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予想外の再会

文中の『==========』で挟まれている文章は違う人物の視点になっています。

 

 

 

「―――じゃあ敵は同盟の仲間の姿をしているのか」

「そう~。だから油断して不意打ちされちゃったんだ~」



 イリーナに回復魔法をかけてもらい、体の傷を癒したフィーネが俺達の先頭を走る。

 獣人の高い身体能力で物凄いスピードだったが、俺とイリーナは身体強化の魔法を使わなくてもついて行けた。

 トマスさんは強化していたが。



 走りながらも状況の説明を聞いていた。

 アジトが突然敵の襲撃を食らい散り散りになり、予定されていた合流地点で再集結する。

 今はその合流地点を目指しているところだ。



「合流地点にも敵はいると考えた方がいいでしょう。お二人とも、すみませんが力を貸して下さい」

「もちろんですよ、トマスさん。その為に来たんですから」

「私は主に従うだけです」

「ありがとうございます」

「二人とも~、ありがと~」



 トマスさんとフィーネの二人は走りながら頭を下げるという器用な真似をして感謝を表す。



「おいフィーネ! 前っ」

「ん? ふぎゃん!?」



 ・・・が、よそ見していたフィーネが木の枝に突っ込んで吹っ飛ばされるように後ろに倒れた。

 やっぱりちゃんと前を見て走らないとな。



 ==========



 いきなりの敵襲でシェスカ達と離れ離れになっちゃったわ・・・。

 合流地点に向かわないと。

 確かあっちだったわね―――?



