対人戦終了、そしてギルドへ
その場で考えて書いた結果4000文字を越えました。
小ネタなのですが、サブタイトルは繋がっています。
異世界へ『転移』する→『転移』した先は『森』でした→『森』から『街』へ、という感じです
「いやーまいったまいった! 完敗だな! 坊主、お前強いな! がはははっ」
「あ、り、がと、う! ござ、い、ま、す!」
ニックさんは俺の背中をバンバン叩きながら大声で笑った。
ただ、叩く力が強すぎて喋り辛くてかなわない。
「おいニック爺。ユーキが困ってるだろ。そろそろ勘弁してやれ」
「そうですよ副団長、あいててっ」
そんな俺にオリオさんとトールが助け船を差し向けてくれた。
ただトールは俺が殴った場所が痛むのか、軽鎧の下に手を突っ込んで摩っている。
「お? そうか、悪かったな坊主」
「いえ、喋り辛かっただけで痛くはありませんでしたから」
ニックさんも二人から注意され俺の背中を叩くのをやめた。
だがあっちの世界にいた頃はこんな風に接する友人も居なかったので、気安い態度にちょっぴり嬉しかったし新鮮な気分だった。
「お疲れ様、ユーキ! 凄いじゃない! あの三人相手に本当に勝っちゃうなんて!」
「ありがとうフェル。だけど『本当に』って、信じてなかったのかよ」
四人で固まっているところに、フェルが濡れた手ぬぐいを持ってきてくれた。
俺はありがたくそれを受け取って顔を拭く。
「なんだよフェルの嬢ちゃん。俺等には何もなしか?」
「当たり前でしょ、ニック爺。今の私はユーキの味方なんだから」
「おいおいフェル。じゃあ俺等三人は敵かよ」
「ユーキを疑ってる間はね」
「そ、そんな~」
フェルの敵味方発言に、オリオさんは苦笑いし、ニックさんは『そうかそうか』とまた大声で笑う。
そしてトールだが・・・・・・フェルの言葉に落ち込んでいるようだった。
・・・ふむ、これはもしや?
「おいトール。ちょっと」
「へ?」
俺はトールに手招きして他の三人から離れた場所に移動した。
「な、なんですか?」
「お前、フェルのこと好きだろ」
「な、なななななっ」
「(おーおー、顔真っ赤にしちゃって)」
俺の突然の『フェルが好きだろ』発言にトールの顔はトマトのように真っ赤になった。
『ちょ、ちょっと! な、なに言ってるんですか!』
周りに聞こえないようにひそひそ声で言ってくる。
『図星か。いやーさっきのフェルの言葉を聞いた時のお前の落ち込みっぷりを見てな。ピンと来たんだわ』
『そんなことで!?』
『あー、やっぱり坊主にもわかったか? コイツはフェルの嬢ちゃんとコレの仲になりたいんだよ』
ニックさんはトールを指さした後『小指』を立てた。
こっちの世界でも小指はそういう意味を持つのか。
『ニック爺も気付いてたか。だがトールのやつはなかなかフェルに告白しようとしないんでな、団内でも『いつ告白するんだよ』って思ってるヤツがかなり居るんだ』
『なあオリオよ。ここは俺等で二人の仲を近づけてやらんか?』
『おっいいね~』
『二人とも、俺も参加させて下さいよ』
『あんたら当人置いて話し進めるなよ!?・・・って』
『『『?』』』
「団長と副団長いつの間に会話に入って来たんだよ!?」
俺、オリオさん、ニックさんがひそひそ声で『トールとフェルの仲を近づけてやろう会議』をしていたのだが、トールが割って入ってきた。
・・・・・・キャラが崩れてきてるぞ。
「良いツッコミだったぞトール」
「あぁなかなかのタイミングだったな。なぁニック爺」
「ははははっ、これも部下を思う上司の親切心だ! ありがたく思えよトール」
「いや!? どっちかって言うとありがた迷惑だよ!」
俺の中で、トールは『丁寧な年下』から『ツッコミ』へとクラスチェンジした。
「ちょっと? 男四人で何話してるのよ」
仲間外れにされてちょっとご立腹なフェルが近づいてきた。
「いやなフェルの嬢ちゃん。実はトールが―――」
「わー! わー! わー!」
「フェル。実はトールは以前から―――」
「あああぁぁぁぁ!?」
「トー」
「うおぉぉぉ!」
「うるさい! まだ『トー』しか言ってないだろ!」
「ぶべらっ」
俺はちょっとイラッと来たのでトールの頬を張った。
俺の力だとグーで殴るのは危険と判断し、力加減した上でビンタにした。
「きゃーー!? トール!?」
「フェ、フェルさ・・・(ガク)」
―――のだが、トールはそのまま気絶した・・・当たり所が悪かったかな?
