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旅支度 ~マヤ編~

シリアス回?


転職のゴタゴタで書く意欲が・・・><。

 

 

 

 イリーナとの散策を終えて三日月へと帰ってきた俺は、受付にいたロイさんから子供達に配達を頼んだ紙を受け取って自室へと戻った。

 丸めていた紙を広げ、大体コピー用紙のB5サイズくらいに裁断する。

 余った紙はもう一度丸めて取っておいた。



「さてと、まず何から書こう」



 俺はグインタビューに送る手紙を書き始めた。






『(コンコンコン)お兄、ちゃん』

「鍵は開いてるよ~」



 手紙も無事書き終わり、折りたたんで懐に仕舞い込む。

 後で行商人のところに依頼しに行かないと。



「(ガチャ)お邪魔、します」

「おう。もうお昼か?」



 帰ってきたのがお昼の少し前だったので多分そうだろうと見当を付けた。

 今日はどんな献立かと思い浮かべていたらお腹が鳴った。



「お昼、は、もう少し」

「あ、そうなのか」



 残念ながら違ったようだ。

 そしてもう一度なるお腹には、もう少し待てと言っておこう。 



「じゃあどうしたんだ? 何か用事があったのか?」

「ん。私今、休憩。それで・・・これ(・・)

「? あぁそうか。いいよ。それじゃあこっちにおいで」

「ん…」



 手招きしてマヤを椅子に座らせる。

 俺は部屋にあったもう一脚椅子を持ってきてマヤと横並びに座った。



「さて、じゃあ今日は何を作ろうか?」

「あれが、いい。ツル(・・)

「鶴か」

「・・・綺麗、に、作れない」



 マヤは手にしていた『折り鶴』を見せてきてしょんぼりする。

 俺はマヤが持参してきた紙を一枚手に取り、鶴を折り始めた。



「ほら、ここをこうして、こっちに折るんだ」

「(コクン)・・・・・・こう?」

「そうそう。それで―――」



 ~~~~~



「お~。綺麗に出来たじゃないか」

「・・・・・・」



 暫く折り紙を続けると、マヤも綺麗に鶴が折れるようになった。

 最初に見せてきた鶴と並べてみると、その差は歴然だった。



「・・・・・・」



 だと言うのにマヤは嬉しがったりもせず落ち込んだ様子を見せる。

 俺はなぜマヤがそうなっているのか見当もつかず、どうしたらいいのか分からない。

 


「マヤ? 元気ないけど、どうしたんだ」

「・・・・・」



 なので直接聞いてみることにした。

 そして、俺に出来ることで解決するなら何でもしてあげようと思う。



「・・・お兄、ちゃん」

「うん」



 俯き気味だった顔が上がり俺と視線が合う。

 続く言葉がなかなか出ないがじっと待つ。



「伯爵、様の、依頼」

「あぁ、明後日に行くやつな」

「私、も・・・連れて、行って」

「なに?」



 予想外のことを言われてしまった。

 念のためもう一度確認してみる。



「伯爵の依頼についていきたいのか?」

「ん」



 こくんと頷くマヤの目を見る限り嘘をついているようには見えなかった。



 しかし、どうしたものだろう。

 予定では明後日俺とイリーナの二人でドアートさんの屋敷に行き、そこで同盟の人と合流し、伯爵が用意してくれた転移用の魔具を使ってガルシュバ帝国に行くことになっている。

 もちろんこれについては他言無用と念を押されているため、三日月を引き払う旨をロイさんたちに伝えた時もごまかして伝えた。



「言っただろう。この依頼は俺とイリーナの二人だけで受けるんだ。他の人は介入出来ないんだよ」

「で、も」



 それでもなお食い下がるマヤにトドメとも言える事を言う。



「これは伯爵の依頼で条件も決まっているんだ。それを俺に破れっていうの?」

「・・・」



 こう言えばマヤも諦めてくれるだろう。

 なにせ諦めなければ貴族に刃向かうことになってしまうのだから。

 忘れがちだがマヤは奴隷なのだ。



「ごめんな。こんな言い方をして。でも俺にもこればっかりはどうすることも出来ないんだ。わかってくれないか?」



 それにこれはマヤのためでもあるのだ。

 仮面の人とまず間違いなく戦闘することになるだろうこの依頼。

 守秘義務も大事だが、それよりも危険な場所にマヤを連れて行くわけにはいかないんだ。



「―――わかっ、た」



 どのくらい沈黙が続いていただろう。

 数分?十数分?

 もしかしたら数十分だったかもしれない。

 マヤはか細い声で了承してくれた。



「ありがとう、マヤ。それとゴメンな」



 俺はマヤの頭を撫でた。

 いつもよりも優しく、丁寧に、時間を掛けて。



「じゃあ、もう、行く」



 マヤは余った紙を集めまとめると扉に向かった。



「なぁマヤ。なんで一緒に行きたいって言い出したんだ?」



 興味本位で聞いてみた。



「・・・・・・もう、お兄、ちゃん、と、別れた、く、ない」

「・・・」



 それだけ言い残しマヤは扉の向こうへと姿を消してしまった。



「そういえば、マヤは本当の兄妹(きょうだい)と離ればなれなんだっけ」



 俺はマヤにそれ程までに思われているのが嬉しいのと、同行を拒絶した事への罪悪感で体がむずむずして仕方なかった。



「はあぁ」



 溜息を吐きながらベッドへと倒れ込む。

 ちらっと机を見ると先程まで作っていた鶴が目に入った。



 ひとつは俺が作った大きな鶴。

 ひとつはマヤが作った小さな鶴。

 その二つはまるで兄妹みたいだった。




お読み頂きありがとうございます^^


【次回】転移! 行き先はガルシュバ帝国

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