『あれは、味方? ・・・いえ、違うわ。あいつは』



 どうやら合流地点に行く前にやることが出来たようね。



『その姿はあなたの物じゃないわ。消えなさい』



 ==========



 時間にして十分経たないくらいだろうか。

 未だ味方に成りすましているという敵には遭遇していない。

 遭遇する前に目的地に着いてしまった。



「本当にここか? 誰もいないぞ」

「主、これをご覧下さい。何者かが争ったような形跡があります」



 イリーナが指さしたのは地面。

 よく見てみると地面にはみ出た木の根に付着していた苔が不自然に削り取られていた。

 他にも観察してみると、真新しい折れ口の木の枝、若葉が散った草花が見て取れる。

 どうやらここに誰かいたのは確かなようだ。



「ん~? この音は~、あっちだ~!」



 フィーネが獣耳をピクピクさせると、森の一方を指さす。



「何か聞こえたのか」

「うん~。これは剣がぶつかり合う音だと思う~」

「よし、ではそこへ向かおう。お二人ともっまた走りますよ!」



 今度はフィーネとトマスさんが並んで前を走り、折れとイリーナが後ろで並んで走った。

 フィーネは獣耳で音を探りながら先導し、トマスさんは剣を抜いて周囲を警戒しながら駆けている。

 そして、ほどなくして音の発信源にたどり着いた。



「あれは、シェスカ!」

「お~! シェスカだ~!」



 そこには俺の知るエルフの女性、シェスカがいた。

 シェスカはフィーネと出会った時に一緒に居たエルフの女性だ。

 あの時は盗賊をレイピアで圧倒していたが、今はちょっとピンチだった。



「三人に囲まれてるっ、助けなくては!」

「シェスカ~!」



 二人は武器を構えて突撃するがまだ少し距離が遠い。

 ―――ならばっ。



「イリーナ、魔法を使うぞ」

「はい」

「サポートは任せた」

「お任せ下さい」



 敵は三人で、人族の剣士のようだ。

 きっと例の擬態する敵だろう。

 俺は接近する時間も惜しく魔法で遠距離攻撃を仕掛ける。



「(火か? いや、山火事になるかもしれない。じゃあいつもみたいに雷で。でもあんなに密着してたらシェスカにも・・・)」



 瞬時に頭で使う属性を決め、今回は土属性の魔法を発動する。

 イメージするのは(つぶて)の弾丸。

 クレヨンの頭みたいな尖った形をしていて、長さは手の小指くらい、早い話がまんま銃弾だ。

 それを敵の人数分、都合三つ作り出す。



 イリーナは俺の発動する魔法のサポートをしてくれる。

 魔力を無駄に込めすぎないようにし、燃費を良くしてくれ、魔法発動までのタイムラグをほぼゼロにして、さらにトドメとばかりに魔法の威力を上げてくれる。



 ◇◇◇◇◇


『魔法のタイムラグ』

 発動をイメージしてから、実際に発言するまでの誤差。

 どんな魔法にも少なからずあり、この時間が少ないのは凄腕の魔術師である証拠にもなる。


 例えば今回の礫なら通常はまず、『土魔法をイメージ』→『礫を周囲からかき集める』→『空中に停滞させる』→『イメージした形に整える』→『射出する』という行程があり数秒から十数秒かかる。

 これをイリーナのサポートにより主人公は一秒未満で行える。

 

 ◇◇◇◇◇



「よし、行けっ!」



 俺が力むと礫の弾丸が敵目掛けて銃弾のように飛んでいく。

 それは誰にも何の邪魔をされることなく、敵三人の眉間、こめかみ、鼻っ面に吸い込まれていった。



「よし命中だ!」

「おみごとです」



 一応人の姿をしていたので急所を狙ってみたのだが、これが正解だったのか敵は全員力なく崩れ落ちた。



「誰!? って、フィーネ! それにトマスさん!」

「ケガはなかったか」

「シェスカ~・・・あ、ケガしてる~」

「ちょっと油断しちゃって・・・それにまだ敵はいるはずよ。今倒したこいつらも、時間が経てば再生するから気をつけて」



 俺とイリーナもシェスカの元へ行く。

 彼女の左腕は切りつけられたのか、袖が真っ赤に染まっていた。

 それに力なくダランとしている。



「見せて下さい。治療致します」

「あなたはイリーナさんね? 事前に通達された通り、美人だわ」

「ありがとうございます。でも今は治療の方を先に」

「えぇ、申し訳ないけどお願いするわ」



 ==========



 やっと合流地点に着いたと思ったら誰もいなかった。

 私が一番乗りかとも思ったけれど・・・・・・どうやら違うようね。

 誰だか分からないけれども『こちらへ』と矢印の目印を残していた。



『これを辿れって事かしら』



 罠かもしれないけれど、行ってみるしかない。

 私は矢印の向いた方へと向かった。



『―――あら』



 暫く歩くと見た顔が集まっていた。

 シェスカにフィーネ、それに―――。



『どれ。お姉さんが手を貸そうかしら』



 ==========



 イリーナがシェスカの左腕に回復魔法を施している間、残った三人は武器を構える。



「ざっとみて十人、いや、十体ほどでしょうか」

「ん~、十二かな~? あいつら臭いがないから自信ない~」

「十五ですね。魔力で調べたので間違いないかと」



 順にトマス、フィーネ、俺だ。

 さっきの敵が地面で銀色の液体に変わって、プルプル震えながら敵がいるであろう林の方へと逃げようとしていたので、そいつの魔力を調べてみた。

 調べたついでにそいつと同じ魔力を探知してみたら、林の向こうに合計十五の反応があったのだ。

 あ、今さっきの三体が合流して十八になった。



「ではさっきの三体も合わせて十八ですか」

「はい。一人六体倒せば丁度良いですね」

「お~。頑張るよ~」



 しかし、倒すと言ってもどうしたものか。

 さっきの手応えから見て、強さは盗賊とかと同じくらいだと思う。

 だけどあの再生能力が厄介だ。

 倒しても倒しても切りがない。



「いったいどうすれば・・・」

『教えてあげるわ。こうするのよ、ユーキさん(・・・・・)



 背後で声がしたかと思うと、敵が一瞬にして火達磨になった。



『やつらは火に弱いの。他の魔法や物理攻撃でもダメージは与えられるけれど、とどめを刺すには火属性の魔法しか使えないわ』



 俺は懐かしい声がする方へと振り返った。

 そしてそこには、



『お久しぶりね、ユーキさん』



 ゴーストになったマギーが浮かんでいた。



「・・・・・・あれ!? なんでゴーストに戻ってるの!?」





お読み頂きありがとうございます。


マギーが再び登場しました!

だけどゴースト形態。


【次回】パートナー争奪戦!?

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