VS冒険者パーティ
剣を持って突っ込んできた男を紙一重で躱した。
そのまま男は俺の背後へと駆け抜けていき、俺も振り返ろうとした。
だがその時だった。
『しぃっ!』
微かに聞こえた声と小さな音。
思わず振り返るのを辞め音がなんなのか確かめようと思った。
「主っ」
いきなりイリーナが魔法を発動して大きな氷塊が地面へと突き刺さった。
刺さった場所は俺の近くでかなり驚いた。
「おわっ!?」
「申し訳ありませんっ、主の身を守るため致し方なく」
イリーナは飛ぶのを止めて俺の傍らに降り立つと、剣の男が飛び出してきた建物目掛けて雷撃を放った。
「くっ!」
すると壊された窓から弓を持った女性が飛び出してきて、間一髪イリーナの雷撃を回避した。
「あっ、もう一人の奴か!」
「はい。主を射ようとしていました」
「さっきのはそのためか。ありがとう、イリーナ」
お礼を言いつつ俺は腰に差した刀を抜く。
この四人相手では抜かざるを得ないようだ。
「えいっ!」
構えを取ると同時に最初に現れた二人のうち、杖を持っている女性の方が掛け声を上げた。
そして杖を掲げると火球を作り出し俺達に向けて放ってきた。
「ここは私が」
イリーナが一歩前に出ると先程地面に突き刺した物よりも大きな氷塊を作り出す。
鏃のような形をしたその氷塊は飛んでくる火球へと向けて放たれた。
「主に傷など付けさせません」
火球と氷塊。
火が氷を溶かしてしまいそうに思えるが、そこはイリーナである。
予想を裏切り氷塊は火球に突き刺さるとバガンッ!という音と共に破裂し火球を霧散させた。
「きゃあっ」
さらにそれだけでは終わらず、破裂した際に出来た氷塊が礫のようになり杖を持った女性に向かっていく。
「って、イリーナ!」
勢いのついた氷の礫はこのままだと女性に突き刺さる。
脳裏には蜂の巣になった女性が過ぎったが、現実にはそうはならなかった。
「ぬうん!」
女性の前にもう一人の盾を持った男が立ちふさがり、自身と女性を盾の陰へと隠した。
次いで盾に礫がぶつかる音が立て続けに響く。
盾にぶつかるだけでなくその周りに着弾した礫もあった。
「意外と硬いですね」
礫の雨が降り止むと無傷の男と女性がそこにはいた。
さらに先程俺に突撃してきた剣の男、弓で狙撃してきた女性も二人と合流し両者は一定の距離を取ってにらみ合うこととなった。
「おいイリーナっ、さっきの危なかったぞ!」
「はい?」
「あのままだったら杖持った女の人ケガじゃ済まなかっただろっ、結果は大丈夫だったけどさ」
「・・・・・・」
「顔背けるなよ?!」
これはイリーナの奴忘れてたな。
カッとなったのかもしれないが、不殺は貫いてもらわないと。
「まったく、気をつけてくれよ。この人達は操られてるだけなんだから」
「申し訳ありません。ですが、主に危害を加えようとするのを見て無意識に・・・」
シュンとした感じで肩が落ちるイリーナ。
そんな時に下から見上げるような上目遣いで俺の事も見つめてくるなんて―――反則だろ。
しかもちょっと瞳が潤んでいるのが何とも言えず・・・・・・。
「ま、まぁ今度から気をつけてくれよ。俺の事を心配してくれるのはありがたいけどさ」
「はいっ」
俺はちょっと照れくさくなりつつもイリーナの頭に手を乗せポンポンと軽く叩く。
イリーナの方が年上に見えるのだが、こういう時は幼く見える。
「さて、こんな事してる場合じゃないよな。あいつらを何とかしないと」
十分隙があったと思うのだが四人はこちらに仕掛けてくることはなかった。
見るとどうやら盾の男と弓の女性を治療していたようだ。
杖の女性が回復魔法を使っていた。
「あの人攻撃魔法だけじゃなくて回復魔法も使えたのか」
「仮面に操られ能力が飛躍しているのを差し引いても、なかなかの手練れですね」
じつはこの四人組みは冒険者でパーティを組んでいる。
そしてそのランクはガルシュバのギルドで☆8、もうちょっとで☆9になりそうというトップクラスの実力者なのだ。
だがそんなことを俺もイリーナも知るわけはなかった。
(☆8や☆9については、12話『実践の次は実戦』内にて説明を書いております)
「剣士に盾持ち、弓使いに魔術師か。バランスが取れてるな」
まさに見本的なパーティ編成ではないだろうか。
後で登場した剣と弓の二人。
剣士の方は俺より少し若く見える。
手足と胸部分に金属の防具を着け額当ても付けているが、それ以外は機動性を上げるためか付けていない。
剣はごく一般的な長さと形状だがピカピカに磨き上げられていてよく切れそうだ。
弓の女性はエルフだった。
弓は木製なのかわからないが真っ白でそれに対するように真っ黒な矢をつがえている。
もちろんその矢は俺に向けられていて、いつでも放てるように警戒されていた。
防具は革鎧を着けていて、ホットパンツのような物から伸びる白い太ももが眩しかった。
・・・・・・胸当てで押さえつけられているのか、胸の起伏が無いように―――――、
「おわあぁっ!」
いきなり矢が俺の顔面目掛けて放たれた。
しかもさっき聞こえた『シュッ』という音ではなくなぜか『ズドンッ』という信じられない音が聞こえてだ。
「ちょっ、危ない! イリーナっ、なんで今のは防いでくれなかったの!?」
目の前から放たれたのだ。
気が付かなかったなんてことはないだろう。
「・・・何やら主から嫌な気配を感じて。―――そんなにあのエルフが気になりましたか?」
おかしい。
イリーナから殺気を感じる!
ついでに弓の女性も操られているはずなのに、批難するような視線を俺に向けている気がするっ。
ってイリーナ?目からハイライトが消えてますよ?
以前も言ったがまた言っておこう。
『男のチラ見は女にとってガン見も同然!』
最後までお読み下さってありがとうございます。
冒険者パーティと戦闘をするはずだったのに・・・それは次回に持ち越しという事で(汗)
【次回】VS冒険者パーティ【2】
※一部修正12/5




