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幕間劇 ~強制転移させられた四人はその頃~

マギー視点です。

次回からは主人公視点に戻ります。

 

 

 

「きゃっ」



 私はいきなりの転移に体勢を整えられず、転移後バランスを崩して前方に転びそうになってしまった。

 二、三歩よろめきつつも何とか持ちこたえて転ばずに済んだ。



「うわっ」

「っと」

「わ~」



 周りから三つ違う声が聞こえた。

 それはトマス、シェスカ、フィーネの声だとすぐにわかる。



「はぁ・・・みんな無事か」



 トマスが自身の体をペタペタ触ったり、所持品を確認しつつ全員の安否を確認する。



「えぇ、大丈夫よ」

「問題ありません」

「大丈夫~」



 私、シェスカ、フィーネがそれに答える。



「ん? あの二人はどうし、ぶふぅっ!」

「わっ、きったな~い!」



 トマスが何かを言いかけ突然吹き出した。

 その時運悪くトマスの正面にいたフィーネに唾が飛んだようで、フィーネは着ていたボロボロのローブで一所懸命に顔を拭っていた。



「どうしたのいきなり?」

「何でも良いから前を隠して下さいっ!」

「前?」



 顔を背け左手で自分の目元を隠し、右手をワタワタさせるトマス。

 言われた私は自分の体を見下ろし・・・・・・あぁ、なるほど。



「マギー! はしたないですよっ、そんなに肌を見せて!」

「そう? これくらい普通よ」



 腰に手を当てて胸を張った。

 今まではローブを上から着ていたので見えていなかったが、私が今着ているのはグインタビューでユーキさんに見せたあの服からさらに進化した服だ。

 進化と言っても単に『肌の露出が増えた』だけだが。



 ユーキさんが『キモノ』と言っていた民族衣装、私が着ているのはそれなのだが民族衣装ゆえに市場に出回っている数が少なく、ゆえにサイズが丁度良いのが見つからなかった。

 でもユーキさんが好きそうだったのでサイズが小さくても着ている。



「おぉ~、凄いね~。零れちゃいそうだよ~」

「あん、もうダメよ、いきなり触っちゃ」

「フィ、フィーネ!」



 フィーネが零れそうと言うのも頷ける。

 サイズが小さいため私の胸元は大きく開いている。

 それこそ、胸の先に引っかかって何とか隠しているように見えるだろう。

 足だって片足が太ももの付け根付近まで覗いている。

 ちょっと腰回りとお尻部分を回すには布地が足りていないので仕方がない。



「い、今までそんな格好をしていたんですか? ずっと」

「そうよ。慣れれば動きやすくて快適よ」

「そんな格好で動いたらダメでしょ!」

「平気よ。魔法で固着させてるから」



 確かにあと少しでずり落ち、見えてはいけない部分が見えてしまいそうだが、私だってその辺りは気を遣っているのだ。

 ユーキさん以外に見せるつもりはない。



「もういいからっ、はやくローブを羽織って!」

「はぁい」



 シェスカの長い耳の先端まで真っ赤に染まっている。

 本当に、この子はからかいがいがあるわね。






「―――もういいですか」

「あら、ごめんなさい。あなたのこと忘れてたわ」



 トマスさんは律儀にも私に背を向け、両手で顔を覆ってしゃがみこんでいた。

 そこまでしなくてもいいと思うのだけれども。



「もう良いわ。ちゃんとローブを羽織ったから」

「・・・・・・ふぅ。いやぁ、驚きました」



 トマスは恐る恐るといった感じに指の隙間からこちらを見て、私がちゃんと肌を隠しているのを確認すると苦笑いした。



「んっんん! さて、私たちはどうやら無事のようだが、あの二人はどうしたのだろう?」



 咳払いをして気持ちを切り替え話し合いを始める。



「ここに居ないとなると、二人は我々と違うところに転移させられたのは間違いないでしょう」

「ふんふん、ふんふん」

「転移先を誤った可能性は?」

「くんくん、くんくん」

「・・・ないと思うわ。転移用の魔呪具・・・っていっても初めて見聞きしたけれど。・・・わざわざあんな物を使っているのに間違いは起きないと思うわ」

「ん~、んん? ん~」

「では意図して分断したという訳か」

「仮面は何を考えて」


 

 トマスとシェスカは真面目に話し合いを続けている。

 だが、私はさっきから気になることがあり集中出来ない。



「・・・ねぇ、フィーネ」

「ふんふん、くんく、ん? な~に~?」

「あなたさっきから何をしているの?」



 そうなのだ。

 さっきからフィーネはあちこちの匂いを嗅いだりしてバタバタ走り回っていたのだ。

 会話にも参加しないし、それでもトマス達は注意しないからどうしたものかと悩んでいた。



「現在位置を調べているんですよ、マギーさん。緊急時、自分たちの居場所がわからない時はこうするように決めてあったんです」

「フィーネは私と仮面の情報を求めて大陸中を廻る過程で、その土地の臭いを覚えているの。だからこうして匂いを嗅いで、来た時のある場所かどうか調べているのよ」



 トマスは魔力探知が使えないし、シェスカはまだ近い範囲しか探知出来ない。

 私はシェスカよりは出来るけど広域探知は得意ではないのでフィーネのこの特技?はありがたかった。



 その後もフィーネは森の中を行ったり来たりしてしきりに匂いを嗅いでいた。

 だが、ふと立ち止まると不思議そうな顔をした。



「ん~? あれ~?」

「どうしたんだフィーネ」

「まさか、あなたの知らない臭いの場所だったの?」



 そうなったら大変だ。

 転移魔具は生憎誰も持ち合わせていない。

 いきなりの仮面の襲撃だったので、潰されたアジトの中に置きっぱなしにしてしまっていた。

 こんな事ならさっさと補充しておくべきだったわ。



「違うよ~。ここってソプレゼの近くなんだ~」

「なにっ!?」

「本当なの?」

「うん、こっち~」



 フィーネが手招きしつつ木々の間を駆け抜ける。

 私たちはそれに続く。



「―――ほら~。あれソプレゼだよね~?」

「本当だ。間違いなくソプレゼだ」



 何故か私たちはソプレゼの街にある意味送り返されてきていた。

 仮面はいったい何を考えているのかしら?

 まったくわからないわ。



「だが、好都合だ。一度ホーネット伯爵に報告に行こう」



 誰もトマスのその提案に反対する者はいなかった。

 私たちはソプレゼに向かって歩を進めたのだった。





お読み頂きありがとうございます。


いったんマギー達四人の出番は終わり。

また登場しますので今後一切出番なしという訳ではありません。


【次回】帝都ダロス攻防戦 主人公VS○○○!


※誤字修正11/26

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