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新たな地へ転移

【ソプレゼの街】は今回で終了です。


一度今章での登場人物をまとめた後に新章が始まります。

 

 

 

 マヤとの一件から一日経ち、今日は伯爵と約束した日だ。

 これからドアートさんの屋敷を訪れ、そこで同盟員の人とガルシュバに転移する予定となっている。



「それじゃあ、ありがとうございました」

「良いって事よ!」

「戻ってきたらまた顔を出しに来るんだよ」

「はい。必ず」



 俺は荷物の詰まったリュックを背負いロイさんと握手を交わす。

 その横ではイリーナがパーラさんに肩を叩かれていた。



『『『イリーナ様! お気を付けて!』』』



 ―――あとついでにイリーナファンクラブ(非公認)の男達が宿屋の夫婦の背後で涙を流していた。



『あぁぁ、イリーナさん』 『寂しくなるなぁ』 『お気を付けて!』 『しばらくあの見下すような視線を浴びることが出来ないなんてっ、くぅっ(泣)』 『イリーナさん! ずっと好きでした! 付き合ってくださあああっ!?(ゴスッ、バキッ、ドコッ)』



 一部暴走して周りのやつらに物理的に抑えられているのもいる。



「・・・・・・」

「マヤ」



 ロイさんとパーラさんの立つ間だからマヤが一歩進み出てきた。



「ゴメンな、連れて行かなくて」

「ん、もう、平気。我が儘、は、言わ、ない」

「偉いですよ、マヤ」



 イリーナがマヤの頭を撫でてあげる。

 マヤはされるがままで、気持ちよさそうに眼を細めた。



「帰ってきたらお土産をあげるからな」

「おみ、()げ?」

「お土産な。期待しててくれよ。凄いの持って帰ってくるからな」



 イリーナに次いで俺もマヤの頭を撫でた。

 しばらくこの心地良い手触りともおさらばなので念入りにだ。



「・・・ん。待って、る」



 まだちょっと痼りが残ってるかな。

 でもやることが増えたな。

 どんなお土産だとマヤは喜ぶだろう?

