幕間劇 ~あの後神様は~
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今回は一度書いてみたかった『幕間劇』です。
本編の補足のようなものも含まれています。
※後書きにてご挨拶を書かせて頂きました。
『―――さらばだ! 悠紀君、君の今後に幸多からをことを!』
僕はジメジメした空気が大嫌いだから、わざと明るい調子で言った。
「おう! じゃあな神様!」
悠紀君の方も僕の気持ちを知ってか、努めて明るい返事でもって返してくれた。
僕はその笑顔をしっかり目に焼き付け、元の世界へと意識を戻した。
~~~~~
『お帰りなさい、地球の神』
『やぁやぁ、僕の代わりに留守番ありがとう、あっちの世界の神さん』
意識を戻すとそこはあの野点の会場で、一人の妖艶な美女が出迎えてくれた。
『その様子では、無事に最初の試練を乗り越えた様ですね』
『まぁね! まっ、僕は全然心配なんてしてなかったけどね!』
『ふふ、そうですね』
僕が腰に手を当て胸を張って言うと、神さんは口元を手で隠してお淑やかに笑う。
・・・・・・・・・う~ん。
『どうしましたか? 地球の神』
『あのさ~神さん』
『はい?』
『僕はいつになったら神さんみたいな、大人の女性姿になれるんだろう?』
別に今の幼い容姿が気に入らないという訳ではない。
だが僕も一応女性型に誕生したからにはやっぱりこう、その、なんだ・・・。
『ストーン』というプロポーションよりも『デデンッ』とした方が――――――。
『誰が凹凸皆無まな板ボディだってえぇぇぇ!?』
『落ち着いて、地球の神。わたしはそんなこと言ってませんよ』
『はぁ、はぁ、はぁ』
ちょっとヒートアップしすぎた。
クールダウン、クールダウン。
『それで、どうなのかな?』
『そうですね・・・』
神さんは頬に手を当てて考える。
仕草がいちいち魅力的に見えてきてしょうがない。
『地球の神はまだ生まれて四十六億年くらいなのですよね』
『うん、でも記憶があるのは四十五億年くらい前からかな』
『でしたら自然に成長を待つのなら、後二百億年くらい待たないといけませんね。まだまだあなたは若すぎますから』
『そっか~』
二百億年か。
まぁその程度なら人類観察していればあっという間かな。
『―――ところで地球の神。一つ聞きたいことがあるのですが』
『ん~なぁに?』
僕は野点会場に常備されているお菓子を食べながら、地球の様子を観察する。
『本郷悠紀のこっちの世界の体はどうするつもりですか? 留守中見ていたらどうやら意識不明の植物状態で入院していますが』
『・・・・・・あぁぁぁ!? 忘れてた!?』
精神をあっちの世界に定着させて満足して忘れていた。
~~~~~~
『ふぅ、これで良しと』
『存在自体を始めから無かったことにするとは、かなり強引な手を使いましたね? 地球の神』
『ま、まぁ偶になら良いんだよ! 偶にならね!』
本当なら転移させた直後にするのだが、今回はそれを忘れていた。
きっと人間の医師も困惑したことだろう。
なにせ交通事故に巻き込まれたのに全くの無傷で、問題無いはずなのに意識が戻らないのだから。
しかもあっちの世界で悠紀君が感じた事がこっちの世界の体にも影響するから、脳波を計測すると起きている人と同じ値を示すからなお奇妙だっただろう。
『偶になら、と言いますがそれは――』
『まーまーまー! その話しは置いといて、神さん! あっちの世界の悠紀君の様子を見せてくれよ!』
『ふぅ、・・・しかたありませんね』
やれやれと首を振ってから、指を鳴らす神さん。
するとビート板ほどの大きさの鏡が出現した。
その鏡にはのぞき込む僕と神さんではなく、悠紀君の姿が第三者視点で映し出されていた。
『おや? どうやら最寄りの街に着いたようですが、自警団と戦うようですね』
