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相棒?いえ、パートナーです

私の住んでいるところではないですが、近くで気温氷点下を観測したそうです。

夜~朝に掛けて息が白いわけだ><;

 

 

 

「君は、いったい・・・」

「私は主のパートナーです。なんなりとお申し付け下さい」



 俺が思わず呟いた言葉に律儀に答える目の前の妖精。

 時折、その透明な羽をピクピク動かしている。



「す、凄いじゃないか! まさか妖精型を召喚するなんて!」



 この場でいち早く動き出したのはドアートさんだった。

 彼は糸目を限界まで見開き(それでやっと普通の大きさ)、俺の横を通り過ぎる。

 そしておもむろに妖精に手を伸ばし――――――、



「触らないで下さい―――殺しますよ」

「・・・え?」



 ―――目にも止まらぬ速さでのど元に刃を突きつけられた。

 その刃は剣などではなく、揃えて伸ばされた五指を延長するかのように存在する、半透明な刃だ。

 蜃気楼や陽炎のように空気が揺らめいていて、若干白いので認識することが出来る。



「私は主の物。主以外が主の許可なく私に触れないで下さい」



 ようやく妖精の容姿が見て取れた。

 まだ片膝を着いた状態なので身長は分からないが、恐らく一六〇くらいではなかろうか。

 黄緑色の髪に澄んだ海のように青い瞳、目鼻はキリッとしていて、息をのむほどの美人さんだ。

 背中が大きく開いた真っ赤なドレスを着ていて、多分だが背中の羽の邪魔にならないようにしているのだと思われる。

 見たところ同い年(二十)かそこらと言ったクール系のお姉さんだった。



「(え~・・・妖精ってかわいい感じじゃないのか? いや、背中の羽を見て勝手に妖精だと思ってただけだけど)」



 俺は一人場違いなことを考えていた。

 そんな俺の前ではドアートさんが生死の境をさまよっている。



「お、落ち着きたま()っ。あ、謝る! 勝手に触ろうとしたことは謝りましゅ(・・)っ! ごめんなさい!」

「・・・だ、そうです。いかが致しましょう、我が主?」

「(ドアートさん噛んだな)えっと、とりあえずその物騒な物はしまって、ドアートさん―――彼も解放してくれますか」

「分かりました。ですが我が主。私に対して敬語は不要です」



 俺は立ち上がり、お尻に着いた砂をはたき落としながらお願いする。

 のど元の刃から解放されたドアートさんは、逆に先程までの俺のように尻餅をつく。



「それで君は俺が召喚したってことで合ってますか?」

「はい。間違いありません。それと、我が主。敬語は不要です。」

「そうで・・・そうか」



 本人が敬語はいらないと言っているのに、執拗に使うこともないだろう。

 なにより俺もタメ口の方が話しやすいし。



「君は妖精で良いのかな? あと、名前は?」

「申し遅れました。私は妖精族(・・・)のイリーナ・ルデンと申します。この身この命は全て主様のための物。なんなりとお申し付け下さい」

「イリーナさん―――イリーナか。それと最初に言ってたパートナ―――」



「妖精族だと!?」

「うわっ! 何ですかいきなり!?」



 突然へたり込んでいたドアートさんが再起動した。



「君は彼女の言葉が聞こえなかったのか!? 妖精族! そう言ったのだよ! 彼女はっ!」

「妖精族・・・」

「そう! あぁ、調べたい。隅々まで調べて今まで誰も解けなかった謎を解き明かしたいっ」



 そういえばグインタビューでモリア神父に聞いた覚えがある。

 妖精族は謎多き種族である、と。

 この世に存在していることは確かだが、常に不可視となっていてどこでどのように生活しているのか、どのくらいの規模なのか、全くと言っていいほど分かっていないとか。

 


