幕間劇 ~最終戦 第三者視点~
前半後半と違うキャラにスポットが当たっています。
◇◇◇◇◇が切り替わる目印です。
ユーキとイリーナが無事ソプレゼの街へと転移した後の古城。
そこは元仮面である悪魔が放った魔法により瓦礫の山と化していた。
『――ドコヘ行ッタ』
土煙や埃が舞う瓦礫の山の一部が盛り上がり、ガラガラと音を立てて崩れ落ちる。
そうして姿を現したのはこの惨事の張本人である悪魔だった。
悪魔はユーキ達を見失っているようで首をあり得ない角度まで回しキョロキョロとしていた。
フクロウのような首の可動域と考えてくれればいい。
『・・・・・・』
悪魔はしばらくすると背中から生えている巨大なコウモリの羽を目一杯伸ばし、つむじ風を起こしつつ羽ばたく。
そして無言のままふわりと宙に浮き上がった。
『――見ィツケタ』
古城が建っていたのは森の中にある泉の側で、悪魔は森を一望出来るほどの高さまで上昇しホバリングしていた。
そして稲妻のようなギザギザした目を怪しく光らせ360°を見渡し、ある一方を見据えると大きく裂けた真っ赤な口を歪ませ笑う。
そして一度羽を折りたたみ体を丸くしたかと思うと、次の瞬間にはバネが伸びるように折りたたんだ体を解放してロケットの如く飛んでいった。
その飛んでいく方向にあるのは―――ソプレゼの街だった。
◇◇◇◇◇
「何っ!? それは本当か!」
時は同じくしてソプレゼの街。
領主の館の一室で同盟の盟主であるホーネット伯爵が報告を聞いていた。
「はい、ユーキさんとイリーナさんが戻ってきたそうです。私たちはこれから二人の元へ行ってきます」
伯爵にそう報告しているのは同盟員のエルフ族、シェスカだった。
隣には同じく同盟員の獣人族であるフィーネもいて、『早く行こ~』とシェスカを催促していた。
「そうか。無事だったか・・・・・・よかった」
伯爵は半ば腰を上げていた椅子にボフッと勢いよく座り安堵の表情を浮かべる。
彼は強制転移でこのソプレゼに戻ってきていなかったユーキとイリーナ、この二人の身を人一倍心配していたので肩の荷が下りた気分になっていた。
「ならばすぐに彼らの元へと行ってくれ。マギー君とトマスは」
すると、マギーの名前を聞いた途端シェスカが苦笑いを浮かべた。
「マギーはこの報告を聞いてすぐ飛び出していきました。トマスさんは私たちと一緒に行くつもりです」
伯爵もマギーの行動を聞いて笑みを浮かべた。
まぁあのマギーならそうだよな、という考えがにじみ出ている。
「じゃあ君たちとトマスもすぐにマギーに続いてくれ。あと出来ればこちらに顔を見せるようにも伝えてくれ」
シェスカは『了解しました』と一礼し部屋を出て行く。
フィーネもそれに続いて―――扉が閉まった後にタタタッと駆ける足音がしたところを見ると、彼女もマギーのように一刻も早く合流したかったのだろう。
「さて・・・仮面はその後どうなったのか・・・・・・」
先に転移させられてきた四人の報告は既に聞いている。
後は今戻ってきたという二人の口からも情報を得なければ。
そうと決まればいったんこれまでの情報を整理せねばと、伯爵は厳重に保管されている仮面に関する書類やらをまとめ始めた。
「―――ん? なんだか騒がしいな」
ふと気が付くと屋敷の外が賑やかなのこに気が付いた。
活気のある街だとは言え、明らかにこのざわめきは異質な物だった。
「誰かある」
大きな声でそういうと程なくして屋敷の使用人が扉の向こうから姿を見せる。
「お呼びでしょうか」
「外が騒がしいがいったい何があった」
使用人の男に聞いたがその使用人も先程気が付いたところでよく分からないそうだ。
仕方なく窓の向こうに見える民衆に目を向けると、皆一様にして空を見上げ指さしているのが見えた。
「一体何が――」
窓を開けて伯爵も民衆に習って空を見上げた。
雨が降る様子など全くない空とほどよい量の雲が流れる中、ひとつ黒い点が宙に浮いていた。
そしてアレは何だろうと眼を細めて見ていた時、その黒い点の回りに赤い点が無数に出現した。
その数は一個がニ個、二個が四個、四個が八個と増えていき瞬く間に数え切れない数に膨れあがる。
「ま、まずい!?」
伯爵は上空で起こっている事態を理解すると屋敷の外にいる民衆に向けて大声を上げた。
彼の『逃げろおおお!』という声は果たして人々に届いたのだろうか。
黒い点が微かに動く。
その動きに呼応するかのように赤い点達―――火炎弾はソプレゼの街目掛けて放たれた。
地上に当たってクレーターを作り上げる。
建物に当たって倒壊、炎上させる。
そして、人に当たって―――――。
悪魔の攻撃はまだ始まったばかり。
お読み頂きありがとうございます。
前話に至るまでの悪魔の行動と、違うキャラクターはその時何をしていたかを書いてみました。
短いですがご了承下さい。
【次回】再会3、悪魔迎撃開始




