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VS冒険者パーティ 【2】

おかしい。

この対決はサクッと終わらせるはずだったのに。

 

 

 

「さて、どうしようかね」



 冒険者の四人とにらみ合いが続いている。

 さっきちょっと暴発気味に矢が飛んできたが、それはノーカンと言うことで・・・・・・。



「・・・やっぱり雰囲気が凄いね。鳥肌が立ちそうだよ」



 四人の目に光はなく無表情だが、かえってそれが怖く感じる。

 


「彼ら一人一人が相手なら主の敵ではないでしょう」

「じゃあ四人組んで連携してきたら?」

「・・・主なら大丈夫です」

「ちょっと、その間は何? 心配になるから止めてくれよ」

「・・・・・・」

「無言はもっと止めて?!」



 傍から見たら『こいつら何やってるんだ?』と思われそうな漫才もどき。

 別に余裕があるからふざけている訳じゃないんだ。

 逆にないからつい軽口を叩いてしまって・・・・・・つまり口にしてないと不安になる。



 いくら魔法や剣を鍛えて強くなっても、元々俺は平和な日本で育った人間なんだ。

 こっちに来て初めて実戦―――殺し合いをしたしどうしようもない屑だったが、何人かの命も奪ったりもしたけど、あれは格下相手だったから心のどこかで余裕を感じられていた。



 だが今は違う。

 心の警鐘が鳴っていて、出来ることなら逃げたい。

 だけど逃げてもきっとこいつらは追いかけてきて最後は戦うことになるのだと思う。

 だったら今ここで戦った方がいいと思うのだが―――。



「主」

「あ、あぁ」



 剣士と盾持ちの男二人がジリジリと距離を詰めてきた。

 その後ろでは逆に弓使いと魔術師の女性二人が徐々に距離を取っている。

 俺はいつの間にか下がっていた刀を構え直す。



「―――主。今の主はどうやら本調子ではないようですね」

「―――っ」


 何故わかったのだろう。

 イリーナは優しい声で俺に話しかけてくる。

 


「さっきの無言は冗談です。主が本来の力を発揮出来れば四人を相手取っても間違いなく勝てます」

「イリーナ」

「私も微力ながらお手伝いします。二人でこの場を乗り切りましょう」

「・・・・・・ありがと」

「いえ。私は主のパートナーですから」



 イリーナが俺に微笑んでくれる。

 俺もつられて微笑―――めたかは正直自信がないけど、苦笑いくらいは浮かべられたんじゃないかな。



 いつの間にかさっきまでと比べると体がほぐれたような気がする。



「先手を取りましょう。後手に回るのは得策ではありません」

「わかった!」



 俺の心の変化を感じたのか、四人はジリジリ動くのを止めこちらの様子を(うかが)っているようだ。



「動かないのですか。それでは良い(まと)ですよっ」



 イリーナが手を前にかざす。

 手の平を正面に向けるとそこから風が発生し、それは小さな渦となった。



「はあっ」



 気合いを入れるような小さな掛け声と共にその渦は手の平から放たれ、地面と平行に敵目掛けて伸びていく。

 それはまるで横に伸びていく竜巻だった。



「っ!」

「おおぉ!」



 竜巻の進路上にいた剣士はすかさず横へと跳び、盾持ちはその大きな盾を地面に突き刺すように置き竜巻を受け止める体勢を取った。

 後ろの弓使いと魔術師を守るためだろう。



 一人回避していた剣士は魔法を放っているイリーナを先に始末しようと向かっていった。

 やはり最初に出会った時のように突きの構えを取っている。



「やらせるかよ!」

「くっ」



 俺は剣士に斬り掛かった。

 一応峰打ちだったがそれでも鉄の塊を叩きつけるのだから当たれば無傷では済まない。

 剣士はイリーナへの攻撃を中断し、俺の攻撃を防ぐ体勢を取る。



「主っ、そちらに弓の女が行きましたっ!」



 イリーナは竜巻の中に土か氷の礫を混ぜ始めたようで、盾に何かがぶつかる音が連続して聞こえてきた。

 イリーナの魔法をずっと受け続けるのは無理だと思ったのだが良く保っているなと思ったら、後ろで魔術師が何かの魔法を発動している。

 恐らくだがあの魔術師も援護しているから今まで保っていたのだろう。

 こちらは任せても大丈夫そうだ。



「弓の人は―――うおっ!」



 また顔面目掛けて矢が飛んできた。

 それに驚いている隙に剣士が距離を取ってしまう。



「びっくりしたぁ。よくこの状況の中ピンポイントで狙えるな」



 竜巻の影響で少なからずこの場には風が吹いている。

 そんな中でも正確に射ることが出来るなんて凄いの一言に尽きる。



「お返しだ!」



 俺は空いている手を弓使いへ向け電撃を放った。

 もうこの魔法は何度も使ったから威力の調整はばっちり、体を麻痺させる程度だ。

 不殺を貫き通す俺にはこれほど適した魔法はないだろう。



「ぜああ!」



 だが俺の魔法は目標に届くことはなかった。

 剣士が魔法をぶった切ったからだ。



「なにっ、あっ! そういえば魔剣だったな」



 忘れていたが剣士の剣は『魔力を吸い込む魔剣』だった。

 魔法の源である魔力を吸われたらそりゃ魔法は霧散してしまうよな。



「だったら」



 俺は再度魔法を発動し、今回はバスケットボールくらいの大きさの球にして放った。

 狙いはもちろん弓使いのエルフだ。

 剣士に防がれてしまうがそれが狙いだ。



「この隙に肉薄するっ」



 魔法を魔剣で防ぐのに手一杯の男を後目(しりめ)に女性へと駆けた。

 男は焦るが俺の止むことのない魔法の雨の対応に追われてどうしようもなかった。

 


 女性もバックステップしながら矢をつがえ応戦しようとする。

 今度は何と矢を一度に二、三本放つという技を見せてきた。

 しかもその矢は全て眉間や心臓といった急所を狙ってくるのだから神業と言っていいだろう。



 俺は魔法で身体能力を強化して矢を避けはじき飛ばす。



「もらった!」

「うぐぅ!」

  


 刀の間合いまで近づき女性の利き腕と思われる右肩目掛けて刀を振り下ろす。

 もちろん峰打ちでだが、骨折くらいを勘弁してもらいたい。

 女性は弓で刀を受け止めようと動いたが、『折れず、曲がらず、腐食せず』の刀は難なく弓を破壊した。

 そのまま多少威力は落ちたが女性の肩を捕らえる。



「ごめんよっと!」

「っ!」



 今度は手加減して女性の腹に拳を叩き込む。

 女性は防ぐ(すべ)もなく攻撃を受け、一瞬体を硬直させた後くたっと体を折る。



「おっとっと」



 地面に倒れ込む前に女性の体を支え優しく地面に寝かせた。

 ―――その時『あ、やわらかい』とか『あ、なんか良い匂いが』とか思ったのは内緒だ。



「さて、次はお前だ」



 俺は今度は剣士と対峙する。






お読み頂きありがとうございます^^


【次回】VS冒険者パーティ【3】(作者も予定外><;)

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