表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Fantapia ~転移チートが異世界を行く~  作者: アズマ
グインタビューの街
7/92

お約束の後は宿探し

間違えて即投稿してしまいましたので、改めて予約投稿しました。

大変申し訳ありません。


仕事が忙しくなり更新ペースが遅れそうです。

1~2日に1話くらいかな

 

 

 

「小僧てめぇ! 新入りのクセして生意気だぞ!」



 大男が俺に近づいて来る。

 スキンヘッドの頭には太い血管が浮かび上がっていた。



「えーと。どちら様でしょう?」

「なんだ~? 俺様のことを知らねえってか!? てめぇどこのもんだよ」

 


 大男は『あぁ~ん?』と前屈みになり俺を睨み付ける。

 ・・・・・・うん。コレはどう考えてもアレだな。



「アレですか? 俺が新人なのにフェルと仲よさそうなのが生意気だと」

「わかってんなら話しがはえぇ。小僧! ちょっと表出ろや!」



 大男は俺に向かって手を伸ばしてくる。

 けれどその手は俺に届く前に止まった。



「ちょっとガンス! ユーキに何しようとしてるのよ!」

 


 俺に届く前にフェルが間に割って入ったからだ。



「フェル、そこをどけや。俺ぁこの小僧に用があんだよ」

「あんたね! いっつも新人を虐めるのやめなさいよ!」

「コレは虐めじゃねぇ! このギルドの掟を教えてやんだよ」



 掟を教えるというガンスと呼ばれた大男の発言に、他の冒険者の男達が賛同の声を上げた。



『そうだそうだ!』『俺たちのフェルに、あの野郎ぉ』『なぁあの男誰だ? 新人みたいだけど』『チクショウ、フェルさんとあんなに仲よさそうにっ』『う、羨ましくなんてないんだからな!』『ガンス! やっちまえ!』



 ・・・・・・つまりそういうことである。

 このギルドでフェルはアイドルみたいなものなのだろう。

 あと一人、なんかツンデレが混じってなかったか?



「フェル、別に良いよ」

「ユーキ!」

「ほぅ? 小僧、なかなかに潔いじゃねえか」



 俺はガンスとの間に立つフェルを優しく横にどかし、見上げるように向かい合う。



「外へ行くんだろ? さっさと行こうぜ」

「ふん。その態度改めさせてやるぜ」



 ガンスに対しては敬語を使わなくても良いだろう。

 腰の刀に手をかけつつギルド前の道へ出る。



「それじゃあ、たっぷり教育してやるぜ」

「勉強が必要なのはあんただろ。脳筋臭がするぜ」

「のうきん? なんだそりゃ」



 脳筋は通じなかったか。

 なんか言葉が普通に通じるから大丈夫かと思ったが、そもそもどういった原理で通じてるだろう。



「(ま、神様が何かしてくれたって事だろう。転移なんてものを経験した俺はもう何でもこいだな)」



 まだこの世界の文字を読んではいないが、それも問題無いと思う。

 言葉が通じるのに読み書き出来ないなんて・・・・・・。



「いや、あの神様じゃ忘れてるかも」

「何ぶつぶつ言ってやがる!」



 どうやらいつの間にか独り言を呟いていたようだ。

 ガンスは自分が無視されていると勘違いし、拳で殴ってくる。



「おっと、危ないな。その斧は使わないのか」

「街中で得物を使うほど俺ぁバカじゃねぇ! そんなことしたら自警団にしょっ引かれちまうわ!」

「へぇ~、そうなのか」



 俺は柄に掛けていた手を離した。

 危うく刀を抜くところだった。



「じゃあ俺も無手で殺るか(・・・)

