いや今日のつい先程に感じたものだ。

即ち、近くに奴がいる。

闇に紛れ──いや闇自身となって、俺が迷い混むのを待っていたのだ。

けれども二回目だからか、体の不自由さは多少緩和されていた。

動きづらさは感じるが、全く動けない訳ではない。

慣らすように大袈裟に動きながら、俺は鉄パイプを構える。

それはさっき、偶然にも蹴飛ばしたために存在に気付き、拾っておいた物だ。


「へっ、来やがれ化け物…。強烈な一撃を御見舞いしてやる…!」


俺は復讐心に燃えていた。

相手は原江をあんな目に合わせた張本人だ。

鉄パイプという武器を手にしたせいか、先程までの臆病風は何処へやら、そんな気持ちが昂っていたのだ。

この復讐を果たすには、二つの課題をクリアしなければならない。

まず一つ目は、打撃が通用するかどうか、ということだ。

大抵幽霊なんかはすり抜けるだけで意味がないと聞く。

けれども、奴は原江を吹っ飛ばした。

向こうが此方に干渉できるなら、その逆もまた然りなのではないか。

俺はそう踏んでいた。

二つ目は、奴が見えないということだ。

闇そのものとなっている以上、全方位が暗闇な今、何処を攻撃すれば良いのか解らない。

だから俺は目に頼らず、勘に頼ることにした。

幸いと言うか何と言うか、奴には圧倒的な存在感…もとい威圧感がある。

それを発する大本に本体がいるわけだから、そこを叩けば良い。

今この瞬間、相手は俺を中心として円を描くようにぐるぐると回っている。

感覚としてそれを感じられた事に喜ぶと同時に、俺は俺の攻撃が当たることを確信した。

予想外に立ち向かってきたことに、少なからず恐怖しているのだろう。

その間合いの中に立ち入るべきかどうか、迷っているのだ。


「…来い。その頭、かち割ってやる!」


そう呟き、鉄パイプを強く握り直した時だった。

相手は素早く動き出し、急速に間合いを詰めてきた。

俺はそんな相手に対し、待ってましたとばかりに思い切り鉄パイプを降り下ろした──。


がつんっ!


