探索中の小さな出会い
結局あの後、俺はイリーナと連携して盾持ちの男と魔術師の女性を無力化した。
イリーナが遠距離から魔法を使い、俺がそれに乗じて接近戦を挑んであっさりと勝負は付いてしまったのだ。
「やっぱり連携って大事なんだな。うんうん」
「?」
突然頷きだした俺を不思議そうに首を傾げて見ているイリーナ。
見た目クール美女なのにその可愛い仕草というギャップがまた良いねっ。
先程の戦いを振り替えてってみよう。
俺が魔術師に斬り掛かったことで魔術師の盾持ちへの回復魔法が途切れ、そこにイリーナの魔法が炸裂、まず盾持ちが崩れ落ちる。
あとはイリーナの支援を受けつつ魔術師に接近戦を挑んではい終了。
その後なんら問題無く街を進むことが出来た。
途中やはり妨害はあったが、あの冒険者達に比べたら見劣りする連中ばかりで拍子抜けしたほどだ。
おそらくだが、あの四人は相当ランクが高い冒険者だったのだろう。
一気に兵士が十人出てきた時もあったが、イリーナとの連携にも馴れてきた俺達の敵ではなかった。
「ふぅ、今のでラストかな」
額にうっすらとかいた汗を服の袖でグスグシと拭き取る。
たった今冒険者と兵士の混合パーティを全員無力化し終えたところだ。
「お疲れ様です」
「あぁ、そっちもね」
とはいってもイリーナは俺と違って汗一つかいていなかった。
まぁピンチらしいピンチもなかったし、接近してくる敵は魔法で吹っ飛ばし、魔法を放ってくる敵は打ち消した上で魔法で吹っ飛ばし、吹っ飛ばし、吹っ飛ばし・・・・・・うん。
「なんか流れ作業みたくなってきたな」
別に俺は戦闘狂とかではないからこれでも良いんだけど。
こんなに緊張感が無くて良いのだろうか?
「じゃあ周辺を探索してみよう。何かあったらお互い魔法で知らせること」
「わかっています。お気を付けて」
「そっちもね」
俺とイリーナは地面で死屍累々(本当には死んでいないが)になっている人々を踏まないようにしつつ周囲の探索を開始した。
イリーナが言うには今この街を覆っている結界、それを発動している魔呪具の気配を近くで感じたのだそうだ。
探知は相変わらず出来ないのだが、これ程までに強力な結界を張っている魔呪具なら近づけばちょっとはわかるらしい。
『結界を何とかすれば脱出、もしくは援軍の期待が出来ます』
そう言われ俺達は仮面の人を探しつつ今は結界発動魔具の探索をしていた。
「・・・・・・ダメだ。俺にはわからないな」
イリーナには少し感じ取れる魔呪具の気配が俺にはわからなかった。
だけどさすがに家の壁一枚挟んだ向こうとかに魔呪具があれば俺でも感じられるはず、と言うイリーナの言うことを信じて探索を続けた。
一人で探すより二人の方がいくらかいいからね。
「――んぉ?」
キョロキョロ見回していると一匹の黒猫がどこからか飛び降りてきた。
音もなくシュタッと地面に着地すると俺の事を見つけたらしく穴が空くほど見てくる。
「猫か・・・そういえば、動物も操られてるのかな?」
ちょっとした好奇心から猫にちょっかいを出してみる。
「ほれほれ、ほれ」
猫の前にしゃがんで指を一本伸ばしてその先に小さな魔力球を作り出す。
大体ビー玉くらいのそれは仄かに光っている。
そう、これは例のフラッシュグレネード擬きの極小版だ。
「・・・にゃ」
指を動かして一緒に魔力球も動かすとやはり猫はそれにつられて首を振った。
だが猫パンチを繰り出してきたりはしない。
それどころか無視して俺の方へとゆっくりと歩み寄ってきた。
「お、おぉ? なんだお前。甘えてるのか」
「ゴロゴロ」
猫は俺のくるぶし当たりに体を擦りつけている。
喉の奥でゴロゴロ鳴いているので甘えているのだろう。
「よしよし」
俺は猫の頭から首にかけて撫でてやる。
・・・・・・可愛い。
今まで犬派とか猫派とか興味なかったけど、今この瞬間から俺は猫派になるぞ!
「よぉしよしよしっ! わしゃわしゃわしゃぁっ!」
だんだん熱が入ってきたその時だった。
イリーナが探索していた方向で上空に狼煙のように細い火柱が上がった。
「イリーナか? 何か見つけたのかな」
俺は名残惜しいが猫を撫でるのを止めて踵を返す。
だが、猫はそんな俺の後を付いてきたのだった。
「ダメだぞ付いて来ちゃ。危ないことがあるかもしれないんだからな」
「にゃぁ」
「にゃぁ、じゃないだろ? ほれ、あっちへお行き」
「・・・ゴロゴロ」
猫の体を持ち上げて反対を向かせるのだが、すぐに俺の足下に舞い戻ってきてしまう。
「くっ! 可愛すぎるっ! だが、すまんッ」
俺は後ろ髪を引かれつつも一気に跳躍して屋根の上へと登った。
そしてそのままイリーナが上げたと思われる魔法の地点へと向かった。
「にゃあ・・・・・・」
お読み頂きありがとうございます。
今の今までネタが思いつかずやっと書き終えました><;
ちなみに作者は猫派です。
【次回】ガーディアン




