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パーティ戦、決着

難産でした

 

 

 

「次はお前だ」



 さりげなく横に移動しながら剣士の男に刀を突きつける。

 横にズレたのは、背後に寝かせた弓使いの女性エルフのことを考えてだ。

 巻き込んだりしたら大変だからな。



 ちなみに剣士に向けて放っていた魔法攻撃はもう止んでいる。

 弓使いに予想外の二撃目を放つことになったので、集中力が切れてしまったからだ。



「・・・・・・」



 剣士は相変わらず死んだ魚みたいな目でもって俺の事を見てくる。

 だがその身には無数の汚れや傷が付いているのが見て取れた。

 恐らくあの魔剣一振りだけでは全ての魔法を捌ききれなかったか、防いだ時の余波でも喰らったのだろう。

 


「イリーナ、そっちは―――大丈夫そうだね」



 向こうで戦闘中のイリーナの様子はどうかと思ったら、先程から一歩も動かず魔法で盾持ちと魔術師を圧倒していた。



「はい、問題ありません。万が一にも負けることはないでしょう」



 戦闘中にも関わらず俺の方によそ見するイリーナ。

 まぁそんな時でも魔法は放ちっぱなしだから相手も反撃出来ないようだけどね。

 あ、なんか盾持ちの男の前で爆発が起きた。

 魔術師は盾持ちの回復で手一杯のようで攻撃に回れないようだ。

 


「意外と耐えますね。そこまでの力を身につけるのは大変でしたでしょうに」



 感心しているようだが眉一つ動かさずマシンガンのように魔法を打ち続けるイリーナ。

 ・・・・・・相手が可哀想に思えてきた。



「と、とにかくそっちは任せるからな。こっちも手早く終わらせる」

「わかりました」



 気のせいだろうか?

 イリーナが生き生きとしている気がする。

 あと頬がほんのりと色づいているような・・・・・・変な物に目覚めてないと良いけど。



「それはそうと、主」

「ん?」

「そちらの剣士ですが、治療(・・)を終えたようですよ」

「へ?」



 剣士をちゃんと見てみると先程まであった傷が治っていた。

 服や装備の汚れや傷はそのままだったが。



「え、どゆこと?」

「魔剣で吸収した魔力を治癒に使ったようですね」

「そんなのありかよっ」



 イリーナの方に気を取られすぎたな。

 これも探知魔法が使えていれば魔法の発動に気がつけたのに。

 本当に面倒くさい結界を張ってくれてもんだな、あの仮面。



「しょうがない、気を取り直してやりますかっ」

「・・・・・・」



 剣士と改めて向かい合う。

 背後ではイリーナ達の戦いが続いている。



 俺は左半身を剣士に向け、刀を右腰横で腰構(こしがま)えのように構える。

 こうすることで相手からは刀がよく見えなくなるのだ。 

 剣士もこの独特な構えを見てか攻めてこず、まるで俺達の周りの音が一切なくなったかのよう―――



『ふふっ、まだ耐えますか。では次はこれを・・・・・・うふふ』



 俺は何も聞こえなかった。

 背後の声?何のことだろう?

 ただ地面が揺れたり、突風が背後から吹いてきたりしてるだけだ。

 背筋が凍りそうな笑い声なんて聞こえなかった。


 

「―――っ」



 ふと、剣士の体に緊張が走るのがわかった。

 何故だかわからないが絶好のチャンスだ!



「ぜぇああっ!」

「!?」



 俺は一足飛びに左肩からタックルするように突っ込んだ。

 魔法で強化した筋肉の力もあり、まるで自動車のような速度が出ている。



「ちぃっ!」



 剣士はそれでも反応して見せ右(俺から見ると左)へとステップする。

 なるほど、俺の背中を取ろうと言うつもりだな。

 剣士が元々立っていた場所に到達したが、そこにもちろん剣士はいなくて予想通り俺の背中側に回っている。



「だが甘いっ!」



 俺は勢いそのまま左足を軸にして駒のように回転した。

 剣士の方に体の正面を向かせ下半身から上半身、腕と捻った体のバネを解放し刀を斜め下から切り上げる。



「くらえっ」



 ヒュンッという小さな音が刀を振った際に聞こえてきた。

 元々の力、魔法で強化した力、遠心力、全ての力が乗ったそれは剣士―――ではなく、剣士が持つ魔剣へと吸い込まれていった。



「っ!?」



 剣士はその光のない目を大きく見開いた。

 さっきまで視界に入っていた自分の剣が消えたのだから驚きもするだろう。

 慌てた様子で自分の手を見ると、そこには殆ど鍔の根元から綺麗に切られた己の魔剣が目に入ったことだろう。



「よし!」



 切った張本人の俺は思い通りに切れたことに状況も忘れてガッツポーズを取ってしまった。

 まるで豆腐や紙を切ったみたいに抵抗なく刀を振り切ることが出来嬉しくなってしまったのだ。



 逆に剣士は呆然と立ち尽くしている。

 きっとそれだけ信じがたい光景なのだろう。



「悪いけど。終わりにさせてもらうよ」



 俺はそのまま返す刀を剣士の体にピタッとくっつけ、いつも通り電撃を流した。



「ふぎっ!」



 体がビクンッとし、柄しか残っていなかった魔剣が地面に落ちる。

 そしてゆっくりと膝から崩れ落ち前のめりに倒れる剣士。

 顔面を強打しないように支え横たわらせ、起き上がらないのを確認するとイリーナの援護のために背後を振り返り歩を進めたのだった。




 ◇◇◇◇◇


  


『―――あの冒険者達はやられましたか』



 薄暗い部屋の中で仮面を付けた人物が呟く。



『そうでなくては』



 敵が勝利したというのに嬉しそうだった。



『さぁ、早くここまで来て下さい・・・』



 仮面の人はそう言ってまたユーキ達の様子をどこからか見つめるのだった。




 

お読み頂きありがとうございます。


腰構えは実際にある構えです。

本来は捨て身の攻撃などに適した構えで、剣道ではまず使われない物です。


あとは、剣士が見せてしまった隙。

これは主人公の背後で起きていたイリーナの暴走?をみて思わず出てしまったという設定。


【次回】未定

(すみません。ネタが思いついておらず考え中です><; いつもはその場で考えているのですが・・・今回はなかなか出てこない)


※加筆12/8

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