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帝都ダロス探索 【2】

 

 

 

 先程のロングソードの冒険者を落とし穴に落とし、イリーナの手によって眠らせた後。

 時には屋根の上を忍者のように駆け飛び回り、時には冒険者や兵士と戦った。



「・・・どうだった、イリーナ?」

「はい、やはり上空からも探知は出来ませんでした」

「ダメかぁ」



 俺は今影の中(・・・)に潜んでいた。

 これは以前試した闇魔法で人型の真っ黒々助(まっくろくろすけ)(仮名:黒助)を応用している。



 今いる場所は建物と建物が交差しているL字部分の角で、丁度日陰になっていた場所だ。

 そこの影から闇魔法で黒助を作り出し、俺がすっぽり隠れるように身に纏ってジッとしている。

 もともとそこにあった影なので違和感なく溶け込み、迷彩服やギリースーツのようにカモフラージュになっていた。



 俺がそのように待機しているうちに、元々姿を透明にすることが出来るイリーナに街の上空まで飛んでもらって、街の様子を観察してもらっている。



「城壁は? 街から出ることは出来そうか」

「それが、出来そうにありませんでした。どうやらあの城壁は妖精族の魔法に加えて、転移魔法も追加されているようです」

「どういうこと?」

「一度街の外へ出ようとしたのですが、城壁の真上に差し掛かった途端、外に向かっていたはずが街の方へ向かってました」



 つまり城壁の上まで来ると転移魔法が発動して、強制的にUターンさせられるのか。



「また城壁に触れただけでも離れた場所に転移させられました。城門は全て閉ざされているので外へ突破は不可能かと」

「ちょっ、あんまり危ない事しないでくれよ。何もなかったから良かったけど」



 未知数の物にそんなにホイホイ触らないでくれよ。



「申し訳ありません。主の役に立ちたかったのです」



 真剣な眼差しの中に若干不安そうな色が見える。

 ・・・・・・そんな目で俺を見ないでくれっ。



「わかったよ・・・でも細心の注意はしてくれよ」

「はい。もちろんです」

「んんっ! ・・・じゃあ直接触れないで攻撃したら? 魔法で火炎弾飛ばすとか」



 照れくさかったので咳払いして話を戻す。



「おそらくその場合は火炎弾が転移させられると思います。最悪自分自身に返ってくるかもしれません」

「うわぁ、想像したくない」



 ついでに言うと、俺達の転移魔法はキャンセルされている。

 試しにソプレゼの街の宿屋三日月をイメージして発動しようとしたがウンともスンとも言わなかった。

 これでこの街から脱出することは出来なくなった。



「じゃあ今のところ脱出手段はないわけか」

「そうとも限りません」

「え?」

「あの仮面の者が使っていた魔呪具です」

「あぁなるほどね」



 そういえばここへはあいつに転移系の魔呪具を使われて強制的に連れてこられたんだった。



「でもそれってあいつを捜し出して奪わないといけないよな。それってもうその場で倒せばいいってことになるよね」



 目的が手段に変わるというか、二度手間というか。

 そんなことをするくらいなら探し出した時点で仮面の人を倒せばいいな。

 本来それが目的だったんだし。



「でもドコにいるのか見当もつかないしな・・・これはもう虱潰しに探すしかないか」

「主、まだお伝えしたいことがあります」



 腕を組んで考えているとイリーナがそう言った。

 なので俺はイリーナの方を向く―――といってもイリーナは透明になっているから声しか聞こえないけど。



「操られている住民達なのですが、あちらの方へ進むにつれて数が減っていました」



 片手だけ見えるようにして俺から見て右手の方角を指さすイリーナ。

 すぐに手はまた透明になった。

 ・・・・・・今の光景はちょっとしたホラーだな。



「ですが住民が減るのに反して冒険者や兵士などの数が増えているようでした。探知は出来ないので遠見で視た限りですが」

「そうなのか・・・」



 今のイリーナの話を聞いて思い浮かんだことがある。

 


「いかがなさいましたか?」

「多分その冒険者とか兵士が多い方に行けばいいと思う。仮面の人ももしかしたらそっちの方にいるのかも」



 俺が思いついたのはゲームなどでよく見かけるパターンだ。

 最初は弱い敵で、ゲームが進むにつれて強い敵になっていくという王道的なアレだ。

 今回で言うと弱いのは住民で、強いのは冒険者や兵士だ。

 そして、強い敵の先にはボス、つまり仮面の人がいる―――はず、かも。



「私も同意見です。何かを守っているようにも見えましたので」

「じゃあ決まりだな。極力住民との接触は避けて、どんどん強そうな奴がいる方へ行ってみよう」

「主の意のままに」



 歩き出そうとしたところでふと足を止める。

 イリーナは『何かありましたか?』と小さく囁く。



「イリーナはそのまま透明な姿で行こうか。その方が見つかりにくいだろう」

「そうですね。敵方が探知を使えれば別ですが、住民達の目くらいは誤魔化せるでしょう」

「あぁ、じゃあ行くか」



 先程イリーナが示した方角へと足を進める―――が、途端に俺達を探してウロウロしていた住民が、こちらへと向かって走り出してきた。 



「な、何でばれたんだっ?」

「主、影を纏ったままです」

「あ」



 そういえば今の俺は黒助になってたんだ。

 日陰なら目立たなかったが、日当でこの真っ黒な姿は目立ちすぎだった。





お読み頂きありがとうございました^^


主人公の今後の行動を決める回でした。

余談ですが、黒助を纏っていても防御力は上がりません。

例えば手を突っ込むと何の抵抗も感触もなく、貫通して主人公に触れることが出来ます。


【次回】強敵現る

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