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最終戦 【幕開け】

 

 

 

 脱兎の如く広間から出て行ってしまった仮面。

 


「ちょっ、待て! っくぅ!?」



 すぐに後を追おうとしたのだが、足に激痛が走りその場で膝を付いてしまった。



「主っ」



 イリーナが直ぐさま俺の側に来て俺の体を労るように支えてくれた。



「くそ、そういえば喰らってたんだった」

「待って下さい。今すぐ治癒魔法を掛けます」



 激痛の正体は先程油断して仮面の一撃をもらった傷だった。

 さっきまでは戦闘による興奮などでアドレナリンが出ていたためか気にならなかったが、今になって思い出したかのように痛んだ。



 イリーナは俺の傷を確かめるため破れていたスボンをさらに大きく裂き、傷全体が見えるようにすると手を押し当てて治癒魔法を掛けてくれた。



 ◇◇◇◇◇


 治癒魔法は服の上から掛けても効果はあるし、直接傷に触れなくても治癒に問題はない。

 だが直接肌に触れた状態で魔法を使った方が効果が大きく、早く治癒することが出来る。


 ◇◇◇◇◇



「――終わりました。他に傷や痛むところはありませんか」

「ん、・・・いや大丈夫」



 少し体を確かめるように動いてみたが特に問題はなかった。



「ありがとうイリーナ」

「当然のことをしたまでです」

「それでも、だよ。さて、早くあいつを追いかけないと」



 気を取り直して仮面の後を追うため俺とイリーナは出入り口へと躍り出た。

 当たり前のことだが先程まで治癒魔法を受けていたので、仮面が広間を飛び出してから時間が経っている。

 長々と上へ上へと続く階段には仮面の姿はなかった。



「とにかく地上に出よう」



 俺の言葉に頷くイリーナ。

 そのままイリーナが先行して階段を登る。

 もっともイリーナは宙に浮いて移動しているのだが。



「・・・・・・」



 最後に一度広間を振り返る。

 見つめる先にあるのはもはやバラバラになってしまった男の骨だった。



「やれるだけのことはやるよ。じゃあな」



 誰に言うでもなく俺は呟いた。

 そして体を前へと戻して階段を登った。



「どうかしましたか?」



 階段の途中でイリーナが立っていた。

 俺が一人広間に留まっていたのに気が付いて待っていてくれたそうだ。 



「いや、何でもないよ」

「そうですか。では先を急ぎましょう」



 再びフワッと浮いて先を行くイリーナ。

 俺はなかなかの速さで上へ向かうイリーナの後を三段飛ばしで追いかけた。

 そしてその時だった。



「何だ!?」



 突然背中に寒気が走った。

 腕には鳥肌まで立っている。

 イリーナも今のを感じ取ったようで急制動の後階段に降り立った。



 そして俺は咄嗟に魔力探知を使ってしまった。

 どうせ仮面が持つ魔呪具の妨害で使えないのに―――と使った後になって思い出したが、その結果は思いも寄らぬ物だった。



「あれ、探知が使えるぞ?」

「こちらもです」

「イリーナもか?」



 イリーナも俺みたいに焦ってなのか、使えなかった探知を発動したようだ。

 さっきまで使えなかったのにどうしていきなり使えるようになったのだろう?



「って、考える必要もないか」

「そうですね」



 探知を妨害していた魔呪具を持っていたのは仮面だ。

 そして今もそれを持ってどこかに行ってしまっている。

 きっと仮面が何かしたのだろう。



「でもちょうどいい。探知を使って仮面を早く見つけよう」



 俺は仮面の魔力――は覚えていないので、魔呪具に吸収されていた俺とイリーナの魔力を探知で探す。

 階段を先程までよりはゆっくりとなったが小走りに登りつつ、自分を中心に徐々に探す範囲を広めていく。

 イメージは船や潜水艦のソナー(エコー)。

 自分から魔力の波を放って探し求める魔力の反響を感じ取る。



「・・・・・・見つけたぞ」



 目標を捕らえたのは階段を丁度登り切った時だった。



「私の方も見つけました」

「よし。じゃあ行くぞ!」



 今度は二人で並んで古城の内部を走った。

 それぞれ反応はどこだったか示し合わせる必要もなく、俺達は同じ方向へと駆けていく。



「――あ、曲がり道だと」



 本当なら直進したいところだがそこは壁となっていて通路はL字に曲がっていた。

 今は少しでも速く仮面の元へと辿り着きたい。



「だから悪いが強行手段を執らせてもらう、ぞっ!」



 俺は身体強化の魔法を発動し、さらに土魔法でそこらへんに散らばっていた石や岩――おそらく崩れた古城の一部――をかき集め固める。

 丸太ほどの大きさの鉛筆みたいに尖ったそれを、即席の破城槌(はじょうつい)にする。

 そのまま強化した身体能力で破城槌を投げた(・・・)



「おるあっ!」



 ドギャッ!っと思わず耳を塞ぎたくなる音量と音質が通路に響き渡る。

 俺もそれは予想外で耳を押さえてしまった。



「あ、主。その、やる前に一言、お願いします」

「すまん・・・で、でも近道は出来たから。結果オーライって事で」



 そう言って今さっき開けたばかりの壁の大穴を屈んでくぐり抜ける。

 その時見たが、壁の厚さは五十~六十センチくらいあった。



 その後も二回ほど同じような方法で壁をぶち抜きショートカットする。

 こっちはこれだけ裏技っぽいことをしてこのペースなのに、仮面はいったいどうやってその場所まで移動したのだろう?

 まぁ多分秘密の通路だったり魔法だったりするのだろうけど。



 そうこうするうちに目的の場所、他よりもちょっと豪華で重厚な扉が付いた部屋の前まで辿り着いた。

 探知をずっとしていたが目標が動くことはなかった。

 確実にこの中に・・・・・・。



「・・・行くぞっ」

「はいっ」



 バンッ!と勢いよく扉を蹴り破るとそのまま扉は開くのではなく部屋の中へと飛んでいった。

 そして向かいの壁に激突し粉々になっている。



「――――」



 仮面はその部屋の中で背中を向けて立っていた。

 だが大きな音がしたにも関わらずピクリともせず、ただただ背筋を伸ばして立っている。



 ふとそんな仮面の足下に目を向けると、そこには無造作に床に転がされている光を失ったあの魔呪具があったのだった。





お読み頂きありがとうございます。


次の戦いが物語最後の戦いとなります。


【次回】仮面の暴走が始まる


※加筆・誤字訂正1/1

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