プレリュード③
彼女が軽く飛んだところでさて。
私がこうして物語を記録しようと筆を取った理由を最初に認めておきたいと思う。
この物語は船の物語。
思い出せば自然と笑顔になってしまう、船上での愉快な出来事。
ヴィヴィアンヌ号という豪華客船を舞台として起こった喜劇、とは失礼かもしれないが、これは決して悲劇などではない、物語。
でも皆、その時は真剣だった。
真剣な目をして未来のことを考えていたんだ。
もしかしたら私の人生最大の沸点はそのときだった、とも思う。
彼はその時本気で、刀を振るったね。
彼女はその本気の刀を払い上げ、魔法よりも難しいことをしてくれたね。
また別の彼女はその時本気で、ピアノを弾いていたんだよ。
人種も思想も国籍も違える、彼、彼女、私、そして同じ船に乗り合わせた人々の選択が絡まり混ざり合ってそれは。
私に筆を取らせる楽しい物語になったんだ。
まるで神様が企んだと思うような。
適当偶然ランダムとは割り切れない運命的な。
そんな物語の中に私たちはいたんだ。
もう一度、と思うような物語が確かにあった。
そして船上で。
私はこの目で見る。
この物語のフィナーレに。
小さな魔女が引き起こした奇跡。
奇跡的な炸裂を私は見たんだ。
それは一瞬の出来事だった。
でもその炸裂の煌めきは、ハッキリと思い出せる。
私はその奇跡の証拠を残しておくために、とは大げさかもしれないけれど。
ヴィヴィアンヌ号が残した航跡を永遠に残るものに近づけたいと思うから。
だからママの真似事じゃないけれど、鶴島と呼ばれる天守から。
桜の終わりを見ながら綴っていきたいと思うのである。
さてと。
そろそろ前奏曲も終わりにして。
サクラ・モノグラム。
楽しんで参りましょう!




