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仮面の人

 

 

 

 俺達の目の前にはあの仮面の人が立っていた。

 目の前に探し求めていた敵本人がいることに驚いたが、同時にこれは何かの罠なのではないかと疑いも持つ。



「一、二三、・・・全部で六人ですか。あいつらは意外と良い仕事をしたようですね。もっと残っているかと思いました」



 相変わらず性別の分らない声で仮面の人が話す。

 その声は驚いた様子だった。



「やはり。そうだとは思っていたが、貴様が襲撃犯を率いていたんだな」



 トマスさんが今までに聞いたことのない棘のある声で仮面の人に話しかける。

 その顔を見てみると、眉間に皺が寄りあの穏やかそうな顔の面影はなくなっていた。



「そうですよ。なにやらこそこそと嗅ぎ回っている(やから)がいたので。ちょうど一カ所に集まるようだったので掃除しました」

「掃除、だと」

「言い方が気にくわなかったですかね?」



 トマスさんは今にも斬り掛かりそうだった。

 実際右手は腰に差してある剣に手が掛かっている。

 それに彼だけでなく、シェスカとフィーネも剣に手をかけ仮面の人を睨み付けていた。



「あれは、やっぱり」

「・・・・・・」



 そんな中、マギーとイリーナは観察するかのように仮面の人を見ていた。



「ん? っ!?」

「・・・・・・」



 そんな中、仮面の人がマギーとイリーナの方を見て動きを止めた。

 傍から見て分るくらい方がビクッと動いたのが見て取れる。



「あなたは」

「何か?」

「まさか、そんなわけ」



 仮面の人の問いにイリーナが答える。

 すると仮面の人はヨロヨロとイリーナに向かって歩いてきた。



「やらせはしないっ」



 それを見てトマスさんが動いた。

 どうやら仮面の人のその行動が攻撃の予備動作に見えたらしく、剣を抜き放ち頭上に振りかぶる。



「邪魔するな」

「っ!? な、何だ!?」

「トマスさん!」



 仮面の人が大声を上げ、手の平を向けるように片手をトマスさんに向けると、トマスさんの体が浮き上がった。



「やああっ!」

「え~い!」



 続いてシェスカとフィーネが斬り掛かる。

 フィーネは例の身長に似合わないくらい長い長剣に炎を纏わせ横から薙ぎ払うように。

 シェスカは突きを放つ。

 ただそれだけではなく、身体強化の魔法によって筋力を上げて、まるで砲弾のようにカッ飛んでいく。



「・・・静かにして貰えますか」



 二人がトマスさんに続いて攻撃に出るまで、恐らく三~四秒くらいだっただろう。

 普通の人ならまず反応出来ない攻撃を、こんな短い時間で繰り出されたのにも関わらず、仮面の人はそこに未だ立っていた。



「くっ、これは」

「う~」



 二人が仮面の人まで後一歩という所まで近づくと、剣が見えない壁にぶつかったかのようにそれ以上先に進まなくなった。

 フィーネはお構いなしに斬り掛かり壁を突破しようとするが、ギィンッと音がして纏っていた炎が火の粉を散らすばかりで突破出来ない。

 シェスカは連続で突きを放つ。

 その突き全てが同じ一点をついているがやはり壁を貫くことはなかった。

 


「二人とも離れなさい!」



 マギーがそういうとシェスカとフィーネは後ろへと大きく飛び退いた。



「くらいなさい!」



 今度はマギーが魔法で攻撃する。

 地面が波打ち、ごつごつした岩が飛び出してきた。

 波打った地面はシェスカとフィーネの攻撃が阻まれたように、見えない壁のような物によって止められてしまう。

 だがしかし、地面から飛び出す岩はその壁の向こうに出現した。



「おっと。危ないですね」

「うわっ」



 それを見て仮面の人は最初に立っていた場所までスーっと平行に移動した。

 地面を蹴る付けるような動作も何もなく移動したので、恐らく何かの魔法を使ったのだろう。

 だがその際にトマスさんに向けていた手を下ろしたためか、浮き上がってたトマスさんはつり上げていた糸が切られたかのように落ちてきた。



「大丈夫でしたか」

「あぁ、問題無い」



 すかさずシェスカがトマスさんの傍らへ赴く。

 どうやらただ浮かべ上げられていただけで、体に異常はないようだ。



「すごいな~。あいつ慌ててたよ~」

「うふふ、ありがとう」

「なんでマギーの魔法は向こうに届いたの~?」

「確信はなかったけど、地面とか下方向にまで対応している結界ってなかなかないのよ。だからもしかしたらと思って」

「そっか~」



 フィーネはマギーを護衛するように立ち、剣を構えていた。

 だがマギーに頭を撫でられて笑っていて、どうにも締まらない。



「私たちも打って出ますか」

「いや・・・」



 イリーナにそう言われたが、俺はさっきの仮面の人の様子が気になっていた。

 まるで信じられない物を見たかのような反応をして、無意識に近づいてきたように見えたからだ。



「・・・・・・」



 そしてまた一定の距離を取ってイリーナのことを見ている。

 イリーナもその視線に気付いてか、仮面の人を見ていた。



「あなたは」



 仮面の人が言う。



「あなたは妖精族ですか」

「はい」

「そうですか・・・ではそちらのあなた」

「俺か?」



 次に仮面の人は俺に話しかけてきた。

 その間他の四人が攻撃を仕掛けることはなかった。

 ドアートさんとリンディ相手に剣を鍛えていたから今はわかる。

 一見すると隙だらけのようだが、仮面の人に斬り掛かっても仕留められるとは思えないのだ。



「そうです、あなたは・・・・・・おや? あなたとは以前会ったことが」

「気付いてなかったのか。グインタビューで戦っただろ」

「・・・あぁ、思い出しました」



 首を傾げていたが思い出しガバッと頭を上げた。



「あなたとはもう二度と会いたくなかったのですがね」

「そういえばそう言っていたな」

「まったく。この世はどこまで意地悪なのでしょう」



 肩をすくめる仮面の人。

 そして改めて俺に問いかけてくる。



「妖精族を従えているという事は、あなたは全属性持ちで間違いないですか」

「・・・・・・」

「沈黙は肯定と受け取っておきます」



 答えて良い物か考えていたが、仮面の人は一応確認したかっただけのようで、俺が全属性持ちだと確信した。



「そうですか。ついに現れましたか」



 仮面の人はそう小さく呟くと懐に手を入れる。

 そして懐から宝石のような物を三つ取り出した。



「貴様! それは魔呪具」

「!?」


 トマスさんがそう言いマギーが何かしようと動き出すが既に遅く、仮面の人は魔呪具を発動した。



「安心して下さい。これはそんなに危険な物ではありませんから」

「何を言ってい―――」



 光っていた魔呪具が唐突に割れ、俺達の足下に魔方陣が現れた。



「これは結界内にも転移出来るようになる魔呪具です。あなた達をあの城壁内に招待しますよ」



 魔方陣は三つ。

 俺とイリーナ、マギーとフィーネ、トマスとシェスカの下に現れ、そして俺達は抵抗する間もなく強制転移させられた。



「ようやく。ようやく時が来ましたよ、主様」



 空を見上げてそう言うと仮面の人は森の奥へと歩いて行った。





お読み頂きありがとうございます。


【次回】ダンジョン?帝都ダロス

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