「(そうか。そんな種族が目の前にいたら、そりゃあドアートさんみたいな人は興奮するよな)」



 昨日に引き続き、マッドな部分を垣間見えた。



「まぁ俺は妖精族だとか、そういうのには特に興味ないから・・・それでなんだけど」

「よくも主の言葉を遮りましたね―――本当に死にますか」

「ひっひぃぃぃ!?」

「・・・・・・」



 またドアートさんがのど元に刃を突きつけられていた。

 ・・・・・・ちょっとドアートさんとの付き合いを考え直そうかと思ってしまった。



「我が主。殺傷許可を」

「ダメだよ。・・・そんなんでも俺の知り合いなんだ。許してあげて」

「・・・分かりました」



 うん。

 イリーナはイリーナで物騒なやつだと分かった。

 とにかく俺を第一に考えてくれているのは分かるけど、すぐに刃を突きつけるのはやめてもらわないと。



「ドアートさん。いったん落ち着いて下さい。まず俺とイリーナで話をしますので、ドアートさんの用事はまた後で、ということで」

「(コクコクコク!)」



 高速で首を縦に振るドアートさん。

 早く振りすぎて酔わないか心配だ。

 


「じゃあいったんあそこに行こうか」

「御意に」



 昨日お茶を飲んだ休憩スペースへとイリーナを伴って歩いて行く。

 イリーナはその時俺のちょっと後ろを付いてきていて、まるで日本の古き良き奥さんみたいだなと思ってしまった。



 あ、ちなみに身長はやっぱり一六〇くらいで合ってた。



「じゃ、じゃあ私は、お、お茶でも入れてくるよ」

「ありがとうございます。そういえば今日はリンディは?」

「きょ、今日は、私の用事の使いに出している」

「そうですか」



 ドアートさんは館へとちょっと駆け足気味に向かっていった。

 その様子からいち早くこの場を去りたいという雰囲気を感じる。

 どうやらイリーナに対して苦手意識が根付いてしまったようだ。



「さて、さっきの続きだけど。イリーナの言っているパートナーって? 召喚したから召喚獣―――いや、この場合()なのか? 妖精(・・)じゃなくて妖精族(・・・)だし」

「はい。私はこの世界に属する種族の一員なので、召喚獣とは言えません。ですので『パートナー』とさせて頂きました」

「ん~。なる、ほど?」



 まぁ言わんとすることは分かった気がする。



「ちなみにこの様な場合に『パートナー』と呼ぶことにしたのは、我が主の前に妖精族を召喚した人物が決めたことです」

「俺の他にもいたのか」

「はい。このファンタピアが今のように複数の国に別れる前、一人だけいた全属性持ちの方が」

「う~ん・・・あ、そうだ。それも前にフェルから聞いたな」



 確か初めてグインタビューに入った時。

 オリオさんたちと戦った後に、俺が全属性持ちだって分かった場で聞いた覚えがある。



「なんだか今日はグインタビューを思い出すことが多いな。・・・・・・フェルとマギー。みんなはどうしてるのかなぁ」



 グインタビューを発ってまだそんなに日は経っていないが、懐かしく感じる。

 俺は何となしに空を見上げた。

 空は青くて雲がほどよく漂っている。

 名前も知らない鳥が数羽、ふざけ合っているかのようにくっついては離れを繰り返しながら飛んでいる。



「―――我が主。その『フェル』や『マギー』と言うのは? 名前からして女性のようですが」



 突如空気が変わった。



「イリーナ?」



 イリーナの綺麗な瞳はずっとこちらを見ている。

 見ているはずなのだが・・・何故か視線を感じない。

 俺を飛び抜けてさらにその奥を見ているような――――――、



「我が主は私のパートナーです。故に私は主以外の誰の物でもありません。その逆もまたしかり」

「イ、イリーナ?」

「私たちの間には、他の者が介入してくる隙間はありません。・・・そのフェル、マギーとやらも・・・」

「も、もしも~し」

「―――我が主」

「あ、あぁ。何だ?」

「末永く、よろしく、お願いします、ね?」

「・・・こちらこそ」



 ――――――俺は悟った。

 イリーナはちょっとアレ(・・)だ。

 病気だ、と。



「(イリーナとフェル達が会ったら・・・想像したくない)」



 俺は微笑むイリーナに対して表面では苦笑いだが笑みを返していたが、内心では頭を抱えていた。





最後までお読み下さってありがとうございます!


登場していなかった最後の種族、『妖精族』がついに登場しました。

そしてヤンデレ気味?

ですがイリーナさんのスペックは凄いです。

ここから主人公のチートっぷりが跳ね上がる予定です。



【次回】幕間劇 ~グインタビュー事変~


※誤字修正10/18(とんでもない間違いをしていた・・・)

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