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現地同盟員

途中『~~~~~』から視点が切り替わります。

 

 

 

「おいっ、しっかりするんだ!」

「う~」



 うめき声を上げつつ気絶しているボロのローブを着た人物。

 トマスさんはその人の頬をペチペチと叩き、意識を覚まさせようとしている。

 


「トマスさん、この人は・・・あれ?」

如何(いかが)なさいましたか、主」



 トマスさんに近づいて彼の背中から覗き込むようにして倒れている人物を見てみた。

 そしてその顔には見覚えがある。



「確かソプレゼ近くで盗賊に襲われてた、―――そうだっ、フィーネ、フィーネって子だ!」



 倒れていたのは俺がグインタビューからソプレゼに向かう途中、複数の盗賊に囲まれていたエルフと獣人二人組みの少女。

 その獣人の方の女の子、フィーネだった。

 よく見てみればボロボロになっているがその緑のローブもあの時着ていた物だと思われる。



「ユーキさんフィーネのお知り合いだったんですか?」

「えぇまぁ。偶々知り合う機会があって」

「そうなんですか。彼女は会う予定だった同盟員の一人なんですよ」



 なんと。

 縁というか、不思議な繋がりがあったものだ。



「・・・」

「? イリーナ?」

「我が主」

「う、うん」



 イリーナの目が俺を捕らえる。

 だが、その瞳はただ俺を映しているだけだった。



「主は何かと女性との縁が多いですね」

「そ、う、かな? そ、そこまで多いとは、お、思わないな~」

「・・・・・・」



 ハイライトが消えた瞳が穴が空くほど俺を見つめてくる。

 俺の額には暑くもないのに汗が浮かんできた。



「んっ、うぅ」

「! 気が付いたかっ」

「ほ、ほらっ! あの子が目を覚ましたみたいだぞっ」



 これ幸いと俺はフィーネに駆け寄り、トマスさんの横に膝を付いた。



「う~、トマスさん~?」

「そうだ」

「本物のトマスさん~?」

「? そうだ、間違いなくトマスだ」



 まだ朦朧としているのか、フィーネはトマスさんに執拗に確認を取る。



「あれ~、そっちの人は~」

「覚えてないかもしれないけど、ソプレゼ近くで一度会ってるよ。君とシェスカが盗賊に囲まれてた時に」

「あ~、あの時の人か~」



 どうやら覚えていてくれたようだ。



「名前は~?」

「ん? ユーキだぞ」



 顔は覚えていても名前は覚えていなかったのか、俺の名前を聞いてきた。



「お~、合ってる合ってる。本物だ~」

「?」



 フィーネは笑みを浮かべて体を起こす。

 ローブと同じように体もボロボロになっているが、一人で立ち上がることが出来た。



「無理はするな。今アジトに」

「ダメだよ~。アジトはもうないから~」

「なんだって!?」

「それより~、一緒に来て~」



 フィーネはトマスさんの手を引いて歩き出そうとする。



「行くってどこへ? それにアジトがもうないって」

「移動しながら話すよ~、っ!」

「フィーネ!?」



 フィーネは一瞬顔をしかめて地面に膝を付いてしまった。

 やはりどこかケガをしているのだろう。



「イリーナ、回復魔法を」

「はい」



 俺はイリーナに回復魔法を使うよう指示を出す。

 何故か俺は回復魔法を使う事が出来ないからだ。



「・・・はぁ~。ありがと~」

「いえ、お礼なら主にどうぞ」

「あるじ~? あ~そっか~。来る予定だった全属性と妖精の人か~」



 納得といった風に手をぽんと叩くフィーネ。

 トマスさんは治療が終わるのを待って改めてフィーネに問いかけた。



「フィーネ、状況の報告を。アジトはどうなった? それに他の同盟員は?」

「アジトは攻撃されて~、みんなはバラバラになった~」

「なにっ!?」



 とんでもない事をのほほんとした口調で言わないでもらいたい。



「私はシェスカにトマスさん達を探して~、合流地点に連れてくるように言われたんだ~。だけど途中で襲われちゃって~」

「わかった、案内してくれ。―――お二人とも申し訳ありませんが付いてきて下さい」

「もちろんです。急ぎましょう」

「すみません。フィーネ移動しながらで良いから、詳しい話を聞かせてくれ」

「わかった~」



 俺達はフィーネの先導の元、合流地点を目指して移動を始めた。




 ~~~~~




「せあっ!」

「―――っ」

「これでっ」



 もう何人目、いや何体目か分からない敵を切り伏せる。

 それでも敵はぞろぞろとまだ沢山いた。



「もう、嫌になっちゃうわね」



 私はチラッと左腕を見た。

 そこには真っ赤に染まった服と、ダランと力なく垂れ下がった左腕が見て取れる。



「まさか味方に擬態(・・)して近づいて来るなんてね」



 今日到着する予定だったトマスさんと鍵たる二人。

 彼等の到着をアジトで待っていた時、突然敵の襲撃を受けアジトにいた同盟員は皆バラバラになった。

 だがこう言う場合を想定していくつか合流地点を設けてあった。

 散開する前にどの地点で合流するか決め、各々(おのおの)そこと目指した。



 私が到着した時まだそこには誰もいなかった。

 自分が一番乗りだと思い周囲を警戒しながら待っていると同盟員が現れ、そして突然斬り掛かってくるのだ。

 ―――そう、敵は味方の姿をしていたのだ。



 味方だと油断していた私はその一撃を完全には避けきれず、左腕をやられてしまった。

 いきなり何を、と言う間もなく襲いかかってきたので咄嗟に切り伏せてしまうが、地面に倒れた味方はまるで幻だったかのように溶け出し、銀色の液体になっていく。



「一体一体はそこまで強くないけど、この数は」

「・・・」

「・・・」

「・・・」



 目の前には三体。

 その奥にはまだまだ沢山味方に擬態した敵がいるのが見える。

 どうやら切り伏せた後、銀色の液体は再生しているようなのだ。

 時間が経つと倒したはずの敵が再び襲ってくる、その繰り返しを先程から続けていた。



「・・・フィーネは無事かしら。トマスさん達とは会えたかしら」



 思い浮かべるのは自分と行動を共にする獣人の女の子。

 彼女にはトマスさん達と合流して、案内するように言っていたがまだ現れていない。



「・・・」

「・・・」

「・・・っ!」



 目の前の三体が攻撃してくる。

 私は考えるのを中断し戦闘に集中し直した。





お読み頂きありがとうございます。


敵の『擬態する銀色の液体』の元ネタはアレです。

完全に倒すには溶鉱炉に沈めるしかないのでしょうか(笑)


【次回】戦闘と再開

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