と、そんな衝撃が手元に伝わる。

ものすごい固いものを殴ったかのようで、凄まじい痺れが襲う。

けれども、影にもダメージはあったようだった。

その威圧感を放つものはふらふらと俺から遠ざかり、そのままそこから動かなくなる。

それを好機と見た俺は、更に追い討ちを掛けるべく、鉄パイプを振りかぶる。


「まて!外谷ッ!」


突如として湧いた大音声に、危うく転びそうになりよろける。

振り向くと、携帯のライトを此方に向けて立つ原江がいた。


「は、原江!?」


驚きと喜びで影をそのままに、すぐその側へと駆け寄る。

見ると右肩を酷く切っており、夥しく出血をしていた。

その他にも額や腕など、細かい怪我が見てとれる。


「原江、その…大丈夫、なのか?」


「ん、ああ、まあ大丈夫さ。」


そう言って無理矢理笑顔を作ったがそれは直ぐに苦痛に歪む。

そんな彼女を見ていられなくて、俺は玄関の出口へと連れていこうとした。

すると


「待て。まだ用は残ってる。出るには早い…。」


「用?用って、なんだよ?」


その疑問には答えず、原江は俺の支えから抜けると、恐らく影のいるであろう場所に向かう。


「お、おい!?」


彼女が一体、何をしようとするのか。

それを知りたいという気持ちと不安が相まって、俺の制止は中途半端なものに終わる。

影の前で立ち止まった原江は、少しの間息を整えていたが、直ぐに口を開く。


「…なあ、あんた、今回は随分と悪いことしちゃったな。その怒りもよくわかるよ。」


紡ぎだされた言葉は、まるで年来の友に語りかけるかのような…とても親しげなものだった。

俺はもう何が何なのか分からず、ただ立ち尽くしていた。


「非は完全に私たちにある。だけどさ、せめて外谷…彼奴だけでも、見逃してはくれないか?」


俺を見ず、ただ指だけを指して原江はそう言った。

最初何のことか分からなかったが、直ぐに我に返り、慌てた。


「馬鹿、何言ってんだお前!」


自分の発した言葉の意味を理解しているのか。

そう咎めるように、俺は言った。

けれども原江は、それを撤回しようとはしなかった。


「頼む。この通り、謝る。私はどうなったって良いから、外谷だけは、逃がしてやってくれ。」


頭を下げ、原江なりにその影に敬意を払う。

その言葉を聞いていたのか、携帯の光に照らされ、暫く揺れながら一ヶ所に佇んでいた。

暫くして、やっと動いた影はただ一方向だけを指差した。

それは、入ってきた穴のある玄関の方で──。


「…?二人とも、見逃してくれるっていうのか?」


原江のその言葉に、一回小さく頷くと、光を嫌うかのように闇へと溶けていく。

その後ろ姿に、原江は頭を下げながら声をかけた。


「有り難い。恩に着る…!」


それにつられて、何となく俺も頭を下げた。

何が何やら、未だに事情の分からぬままに──。





その後、色々と大変だった。

原江は見た目以上に怪我が重く、直ぐ様入院。

事の元凶である俺はこってりと搾られることになった。

そこはまあ、今となっては笑い話だが…。

後ろめたさから原江の前に出ることが出来ず、そのまま卒業してしまったことを、今尚後悔しているのだ。

今更ではあるが…せめて一言でも謝罪と感謝の言葉を言えたなら、とずっとこの同窓会に参加している。

だが、良く良く考えれば滑稽な事だ、と思う。

彼女は中学時代に良い思い出などないだろう。

虐めもあったろうし、俺とのその事もある。

そんな同窓会になど、誰が来るだろうか。

いや実際、一度も来ていないではないか──。

毎度のごとくその考えに至り、もう帰ろう、と思ったときだった。

不意にがらりと店の引き戸がやや乱暴に開かれる。

それは店内の喧騒を静まり返させるほどに響いた。

もう面子は揃っただろうと思い込んでいた誰しもにとって、それは意外だったのだ。

皆の視線が一様に注がれた先にいたのは──女性だった。

長い髪を後ろで一つに束ね、タートルネックを着こんだ彼女は目を伏せがちにしているせいか、何処と無く、不機嫌なように見えた。

けれども、その顔立ちは美人といっても差し支えないもので、特に男連中を中心にして誰か彼かとざわめいた。

その、突如としてやって来た見慣れぬ元クラスメイトに見覚えがあったのは、どうやら俺だけだった。


(原江…?)


待ち望んだ彼女。

数年間もここに来て、やって来ないかと、待ち焦がれた相手。

それが今、俺の目の前の通路を通り、奥の空いた席に一人で座った。

友人の一人が話しかけるのにも耳を貸さず、そこだけに視線を注ぐ。

丁度水を持ってきた店員に何か注文をしたところだった。

それからは誰かに近づこうなどという素振りも見せず、ただ水の中の氷を見詰めていた。

此処に来たことを後悔しているかのような…そんな表情だった。

このままだと案外直ぐに出ていってしまうのではないか、と危惧した俺は意を決し、徐に立ち上がって側による。

そして一言、声をかけた。


「隣…良いか?」


思ったより上擦った声が出て、俺は俺が緊張していることを知った。

原江も原江で、自分のこととは思わなかったのか辺りを見、それから自分を指差した。


私に話しかけているのか?