 ・・・・・・ちゃんと考えておかないと。



「じゃあそろそろ行きます」

「気をつけてな」



 俺達は宿屋を出て、ドアートさんの屋敷を目指し歩き出した。

 ロイさん、パーラさん、マヤはそれをずっと手を振って見送ってくれたのだった。






「―――あ、来ましたよ師匠」

「そうだな」



 ドアートさんの屋敷に近づくと、門のところでドアートさんとリンディが待っていてくれた。



「待たせてすみません」

「いや、勝手に待っていただけだ。気にする必要はない」

「そうですよユーキさん。師匠はジッとしていられなかっただけですか、あいたっ!」

「余計なことを言わなくていい」



 後頭部を軽く殴られたたらを踏むリンディ。

 いつ見ても仲の良い師弟だなと思う。



「準備は万全か? 何か足りなければ調達してくるが」

「問題ありません。主の荷物は私が何度も確認しました」

「そ、そう、か」

「あなたも確認しますか」

「いやっ、そちらで確認したなら問題無いだろう」



 やっぱりイリーナには及び腰なドアートさんだった。



「では二人ともこっちに来て下さい」



 リンディがドアートさんに代わって案内してくれた。

 そこはいつも使う修練場ではなく、屋敷の中、それも俗に言う『隠し部屋』だった。

 さすがおっきな屋敷だと思った。



「こんな部屋があるんですね」

「いろいろ便利なのだよ。こういう秘密の場所があるとね」



 いったいどういう時に便利なのか・・・・・・きっと同盟関係の事だろうと納得しておく。



「さて、あとはもう一人案内人が来るのでここで待機だ」



 部屋の中は書斎という感じの内装で、入口の扉以外の壁は全て背の高い本棚が占めていた。

 窓はなく、灯りはやはり光石で補っていた。

 俺はドアートさんとリンディが並んで椅子に腰掛けるのを見て、手近な椅子を引き寄せ腰掛けた。

 何となく本棚にあった一冊の本を手に取り読んでみたが、どうやら小説のようだ。



「イリーナ、座らないのか?」

「はい、大丈夫です。お気遣いありがとうございます」

「・・・まぁいいけど」



 俺の左斜め後ろに護衛のように立つイリーナ。

 もうこの手のやりとりは何度もして、イリーナが折れることがないと知っている俺はもう何も言わず好きにさせることにする。

 そのまま案内人の人が来るまで小説を読むことにした。






「お待たせして申し訳ありませんでした。今回お二人を案内しますトマスと言います。よろしく」

「よろしくお願いします」



 暫くして一人の男が部屋をノックし、ドアートさんが引き入れた。

 男の人は多分四十過ぎ位。

 特に特徴的な顔立ちもしていなくて、人の良さそうな雰囲気を纏っていた。



「トマスさんは王都で近衛兵をしていたんです。そしてある仮面の事件に巻き込まれて、近衛を辞め、同盟に参加することになったんです」

「へぇ、近衛兵って国王を守る兵士ですよね? 凄いですね」

「そうですよ。多分剣に関しては私よりも上だと思います」



 照れくさそうに『いやぁ』と頭をかくトマスさん。

 見た目に反してやり手のようだ。



「家族には未だに近衛兵をしていると嘘をついているただのおじさんですよ」

「そうなんで・・・あぁなるほど。同盟のことは言えませんよね」

「えぇ」



 苦笑いをするトマスさんに俺も苦笑いしているとドアートさんが声を掛けてきた。



「話はそれくらいで、そろそろ始めよう」

「分かりました。ではお二人は部屋の中央へ」

「はい」

「わかりました」



 トマスさんが手で促した場所にイリーナと立つ。

 そしてその場にトマスさんだけ残り、あとの二人は部屋の隅へと移動した。



「ではこれから転移魔具を使います。お二人とも私の体に触れていて貰えますか? そうしないと一緒に転移出来ませんので」



 そう言われて俺はトマスさんの肩に手を乗せた。

 イリーナも反対側の肩に手を乗せている。



「では転移します。転移直後は酔ったみたいに気分が悪くなることがあるので注意して下さい」

「トマス。頼んだぞ」

「お任せ下さい」



 トマスさんはポケットから小さな瓶を取り出し、床に落として割った。

 するとトマスさんを中心に以前見たことのある紫色の光が展開される。



 そして、俺、イリーナ、トマスさんの三人は部屋の中から消えたのだった。






 ◇◇◇◇◇



「行っちまったか。マヤ、戻るぞ」

「・・・」

「そっとしておいておやり。マヤ、先に戻ってるよ」

「・・・」



 時は少し遡り、ユーキ達が三日月を出た頃。

 マヤは一人宿の前に立っていた。

 そして、ユーキ達が歩いて行った方をずっと見ていたのだった。



「・・・」



 マヤは一応諦め納得したつもりだったが、やはりどうしても一緒に行きたかったと思ってしまう。

 そうした感情が今更ながらマヤの小さな体の中を満たしていた。



「・・・?」



 ふとマヤは顔を上げた。

 どこからか『三日月』という声が聞こえた気がしたからだ。



「―――あっ! ありましたよっ『三日月』」

「本当に!?」



 声のする方を見ると男女二人の姿があった。

 どうやら旅人のようで、真っ直ぐマヤの方へと歩いてくる。



「いらっ、しゃい、ませ」



 マヤは三日月の店員として二人をお迎えする。



「ど、どうも」

「こんにちは」



 一人は若い男で、革鎧と剣を腰に差していた。

 一人は若い女で、ピンクの髪をした綺麗な人だった。





お読み頂き誠にありがとうございます!


最後に三日月を訪れた二人はあの二人です^^

マヤとこの二人の出会いは後々・・・(あとは秘密で)


【次回】登場人物 ソプレゼ編

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