『え! 本当に!? 見せて見せて!』
僕は座っている神さんの膝の上に乗って一緒に鏡を見る。
――――――親子のようだと突っ込んではダメだ。
~~~~~
『いや~悠紀君凄かったね! しかもアレ全くと言って良いほど魔力使ってなかったよ』
『要所々々で瞬発的に魔力を身体強化に使っているようですが、まだ無意識といった感じですね』
『魔法の使い方は一緒に居るあの女の子が教えてくれるみたいだよ? なかなかの使い手っぽいし、問題無いんじゃない?』
『そうですね』
悠紀君は順調にあっちの世界に馴染んで行ってるみたいで良かった。
一般常識はまだだけど、魔力適正全属性持ちだし、トラブルに巻き込まれても大丈夫だろう。
『地球の神。今度は冒険者ギルドで大男と喧嘩のようですよ』
『どれどれ!?』
何だか僕と神さん二人とも物見遊山気分になってきた。
『うん。相手の大男も強そうだけど、悠紀君には遠く及ばないね』
『地球の神、またちょっと聞きたいことがあるのですが』
『ん?』
相変わらず僕は神さんの膝の上に乗っているので、顔を上に向けて神さんと顔を合わせる。
『先ほど本郷悠紀が言葉が通じる云々呟いていましたね』
『うんそうだね』
『そのあと「文字はどうなのだろう」と言っていましたが』
『・・・・・・あぁぁ!? 忘れてた!?』
何か残された体の時とデジャブる。
―――あとコピペじゃないよ! よく見ると『ぁ』が一つ分短くなってるよ!
~~~~~
『もう忘れていることはありませんか? 地球の神?』
『は、はい・・・多分・・・ないであります、神さん』
急いで悠紀君があっちの世界の文字を読み書き出来るようにしました。
そして、神さんにお説教されました。
・・・信じられるかい?
僕、見た目はコレでも45億歳オーバーなんだよ?
『(ま、神さんは確か三びゃ)』
『地球の神?(ニッコリ)』
―――――僕は死を覚悟しました―――――
『ナンデモナイデス。ナンデモナイデスヨ、ハイ』
『何やら変なことを考えていませんでしたか?(ニコッ)』
『イエイエ、トンデモナイ。タダカミサンワキレイダナート』
『うふふ、ありがとうございます』
――後に、今の数分の出来事を僕は思い出せなくなった。
思い出そうとすると額に汗をびっしりとかき、神さんの笑い声が聞こえてくるようになった。
何故そうなったかは、永遠の謎だ。
『ではそろそろわたしも自分の世界へ帰ることにします』
『うん、いろいろありがとう神さん』
『いえ、わたしもお礼を申し上げます』
結局最初から最後まで神さんは態度を軟化させなかったな~。
僕はフレンドリーに行きたかったんだけど、それが神さんのキャラだって事で諦めるか。
『では地球の神。お元気で』
『うん。あっちで悠紀君のことをお願いね』
『なるべく不干渉を貫きたいですが・・・わかりました。一応覚えておきます』
『それで構わないよ』
ただのピンチなら干渉しないだろうが、この神さんのことだ。
余程のことなら悠紀君の力になってくれるだろう。
『では』
『う~い』
最後はお互い一言だけ言って、僕はここに残り、神さんはあっちの世界へと戻っていった。
『ん~! さてと、人類観察しながらお菓子でも食べるか!』
悠紀君の現状は知りたかったら、神さんに聞いていい事になってる。
僕は安心していつもの神の日常へと戻っていった。
書き始めて3日。
全8話投稿、評価232、お気に入り81件、PV約12500アクセス。(8/31 11:20時点)
コレが言い数字なのか、普通なのか、悪いのか分かりませんが、私はとても嬉しく思ってます。
71人の方にこの小説をお気に入りに入れて頂き、12500回以上私の書いたものに興味を持って貰えたこと。
ランキングにちょろっと入らせて貰ったこと。
皆様に最大限の感謝を。
そして今後もこの『転移チート』をよろしくお願いします。