そういう意味だろうと捉え、うなずく。


「あ、ああ…。」


ぎこちない返答を受け取ってから、俺はその真ん前の席に座る。


「……。」


「……。」


奇妙な空間だった。

周りはもう原江への興味をなくし、先程までの賑やかさを取り戻している。

それなのに、俺と原江だけは押し黙っているのだ。

いざこうしてみると、どうにも言い出しづらい。

数年間、出せなかった言葉をいうべき時であるのに。

ふと原江を見ると、俺をチラチラと見ながら何かを呟いている。

耳を済ましてその言葉を拾ってみると


「蜂谷…いや、小川…?それとも、有村…?」


どうやら、俺の名前を思い出そうと必死になっているらしい。

ちなみにそれらの名前に俺は全く覚えはない。

高校時代の同級生とでも混合しているのだろうか。

その様に俺は笑みを溢した。

こう言うところ、何も変わっていない。

本人は大真面目なのだろうが、端からみれば面白おかしく感じてしまうような。


外谷(とがや)だよ。」


そうはっきりと言ってやると、原江は思い出したらしく、大きく手を一度叩いた。


「そうだ、外谷!外谷大亮!」


思い出せたことが嬉しかったのか、彼女は子供のような笑顔を見せる。

…本当に、何も変わっていない。

昔のまま、原江は原江なのだ。

その事が、俺を酷く安堵させる。


「久し振りだなー、外谷。今何をやってるんだ?」


「え?ああ、今は東京でサラリーマンやってるよ。」


「へえ、頑張ってんなあ。大したもんじゃないか。所帯は持ったのかよ?」


「い、いやそりゃあまだだけどさ…。」


俺に有無を言わさず、その身の回りの事を聞いてくる。

どうやら俺に悪感情を抱いていないらしい事は喜ばしい事なのだが…このまま話が続く事は、望ましい事ではなかった。

何でもない話に流されて、本命を言いそびれてしまうかもしれない。

そう感じた俺は姿勢を正し、改めて原江の向き直る。


「原江…その、今日はお前に言っておきたい事があったんだ。」


「ん?どうした急に。」


「その…昔さ、廃病院に行っただろ。お前の制止を無視して。その結果お前は大怪我して入院したりさ…。ひどい目に合わせちまって、本当にごめん!」


言うなり、テーブルにぶつける位の勢いで頭を下げる。

溜め込んだ割には簡潔な台詞だったが、他に言い様も無かった。

それを受けて、原江の反応はというと………。

きょとん、としていた。


「…?ああ、そんなこともあったっけな。まさかお前、その事を言うために私に声かけてきたのか?」


「あ、あぁ。あのあと碌に話もしなかったし、この際だから謝っておこうと…。」


「はは、それでお前が負い目を感じてたんなら、悪いことしちまったな。良いんだよ、お前には随分、世話になってたからな。」


思いがけない言葉に、俺は顔をあげる。

続けて原江は、その理由を語り始めた。


「その頃、私にまともに相手してくれたのはまあ、お前位のもんだったからな。お陰で寂しい思いもそこまでしなかったしさ。寧ろ私となんか付き合ってて、お前が嫌な思いとかしたんじゃないのか?」


大きく可愛らしい目を此方に向けて、頬杖をつきながら原江は言った。

その仕草と、“付き合って”

という単語に少し戸惑ってしまう。


「そ、そんな事ねえよ。お前に絡んでたのは、その…。」


お前が好きだったから──

途切れ途切れに溢したその言葉は、原江の耳に届くことなく店内のざわめきに紛れて消えた。

そこで丁度、店員が原江の頼んだものを運んできた。

ジンジャーエールだった。


「ん。」


グラスを此方に差し出し、原江は笑った。


「え?」


「乾杯。また会えた事を記念して。な?」


…彼女はこんなに、可愛らしく振る舞う女だっただろうか。

自分の席から持ってきたカクテルを原江のグラスに軽く当てながら、そんな事を思う。


「しかし…懐かしいな。“ウセナサマ”、まだ彼処にいるのかな?」


一口ジンジャーエールを含み、飲み込んでから原江はそう言った。


「ウセナサマ?」


「ああ、あの影の事だよ。あのあと病院でさ、私の祖父さんが教えてくれたんだ。」


ウセナサマとは“失せ名様”と書くという。

その名の通り、名前を無くした存在なのだそうだ。


「名前を無くしたって…人間が名前を無くした結果、ああなったって事か?」


「いや…あれはそもそも人間じゃない存在だ。まあなんだ…お前でも信じられるか解らんが、元は神であったらしい。」


その一言に、俺はカクテルを吹き出しそうになる。

幽霊かと思いきや、かなり飛んで神ときた。


「昔話とかにさ、良くあるだろ。名前を無くして自分が誰だか解らなくなる、みたいな話。あれは人間だけじゃなくて、神も同じなんだと言えば分かりやすいかな。」


「いや、あんまり…。」


「神様ってさ、日本に限ったことじゃないが、名前が役割そのまんまだったりするだろ?だからその分、人よりも名前を失ったときの損害もデカいとか何とか…。」


天を照らすから天照。

山の神だから、大山祇神(おおやまつみ)

今の言葉で考えると解りづらいところもあるが、確かに大体そのまんまだ。


「まつろわぬ神、って知ってるか?大和朝廷の頃、多くの神が消えていったと言う。それはその神を信仰する人々が朝廷に討伐され、名前を忘れられたからだ。」


「あのウセナサマってのも、その一柱だってか?」


「そうさ。役割と名前を忘れられ、神としてみられなくなった神様は曖昧な存在たる影となり、現世をさ迷うと言われている。あのウセナサマは恐らくあの廃病院を縄張り…いや、自身の神域としていたんだろう。幽霊がいなかったのもそのせいって訳だ。」


