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Fantapia ~転移チートが異世界を行く~  作者: アズマ
再びソプレゼの街
89/92

最終戦 【4】

 

 

 

 ソプレゼの街は混乱の極みに達していた。

 上空に現れた悪魔に気が付いた人々はもちろん、事態を知らない人々もいきなり攻撃されているのだから当然だろう。



『繰り返します! 現在正体不明の敵によりソプレゼは魔法攻撃を受けています! 住民の皆さんは最寄りの門より街の外へ脱出して下さい!』



 悪魔の攻撃を受けてすぐに今のようなアナウンスが街中に響き渡った。

 どうやらスピーカーのような魔具があるようで、街に設置されていた火の見(やぐら)の上から聞こえてくる。



「こっちだ! 急いで!」



 人々が叫び声を上げながら逃げ惑う中、俺達はトマスさん先導の元ドアートさんの屋敷を目指していた。

 行動を共にしているのは、俺、イリーナ、フェル、マヤ、マギー、トマス、シェスカ、フィーネ、トールの八人だ。



「お兄、ちゃん。ロイと、パーラ、が」

「大丈夫だっ、あの人達はちゃんと逃げられてるよ。きっとな」



 マヤは泣きそうな顔でロイさんとパーラさんの心配をしていた。

 あの時、悪魔の攻撃が開始されたとき俺達は宿の外にいたが、ロイさんとパーラさんは宿の中で仕事をしていた。

 一緒に逃げようとしたのだが人の波が邪魔をして合流することが出来ず、マヤは夫婦と離ればなれになってしまったのだ。



「マヤ。心配ありません。事態が片付いたら必ず二人を捜し出しますから」

「そうよ! だからマヤも今は自分の身を守ることに集中しなさいっ」



 走りながらもイリーナがマヤの頭をポンポンと叩く。

 そしてフェルも元気づけようと声を掛けていた。



「ドアートさんの屋敷に着いた後はどうするんですか?」

「あそこは緊急時同盟員が集まる場所でもあるんだ。この様な事態だ。他の同盟員とも合流しておいて損はない」



 トマスさんは上手いこと人の波をかき分けて進んでいく。

 そうこうしているうちに屋敷が見えてきた。



「よかった。まだここは無事だったか」



 ドアートさんの屋敷はまだ悪魔の攻撃を受けていなかった。

 ここに辿り着くまでに火炎弾が当たってメチャクチャになった町並みを見てきたのでほっと胸をなで下ろす。



「あっ! トマスさん! それにユーキさんっ」

「リンディっ、無事で良かった」



 屋敷の門前にはいつもの門番は()らず、代りに騎士の鎧を身に纏ったリンディがいた。



「ユーキさんもご無事で何よりです」

「すまないリンディ。積もる話もあるだろうが、ドアート様は何処に?」



 俺とリンディの会話に割ってはいるようにトマスさんがリンディに話しかける。

 また近くで火炎弾が炸裂する音と振動が伝わってきた。



「は、はい。師匠はいつもの部屋に詰めてます。他の同盟員の方も集まって――」

「――っ! 危ない!」



 そんな時にマギーが大声を上げる。

 すぐに辺りを警戒すると、上空からこちら目掛けて火炎弾が複数飛んできていた。



「うわああっ!?」

「っ」

「マヤっ」



 トールは驚き絶叫し、恐怖で体が硬直したマヤをフェルが抱きかかえるようにして庇う。



「任せて下さい! はあっ」



 リンディがそう言うと両手の手の平を地面に付ける。

 すると地面から氷の壁が出現し火炎弾を防いだ。

 


「まだまだ!」

「お手伝いします」

「私もっ」



 リンディに続いてイリーナとマギーもそれぞれ氷の壁を作り出し、飛来してくる火炎弾を全て防ぎきった。

 いくつか屋敷ではなく近くに着弾した火炎弾は火事を引き起こしていたが、三人がそれぞれ作り出した氷の壁を水へと変えてそのまま消火した。



「私はここでこうやって屋敷を守る命を受けています。皆さんは屋敷へ」



 トマスさんは一度頷くと俺達を引き連れて門を潜る。



「リンディ。一人で大丈夫なのか?」

「ご心配ありがとうございます。ですが大丈夫です。ユーキさんも早く中へ」

「・・・無茶はするなよ」



 リンディが笑顔で『はい』と答えるのに俺も笑顔で答えて屋敷へと入った。






「――そうだ、兵達は避難した住民の誘導に当たらせろ。騎士は飛来する魔法を防ぐことに全力で当たれ。攻撃は一切するなと伝えろ」



 屋敷の広い部屋――おそらく普段は食堂として使っている部屋には多くの人達がいた。

 人間、エルフ、ドワーフ、獣人とバリエーションに富んでいる。

 そんな中でこの屋敷の主であり、同盟の盟主であるホーネット伯爵の片腕であるドアートさんが指揮に当たっていた。



「おおっ、トマス、それに他の皆も。無事で何より」

「ドアートさんも」



 一通り指示を出し終えたのか、ドアートさんは一息つくとこちらに気が付いて歩み寄ってきた。



「伯爵はこちらに来てないんですか?」

「来ていない。今数人の同盟員が領主の館に様子を見に行っている」



 無事だと良いのだがとドアートさんは呟く。

 だが心配している暇もないと俺達に状況の説明をする。



「もう見ただろうが、今ソプレゼは正体不明の敵に攻撃を受けている。攻撃方法は火属性の火炎弾。威力は強力で防ぐのでも精一杯だ」

「そのことなんですが、実は・・・・・・」



 俺はドアートさんに敵の正体が仮面が変貌を遂げた悪魔のような者だと教える。

 他にも俺とイリーナの魔力を吸い取ったことなども。



「なんと・・・そんなことが」



 ドアートさんは驚いた様子だったが直ぐに元に戻る。



「何にしてもやることは同じだ」



 近くに控えていたエルフの同盟員から何か丸めたポスターのような物を受け取ると、それを大きな机の上で広げる。

 何だろうとそれを見るとそれはソプレゼの街の地図だった。



「さあ、反撃開始といこう」






お読み頂きありがとうございます。


久々の登場でキャラが作者でも掴めないドアートさんが締めでした。


【次回】反撃の狼煙


※誤字訂正1/9

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