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狂気

仕事の引き継ぎでてんやわんや(汗)

この回も急いで一時間ほどで書きました。

 

 

 

 俺が『この白骨死体は仮面の主だ』という言葉にイリーナは目を見開いて驚く。

 まぁいきなり言われたらそうもなるだろう。



「どういうことですか? 主は何故そんなことを知っているのでしょうか?」

「実は―――」



 俺は先程体験した不思議な出来事についてイリーナに話した。

 転移させられた時に白髪の男に割り込まれ、謎の空間に呼び出されたこと。

 その男は自らを仮面の主だと言ったこと。

 この湖近くにある古城が男と仮面の拠点で、そしてこの広間に行くまでの手順を教えられたこと。

 最後に、命を奪うことで仮面を解放して欲しいと頼まれたことを―――。



「・・・正直なところにわかには信じられませんが、事実こうして主の言う通りの現実があるので信じないわけには行きませんね」

「俺も半信半疑だったよ」



 苦笑いを浮かべるイリーナに、俺も苦笑いを返す。

 手で持ち上げていたフードも元に戻し、男の遺体から離れイリーナと今後について話し合うことにした。



「さて、今後どうするか何だけど。まずは仮面を探さないことには始まらない」

「そうですね。でも一度探知してみましょう」

「あぁ、俺もやるよ」



 ダロスの街は結界で探知が出来ないようにされていたが、ここはどうなのだろう?

 というか、ここってどこだ?

 それも踏まえて調べる必要があるな。



「――ダメです。やはり探知は依然として使えないようです」

「こっちもだ」



 仮面から感じた魔力、地球儀みたいな例の魔呪具から感じた魔力、そのどちらも探知魔法では探し出すことは出来なかった。

 


「こうなったら仕方がない。地道に足で探すか」

「それしか方法はありませんね」

「とりあえず、この広間から調べてみよう」



 俺は広間の入口に向かおうとし、イリーナはそんな俺の斜め後ろに続いた。

 そして―――、


「ようこそ我が城へ。お二人とも」



 そしてそこには(くだん)の仮面が立っていた。



「お前っ」

「主・・・」



 一体いつの間にこの広間に入ってきたのだろう。

 まったく気配を感じなかった。

 俺は咄嗟に刀に手をかけ腰を落とし居合いの体勢を取る。

 イリーナは俺の隣まで来て魔法をいつでも放てるように魔力を高めた。



「いやぁ予想外でした。まさか自力で、しかもこの短時間で隠し部屋まで辿り着くとは。まるで最初からどこに何があるのか知っていたようですね」



 俺には仮面が笑みを浮かべているように思えた。

 ・・・・・・なんだか雰囲気が今までと違う?



「主様、この二人は何か粗相をしませんでしたか?」

「は? 何を言っている?」



 突然仮面は『主様』と言い出した。



「申し訳ありませんでした。ここまで早く主様の元まで辿り着くとは予想外で・・・・・・」



 仮面はその場で片膝を着いて頭を垂れた。

 そして、俺の頭の中にはあるひとつの考えが浮かんだ。



「お前、もしかしてアレ(・・)に話しかけてるのか」

「・・・私の主様をアレ呼ばわり、だと? 口を謹んでもらおうかっ!」



 突然激昂し魔力をその体から溢れ出させる仮面。

 俺とイリーナはその密度の濃い魔力に押されたたらを踏んだ。



「主、もしやこの者は」

「ああ、多分な」



 俺がアレと言って指さしたのは、椅子に座っている『白骨遺体』だ。

 やはり仮面の主だった(・・・)ことは確定したが、ひとつ疑問が浮かび上がる。

 そう、それは―――、



「お前、自分の主が死んでるのわかってないのか?」



 あまりにも普通に話しかけすぎている。

 仮面はまるで生きている人を相手にしているようだった。

 俺はまさかと思いつつも仮面に問いかけてみた。



「・・・・・・」



 仮面は無言だった。

 もしかして俺の考えは間違っていたのか?

 グインタビューで出会ったマギーみたいに実はゴースト(幽霊)みたいな物で、あの白骨遺体には男の意思が宿っているとか。



「は? あなたは何を言っているんですか? 主様が死んでいる? 何を言っているのやら。あなたの目は節穴ですか? 私の主様ならそこに(・・・・・・・・・)座っているではあり(・・・・・・・・・)ませんか(・・・・)」 

 


 俺は背筋に冷たいものを感じた。

 イリーナも息を飲んでいるのがわかる。



 俺の考えは悪い方で合ってしまった。

 コイツは自分の主である男が死んでいるのに気が付いていない、もしくは死んだ現実を受け入れられていないみたいだ。



「―――そうか、だからあいつは『解放してくれ』って言っていたのか?」



 自分が死んでいるにも関わらず、仮面はずっと付き従ってくれている。

 いったいどのくらいの年月かはわからないが、この古城を視る限り百年は経っているんではなだろうか?

 となると、この仮面は一体何者なのだろう。

 少なくとも人間ではないことは確かだ。



「あいつ? 解放? 何を言っているのかはわかりませんが、よそ見していて良いんですか?」

「・・・え」



 仮面が視界から消えた。

 それこそ最初からそこに誰もいなかったかのように。



「さて、ようやく・・・ようやく主様と私の悲願が叶う時が来ました。最後にあなた達の命を頂けば、ね」



 後ろから聞こえた声に勢いよく振り返る。

 その先には仮面が椅子の隣に立っているのが見えた。



「さぁ、それでは死んで下さい」



 パチンと仮面は指を指パッチンの要領で鳴らす。

 すると仮面の手元にあの赤鬼の体内に取り込まれ、俺とイリーナの魔力を吸収したという魔呪具が現れる。



「全属性持ちの魔力と妖精族の洗礼された魔力。ようやくピースは揃いました」



 もう一度指を鳴らすと魔呪具が点滅し、ありとあらゆる属性の攻撃魔法が出現した。

 その魔法からは慣れ親しんだ俺とイリーナの魔力が感じ取れる。



「自らの力で―――死んで下さい」



 三度目の音。

 その音がした瞬間、俺の視界は魔法でいっぱいになり真っ白になった。





お読み頂きありがとうございます。


【次回】最終対決、開始


※誤字修正12/26

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