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帝都ダロス探索

 

 

 

「主、後ろから来ますっ」

「わかった!」



 今俺は帝都ダロスの裏道を駆けている。

 その背後には目から光が消えた元住民たちが群がっていた。



「くそっ、あんなの反則だろ!」



 最初は仮面の人の催眠か何かで操られている彼らには思考能力が無いように見えた。

 実際屋根の上に待避したらその軒下に集まってくるだけで、誰一人として屋根の上に登ってくることはなかったのだから――――――だがそうは問屋が卸さなかった。



 暫くしたらなんと彼らは家の中に入ってきて階段を登り、窓やら屋根裏から屋根の上に登ってきたのだ。

 これには油断していた俺は驚いた。



「前からも来ました」

「今度はどんなヤツだっ」



 イリーナが警告してきた前方には一振りのロングソードを構えた冒険者が陣取っていた。

 そして例に違わず、その冒険者の目からも光は失われている。

 つまり仮面に操られているのだ。



「たく、住民は数が多くて厄介だけど、冒険者は意外と強いってのも面倒だなっ」

「おそらくあの仮面の者が操っているからかと。通常時よりも能力が底上げされているようです」

「やっぱりそうか」



 住民達一般人はそれ程脅威ではない。

 それでも走れば陸上で好タイムが残せそうな瞬発力と持久力を持ち、力は林檎くらいなら握りつぶせるだろう。

 仮面が操っているため実力以上の力を発揮していた。



 更に悪いことに、この街には冒険者やら兵士が大勢いたのだ。

 彼らはもともと一般人より強いため、今の状態だとそれにプラスした強さを持っていた。



「イリーナ、前の奴は一人だけか」

「見える範囲ではそうです・・・・・・申し訳ありません。探知が出来なくて」

「あんにゃろうが何か小細工したんだろう。気にする必要ないよ」



 そんな会話をしているうちに前方の冒険者との距離が縮まる。

 


「っ!」

「来るかッ!」



 操られている冒険者は地面を文字通り蹴りつけ、俺目掛けて突進の如く距離を縮めてきた。

 蹴りつけられた石畳は地面が剥き出しになる。



「っ・・・」

「だが、遅いぜ!」



 普通の奴相手ならこの冒険者もかなり手強い相手となるだろう。

 しかし、いろいろとチートな俺には通用しない!



「っ!? !?」



 操られているにも関わらず、冒険者が慌てている様子が窺えた。

 驚くのも無理はないだろう。

 俺は最小の動きで振り上げられ次いで振り下ろされたロングソードを右手の人差し指と中指の間で挟み受け止めたのだ。

 詰まるところ『白刃取り』だ。



「隙有りだっ、くらえ!」



 俺は挟んだ指から魔法で電気を流し込む。

 相手は小手などしていなく素手で柄握っているので、きっと電流が通るはずだ―――だが、



「ちっ、仕留めきれなかったか」



 何かを察知したのか相手は寸前でロングソードから手を離し、後ろにバク転しつつ俺の顎を蹴り上げようとしてきた。



「うおっと、サーカスかよ」



 ここまで大体四、五秒の攻防だ。

 早くケリを付けないと後ろから追っ手が追いついてしまう。



「主、もう不殺は限界ではないかと思います」

「でもこの人達は操られているだけだぞ。俺には出来ないよ」



 確かに遠慮なく魔法を放ったり刀を振るえば楽に片を付けられる自信はある。

 伊達にイリーナを召喚したり、ドアートさんと剣の鍛錬をしてきたわけでない。

 でもどうしても俺には出来なかった。

 悪人なら遠慮なく殺れるのに。



 これが俺みたいな神様にもらったチートではなく、努力や才能で達人まで上り詰めた人なら上手い具合に手加減することが出来るのだろうな。

『初心者は上級者と訓練した方がいい。上級者は手加減が出来るから。下手に実力が近いと危険度が増す』と何かの本だったか、テレビで見聞きした覚えがある。

 


「主、ここはいったん退きましょう。もう一度屋根の上へ」

「・・・あぁ、わかった」

「っ!」



 俺とイリーナの会話を聞いてか、冒険者は徒手空拳・・・ではなく、予備だろうか?短剣を腰溜めに構えて迫ってきた。



「―――!?」

「よしっ! かかったっ!」



 だがその短剣は俺に届くことはなく、冒険者もろとも地面に出来た穴に落ちていった。

 俺は考える振りをし、イリーナと話をしながら土魔法で落とし穴を作っていたのだ。

 きちんと舗装し並べられていた石畳だったので、地の土を掘っても石材が蓋のように残ってくれたため上手く行った。



「よし、イリーナあいつを眠らせてやってくれ」

「わかりました」



 イリーナは穴の上までスーッっと飛んで移動し、中でもがいている冒険者に魔法を掛けて眠らせる。

 冒険者はイリーナが何かしようとしているのを見て穴から脱出しようとしているようだが、それは無理な相談だよ。

 穴の底や壁には水魔法を含んだ粘土質な土が使われているからね。

 底なし沼とまでは言わないが十分体の自由は奪える。



「―――終わりました、主」

「ありがとう」



 イリーナのこの睡眠魔法(仮名)は便利だが発動の条件もあるのでなかなか使うタイミングがない。

 条件は相手が動き回らないことと、常に術者の視界に入っていることだ。



「よし、じゃあさっさと逃げるぞ。いったんどこか落ち着ける場所を探して状況を整理しよう」

「はい」



 すぐそこまで迫っていた住民達を尻目に、俺は身体強化の魔法を使ってジャンプし建物の屋根に飛び移る。

 イリーナは透明な羽を優雅に羽ばたかせてそれに続く。



 追っ手の数は減るどころか増えていて、やっかいな冒険者や兵士も至る所に配置されているのが見える。



 強制的に転移させられた他の四人の安否も気がかりだが、とにかく今は逃げるほかないだろう。





お読み頂きありがとうございます。


しばらくは主人公達が帝都ダロスをウロウロ(探索)する話になります。

白羽捕りの元ネタは剣客浪漫譚のあの少年です(笑い)

最終話のあのシーンが妙に印象に残ってます。


【次回】ゲームではそうなってるんだよ


※誤字訂正11/28

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