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俺の右手が

暴走したり、光り唸ることはありません。

 

 

 

 改めて相手のことを見てみよう。

 身長は五メートルほど、腕は勿論のこと全身の筋肉が異常なほど発達していて膨れあがっている。

 筋肉ダルマと言えばいいだろうか。

 最初は皮膚の下の肉が剥き出しで鮮血の赤に染まっていたが、時間が経ち新たな皮膚が再生し血が乾いてきて今は全身赤黒くなっている。



『RUUAAAA!』

「ちぃっ」



 攻撃パターンは今のように腕を振り回すだけだ。

 ただ握り拳は人の頭ほどありさらにリーチも長い。

 当たればただでは済まないと思う。



『GOAAA!』

「おっと!」



 さらに魔法で強化でもしているのだろうか?

 筋肉で重そうな体に似合わず意外と素早く動いている。

 パンチの繰り出す速度もなかなかの物だ。



「お前っ、みたいなやつ、はっ! 遠距離から攻撃した・・・らっ! 楽なんだけどなっ!」



 俺は赤鬼の手の届くギリギリの間合いをキープして、相手を中心に円を描くように庭をグルグル回っていた。

 もちろん攻撃されるので避け、合間合間に魔法で攻撃もしている。



「そらそらそらっ」

『NU、GAA!?』



 地面が剥き出しな庭ということで魔法で土を固めて放つ。

 最初にレンガを投擲したがあいつの腹に当たってレンガが崩れ、傷ひとつ付けることは出来なかった。

 なので今は赤鬼の顔、もっと言えば目や口を狙ってねちっこく攻撃する。



「そらそr、うおっ!?」



 一見すると俺が一方的に攻撃出来るように見えるが、実際には反撃を受ける。

 立ち止まって狙うなら別だが、今俺は走りながら魔法を発動しているのでどうしても狙いが甘くなってしまう。



『BRAAAAA!』

「おお、怒ってらっしゃる」



 赤鬼は片手を顔の前に「カメラはやめろ」みたいに出して俺の(つぶて)攻撃を防ぐ。

 そして開いた方の手で今度はパンチではなく腕を振り下ろしてきた。



「うわっ! モグラ叩きじゃねぇぞ!」



 思わず俺も魔法を中断してしまう。

 こんな時側にイリーナがいてくれれば俺が言わなくても魔法のサポートをしてくれるのに。



「いや、それは甘え過ぎかな」



 魔法はイリーナを召喚してから特に修練していなかった。

 そのつけが回ってきたということだろう。



「もっとデカイ一発が打てれば・・・・・・嫌まだダメだ」



 刀を相手に奪われた今の俺の攻撃手段は魔法だけだ。

 何度か引き抜こうと手を伸ばしたが、柄を握るところまで行っても引き抜くまでの猶予はなかった。

 眼前にゴオオッっと迫ってくるエルボー(肘)は怖かった。



 周囲の被害を考えない強力な魔法を放てばこの状況を打破することが出来るかもしれないが、今はまだその方法は採れない。

 庭を囲むように立っている屋敷のあちこちに住人が倒れているのだから。



「このっ」

『WOOOOO!』



 今は屋敷の住人を安全な場所に移動させているイリーナが戻ってくるのを待つしかない。



「本当だったらお前なんかっ」

『AAAAA!』



 赤鬼の左フルスイングをボクシングのダッキング――お辞儀するように前に屈んでパンチを避ける方法――で躱す。

 髪や頬を風が撫でる。



「――ん?」



 ふと目に入ってきたのは、屈んだ時に目の前にあった中途半端に赤鬼に刺さったままになっていた俺の刀『烈光丸』だ。

 相変わらず回収する暇もなく攻撃されたのでダッと地面を蹴り距離を取る。

 あれだけ動いているのに刀は抜けることなくそこに留まっていた。



「そうだ・・・」



 あることを思いついた。

 何故今まで思いつかなかったのだろう。



「とにかく何でもチャレンジだっ」



 狙うのは相手が左手で殴りかかってきた時。

 俺はわざと右――赤鬼から見たら左へと直線的に移動する。

 


『RUOOOO!』



 赤鬼は左腕を持ち上げ振り下ろす体勢を取る。

 本当だったらパンチとか、腕を伸ばすように仕向けたかったが問題無いはず。



『GAAAA!』



 赤鬼の硬く握られた拳が頭上から振り下ろされる。



「――今だっ!」



 俺は散々見てきた動きなので難なく躱す。

 身体強化の魔法様々だ。

 背後で拳が地面にめり込む音と振動、飛び散った土が背中に当たるのがわかる。



『GUAA!?』



 赤鬼は俺が接近してきたことに少し驚いたような声を上げる。

 今までずっと一定の距離をとり続けていたからそれも仕方ないだろう。



「くらええっ!」



 腕をかいくぐった俺は右拳を振る。

 狙いは、刀の柄頭(・・・・)だ。



『GGAAAAA!?』

「痛ってええっ!?」



 ほんの一瞬相手の動きが止まったおかげで狙い通り拳は柄がしらに命中した。

 体術はそんなに修練していなかったので、止まってくれたのは好都合だった。



 身体強化されていた俺の拳の一撃により、刀は先程までより深く突き刺さった。

 赤鬼は化け物じみた顔に苦悶の色を浮かべ咆哮を上げる。



「いっつぅっ」



 だが俺も無傷ではなかった。

 殴った右拳を見ると中指がどうやら折れているようだ。

 


「でも、まぁ。これで、時間は、稼げる、だろ」



 俺はズキズキと痛む右手を庇いつつ、大声を上げ刀を抜こうとする赤鬼を見ていた。




お読み頂きありがとうございます。


馴れないことをするとしっぺ返しが帰ってきます。

赤鬼との対決はあと1~2話を予定しています。


【次回】イリーナ合流


※誤字訂正12/18

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