「なめてんじゃねぇぞ!?」



 普通の成人男性の二倍はあろうかという腕が、拳が俺の腹目掛けて振るわれる。

 だがそのスピードはキングボアの突進よりも、デスドッグの飛びつき寄りも、何より経験した中で最速だったオリオさんの突きに比べたら――――――。



「おせぇぞおっさん!」

「!? なにぅぼあぁぁ」



 迫り来る拳をわざと紙一重で躱し、密着するとそのままタックルをぶちかます。



 ガンスはその巨体を宙に浮かせ、地面を転がった。

 しかもその勢いはなかなか止まらず、最終的には近くにあった廃材置き場?のような場所に『ドガァン!』やら『ガチャァン!』という音と共に突っ込んで止まった。



 埃やら土煙が晴れると、廃材置き場からは某有名映画のように『逆立ちした二本の足』だけが突き出ていた。



「・・・・・・やりすぎた?」

「そうよバカ!」



 最後にフェルに頭を殴られました。




 ~~~~~




「いや~まさか俺みたいな大男を吹っ飛ばすとは」

 


 あの後すぐに助け出したガンスは、何事もなかったかのようにケロッとし、今は俺とフェルと三人でギルド内の食堂に座ってる。



「いや、こっちこそ悪かった。ちょっと力加減をミスって」

「気にするなよ兄貴(・・)

「・・・兄貴はやめてくれないか」

「いや、誰がどう言おうとも兄貴は俺の兄貴ですから」

「・・・はぁ~」



 そうなのだ。

 あの後ガンスは俺のことを『兄貴』と言い出した。

 ガンス曰く『あそこまで見事に負けたのは初めて。これは兄貴と呼ぶしかない』らしい。



「でも同い年(・・・)だろ?」

「年なんかかんけぇねぇですよ」



 あと驚くことにガンスは俺と同い年(二十歳)だった。

 ガンスは俺の年齢を聞いて『え!? 十五、六かと思ってた!』と驚いた。

 フェルはガンスの年齢を知った時は『え!? 嘘!? 四十位だと思ってた!』と言っていた。

 ガンスがそれを聞いて『よ、よんじゅう・・・』と密かにショックを受けていたのは黙っておいてやろう。



「ねぇユーキ。もう暗くなるわよ。そろそろ宿を決めないと」

「ん? あぁもうそんな時間か」



 今日はいろんな事があってあっという間に時間が過ぎたな。

 転移して、魔物と戦って、自警団で戦って、ギルドで戦って・・・・・・俺戦ってばっかりじゃね?



「それじゃあ、そろそろ行くか。フェル、この街の宿屋に案内してくれないか?」

「もちろん良いわよ。ユーキの宿を知ってないと連絡出来ないしね」

「あぁ・・・済まなかったな。今日は依頼を受けられなくて」

「別に気にしてないわよ」

「・・・自分のせいで申し訳ない、兄貴。フェル」



 頭を下げてくるガンスに『気にするな』と声を掛け、ミラーさんにも挨拶してフェルに宿屋を案内して貰う。

 その後ろでは一人になったガンスに、男達が群がって何やら話していたが『兄貴に手を出すやつぁは俺が許さねぇぞ!』と聞こえると散っていったようだ。




 ~~~~~




「ここがこの街で一番の宿ね。安くて、清潔で、ご飯が美味しいっていう完璧な宿ね」

「そうか、それはありがたいな」



 フェルに案内して貰った宿は『安らぎの宿』という名前だった。

 何でもフェルの従姉妹が経営しているそうで、太鼓判を押して勧められた。



「じゃあ私は帰るわね」

「あぁ、また明日な、フェル」

「えぇ、お休みなさい! ユーキ」



 手を振って笑顔で駆けていくフェル。

 俺は宿の前でフェルの姿が見えなくなるまで見送ってから宿に入った。



「すみませ~ん」

「はい、いらっしゃい。今日はお食事? それとも泊まり?」

「あっ泊まりでお願いします」

「はいは~い」



 宿の受付には俺と同じくらいの女性が座っていた。

 その顔はどことなくフェルに似ているように見える。

 つまり可愛い子だった。



「ん? どうかした?」

「いや、フェルに似てるなって」

「フェルの知り合いなの? へ~そうなんだ」



 そう言うと俺の頭からつま先までジロジロと見てくる。

 正直居心地が悪い。



「あの~」

「あぁごめんなさい。ついね。もしかしてここもあの子の紹介だったりする?」

「あ、はい、そうなんですよ。何でもこの街一番の宿だって言ってましたよ」

 「あら、嬉しいこと。あたしはフェルの従姉妹のミィルって言うの、よろしくね」

 「本郷悠紀(ほんごうゆうき)です。ユーキと呼んで下さい」



 女性は嬉しそうに笑った。

 その顔はやはりフェルト似ていた。



「さてと、それじゃあ何泊にする? ウチは期間を決めて貰って前払いなんだけど」

「う~ん。実はこの街にどのくらいいるか決めて無くて」

「そうなの。じゃあとりあえず一ヶ月にしておく? もし一ヶ月未満で宿を出るなら、料金の差額分は後で返せるわよ」

「そうなんですか。じゃあそれでお願いします」

「は~い」



 店員さんの言うがままに流される俺はやっぱり日本人だな~。

 そんなことを考えつつ名前やらお金を払って鍵を受け取る。

 お金は神様から貰った荷物の中に結構入っていたので問題無い。



 ちなみにお金については事前にフェルに聞いておいた。

 日本円に換算するとこんな風だった。



 ◇◇◇◇◇


 小銅貨1枚=百円

 大銅貨1枚=五百円

 小銀貨1枚=千円

 大銀貨1枚=一万円

 小金貨1枚=十万円

 大金貨1枚=百万円

 白金貨1枚=一千万円


 ◇◇◇◇◇



 この宿の一ヶ月の宿泊料金は大銀貨7枚だった。

 ホテルとかに泊まったことがない俺には高いか安いか分からないが、個室で食事付きだとかなり良いんじゃないかと思う。

 


「はい、これが部屋の鍵ね」

「ありがとうございます」

「夕食はどうする?」

「う~ん、食べたくなったら食堂に行けば良いんですよね?」

「うんそうよ。ただ夜中はやってないから注意してね」

「わかりました」



 俺は貰った鍵に書かれた『406』という数字と同じ部屋に入り、そこにあってベットへと倒れ込む。



「(はー、疲れたな。もうこのまま寝ちゃうか)」



 お腹も少し空いているが、今は食欲よりも睡眠欲のほうが強かったので、そのまま眠気に身を任せることにした。 



「(明日はいったいどんなことがあるんだろうな)」



 少しの不安と沢山の楽しみを感じながら俺は眠りに就く。




「(・・・そういえば文字、読めたな)」




 神様が間違えていなくてよかった。




 

最後までお読み下さってありがとうございます。


評価、お気に入り登録していただけると嬉しいです!

数が増えると作者のやる気が漲ります!


※一部修正しました8/31

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