~閑話休題~
「ところでオリオさん。結局ユーキの言ってることは本当だった、ってことで良いのかしら?」
「ん? あぁ、そうだな」
気絶したトールはニックさんが医務室へ連れて行った。
ただ『男を背負うなんてまっぴらだ』とか何とか言ってズルズルと引き摺ってだが。
「じゃあユーキも街には行っていいわよね」
「そうだな」
「ありがとうございます」
俺はオリオさんに頭を下げる。
そして俺の隣で自分のことのように喜んでくれるフェルに思わず笑みがこぼれてしまう。
「しっかし、俺も腕には覚えがあったんだがなー。もう一度鍛え直すかな」
「本当、ユーキ強かったわよね。あの三人はこの街でもトップクラスの元冒険者だったのに」
「冒険者?」
冒険者というとあれだろうか。
ギルドに加入してて、薬草採取したり魔物退治したりする。
漫画、小説、ゲームでお馴染みのあれ。
「ん? お前さんが元いたっていう世界にはいなかったのか、冒険者?」
「えぇ、いませんでした。近い物で言えばトレジャーハンターってやつになるかな」
「へー。・・・ユーキは冒険者に興味あるの?」
「あぁ、そうだね」
フェルがそう聞いてきたので俺は素直に答えた。
「じゃあユーキ、ギルドに加入すればいいよ! そうすれば私とバーティ組めるし!」
「フェルは冒険者なのか?」
「うん! ユーキが入るなら色々教えてあげるわよ」
「おう、そうだな。俺もお前さんは冒険者に向いてると思うぞ」
「そうですか・・・」
俺は考えた。
確かにこの世界で生きて行かなくてはいけないのだから、手に職は必要だろう。
だったらいっそのこと俺の力を使って冒険者になるのも良いかもしれない。
それに―――。
「(フェルだっているって言うしな)」
俺はフェルの使う『魔法』に興味があって仕方がない。
いつか教えてもらおうと思っていたが、これは願ったり叶ったりかもしれない。
――――残念だったな! 別にフェルのことが好きだとかの展開ではないのだよ!
「いくつか質問したいんだが」
「うん良いわよ」
「冒険者って言うと、依頼書にある物を採取してくるとか、魔物を討伐してくるとか、そうして報酬を得るってやつで間違いない?」
「えぇ、大体そんなもんよ」
やっぱりテンプレ通りでした。
ごちそうさまです。
「もし俺がギルドに入ってフェルとパーティを組んだら、俺に魔法を教えて貰えないか?」
「う~ん」
「ダメか?」
腕を組んで悩むフェルを前に少し食い下がってみる。
「いやダメって言うか、魔法はその人に適性があるかどうかだから、適正がなかったら教えても魔法は使えないのよ」
「その適性ってやつはどうやって調べるんだ?」
「おう。それなら自警団に調べるための魔具があるからよ。持ってきてやるよ」
「ありがとうございます」
・・・オリオさんいるの忘れてた。
「―――またせたな。この手形に自分の手を重ねてくれれば良いからよ」
「わかりました」
オリオさんが持ってきたのは、手形が掘られた板(真っ白で金属とは違う素材のようだ)と無職透明な水晶だった。
どうやら板に手を置くと、水晶の方に結果が出るようだ。
俺は言われた通りに板の手形に自分の手を重ね合わせる。
「うむ・・・・・・な、なんじゃこりゃあぁぁ!?」
「どうしたのオリオさん!?」
おそらく結果が出て淡く光った水晶を見て、オリオさんが絶叫した。
どこぞの刑事さんですか。
「フェル・・・俺は完全にコイツが異世界から来たって確信したぜ」
「へ?」
「・・・・・・ユーキの適性は『全属性』だ」
「―――はあぁぁ!?」
今度はフェルが絶叫した。
「あの、そんなに凄いんですか? 適性が全属性って」
「凄いなんてもんじゃないわよ! 全属性って、大昔にいたっていう英雄一人しかいないわよ!」
「へぇ、俺以外にもいたんだ」
「えぇ。でも詳しくは知らないわ」
「・・・・・・なぁユーキよ。冒険者じゃなくて自警団に入らねぇか」
「ちょっとオリオさん!? ユーキは冒険者になるのよ!」
「ちなみにどんな仕事ですか、自警団って」
「そうだな―――きつくて、危険で、給料が安い仕事・・・かな」
「・・・遠慮しときます」
給料がちょっと違うが、3Kの仕事は御免被りたい本郷悠紀です。
「でもこれで私が魔法を教えてあげられるわね」
「あぁそうだな。・・・というわけでオリオさん。俺は冒険者になろうと思います」
「そうか、本当は自警団に欲しい人材だが、まぁ頑張れや」
「ありがとうございます」
「じゃあねオリオさん」
オリオさんはそのまま魔具をもって宿舎の方に帰って行った。
きっと自警団の仕事に戻るのだろう。
「さてと。じゃあユーキ! さっそくギルドにいって冒険者登録してくるわよ!」
「あぁ、道案内よろしくな」
「任せなさい!」
良い笑顔で答えたフェルに続き俺も歩き出す。
―――ここから俺の異世界生活が始まった。
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※加筆10/18