一息に言い終わってから、また一口原江は飲み物を口に含んだ。


「…可哀想な神様なんだな。」


「本当、気の毒さ。神という立場から追われ、社ではなくあんな廃病院を根城にせざるをえず、そこへ人間に乗り込まれた挙げ句、ぶん殴られたんだからな。」


「うっ…。」


「はは、良かったじゃないか。元とはいえ、神様を殴るなんてそうそう出来る経験じゃないぞ。」


からかうように原江は笑った。

まさにあれは、神をも恐れぬ行為だった訳だ。


「ん…?」


そこで俺は、一つの疑問を抱く。


「そういえばさ…何でそのウセナサマは俺達を見逃してくれたんだ?」


それだけ酷いことをしたのに、あの影はあっさりと許してくれた。

原江の話では、その理由はまだ見えてこないのだ。


「ああ、そのことか。これは祖父さんの推測なんだけどな…どうやら、私の対応の仕方に原因が有ったらしいんだな。」


「どういうことなんだ?」


「あの元神様は、私の言葉を“契約”だと捉えたらしいんだな。」


原江曰く、この国において神と人は契約を結ぶようにして付き合ってきたのだそうだ。

人が神に利益を与えるから、神も人に利益を与えて欲しい、というような──。

八百万と言われる程に神の多いこの国では、神とはとても身近な存在。

だからこそ、持ちつ持たれつ、対等に付き合ってきたのだと。


「謝るから、何なら私の身を捧げても良いから、もう一人は見逃してほしい──。そんな久方振りの人との契約が、神として見られたことが嬉しかったらしいや。…必死だっただけで、そんなつもりはなかったけど。」


…人間の俺には、その感覚はよく分からない。

神様なりの価値観、みたいなものだろうか。

原江は半分ほど残ったジンジャーエールを一気に飲み干すと、一息ため息を吐く。


「ふう。今日はありがとうな。お陰で楽しめたよ。」


「え?もう帰るのか?」


「まあな…外谷も他に付き合いあるだろ?私だけに構ってないでそっちを大切にしろや。」


彼女なりの気遣いを見せてくれているらしい。

出来ればもっと話をしたかったが…かといって引き留めるのも気が引ける。

単純に、原江が帰りたいだけなのかもしれないし。


「…そうか。じゃあ、最後に一つだけ良いか?」


「ん?なんだ?」


「…何で急に、同窓会になんて来たんだ?」


彼女の行動を見る限り、誰かに会いたくて来たというわけでもないだろう。

ならなぜ、今ごろになって──。

その問いは、少し彼女を困らせたらしい。

人差し指で頬を掻きながら唸っている。


「うーん…実はうちの子に同窓会の案内の葉書を見られてね。そしたら絶対行くべき!ってさ。自分が学校楽しんでるもんだから、そんな事を言ったんだろうが…。」


その一言が、俺にとっては万雷の如く鳴り響いた。

うちの子って…原江の子?

いやでも、25で中学生の子がいるわけはないだろう。

しかし原江は“学校”としか言ってない。

小学生なら、あるいは…。

そんな事を一人で考えてる内に、更に原江は話を続ける。


「そしたら和男…あ、そいつ同居してる図体ばっかりでかい野郎のことなんだけど、そいつも一緒になって囃し立てるもんだからさあ…。」


二度目の衝撃が駆け巡る。

子供に…同居してる男…。

まさか原江がもう結婚して子供もいたなんて。

同級生の結婚報告を聞く度遅れている気持ちを抱いていたが…今までで一番ショックだった。

深く項垂れる俺を見て、原江は心配をしたようだった。


「だ、大丈夫か?どうした外谷?」


「い、いや…どうやら酔ったらしい…。」


「そんなカクテル程度で酔うって…お前も酒には弱いんだな。」


立ち上がり、水を貰ってきた原江は、それを俺の目の前に置く。

そして優しく“あんまり無茶はするなよ”と言ってくれた。


「…あ、そう言えば参加費って誰に払えば良いんだ?」


荷物を手にしたところで気づいたらしく、そう尋ねてきた。

俺は力なく自分の顔の前で手を振る。


「良いよ。俺がお前の飲み代払っておくから。」


「でも…。」


「ジンジャーエール一杯で数千円も払う気かよ?良いから、奢らせてくれな。」


「……そうか。ありがとな、外谷。」


外に出る際、俺にだけ見えるように手を振ってくれた。

昔のままに変わらない、子供みたいな笑顔を添えて。

それに応えて、俺も精一杯の笑顔を向けた。

一人奥のテーブルに残された俺は、椅子の背もたれに大きく寄りかかり、タバコに火をつける。


(…結局、何もかもが独り相撲だった、って事か。)


原江に負い目を感じていたことも、恋心を抱いていた事も。

全て彼女の中では決着が着いていた事だったのに、何年も俺は──。


「…まあ、良いじゃないか。原江は変わらず、原江だったんだ。」


虚空に向かって、独り言を呟く。

改めて話して解ったこと。

やはりあいつとの会話は性に合う。

ただそれだけで、楽しいのだ。

…それだけのためにも、また此処に来る価値はある。

同窓会にまた原江が来るかは解らないが、来ないなら来るまで待てば良い。

──要するに、今までと変わらないって訳だ。

そう思い直した俺は、未練を断ち切るかのように、着けたばかりの煙草の火を揉み消した。

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