ファンタジーには欠かせない
最近寒くなってきましたね。
皆さんお体に気をつけて下さい。
結局、あの後俺マヤはお茶を飲むだけ飲んで、ドアートさん宅をお暇することとなった。
何かを探しに行っていたドアートさんが『目当ての物が壊れていたので新しく用意する。明日また来てくれ』と言ったからだ。
「ユーキさん。今日はすみませんでした。せっかく来て頂いたのに・・・」
「気にしなくて良いよ」
「美味し、い、お茶、飲めた」
「そうだな。あのお茶は美味かったよ」
リンディは見送りのため、屋敷正面の門まで一緒に来てくれた。
だが、自分が誘ったのにこのような事態になって申し訳なさそうに肩を落としている。
「ありがとうございます。・・・でも、あれを淹れたのはマヤちゃんですけど、ね」
『ハハハ』と力なく笑い、頭を垂れるリンディ。
そんな彼女を心配して、マヤがリンディの頭をナデナデした。
「元気、出た? 私、は、される、と、出るよ?」
「うぅ~っ! ありがと~マヤちゃ~ん!」
リンディは鼻をすすりながらマヤに抱きつく。
俺とドアートさんが話している間に、この二人はこの二人で、仲良くなっていたようだ。
抱きつかれたマヤも嫌そうな素振りを一切見せていない。
「ほらほらその辺にしとけ。人目だってあるし、な?」
「あわっ! す、すみませんっ」
俺に言われて慌ててマヤを解放したが、その慌て振りがさらに周囲の目を引きつけていることに気が付いていない。
「重ね重ね本当に・・・」
「大丈夫だよ。なぁ?」
「ん。リンディ、さん、なら、平気」
マヤも同意してくれる。
そしてまた『ありがと~』と、マヤにリンディが抱きついてこようとしたので、軽くチョップして止めた。
「言った側からそれかいっ」
「か、返す言葉もありません」
今度こそ落ち着きを取り戻したようだ。
まるで叱られた子供のように肩を落としているが・・・。
「それじゃあ今日はこれで。また明日、同じ位の時間に来るよ」
「はい、師匠にも伝えておきます。じゃあね! マヤちゃんっ」
「ん。バイバイ」
胸の前辺りで小さく手を振るマヤに、リンディは大きく手を振って答える。
そしてその行動がまた周囲の目を引く、と。
何ともまぁ、賑やかなことで。
「今日はもう真っ直ぐ三日月に戻るけど、いいか?」
「大、丈夫」
俺たちは寄り道することなく帰路についた。
三日月に着くとマヤの新しい服を見て、パーラさんもロイさんも『可愛いよ』と褒めつつ、頭を撫でていた。
マヤも満更ではない様子で、頬をほんのり赤く染め、尻尾もユラユラと揺れている。
そして、何と言ってもマヤの嬉しそうな笑顔が見れたこと。
今日は最後に色々あったが、これが見れただけでも俺は満足だ。
~~~~~
翌日、俺は約束通り再びドアートさん宅を訪れた。
機能はいなかったが門番が二人立っており、俺の名前を教えると『少々お待ち下さい』と言い残し一人が屋敷へと走っていった。
おそらく誰かを連れてくるのだろう。
俺の予想ではリンディだと思う。
「すまない。待たせたか?」
「いえ」
残念ながら予想は外れ、ドアートさん本人がわざわざ門まで出迎えにきてくれた。
「さっそくだが修練場に行こう。用意は既に出来ている」
「分かりました」
「ところで今日は一人なんだね?」
「えぇ。今日はマヤは仕事なので」
どうやらドアートさんはマヤがまた来た時のために、お菓子を用意してくれていたそうだ。
今日は来なかったので『帰りに持って帰りたまえ』とお菓子を包んでくれるそうだ。
こう言っては悪いが、意外と気配りが出来る人なんだと感心してしまったのは内緒だ。
「さて、まずはこれを見てくれ」
修練場のほぼ中央まで来ると、ドアートさんが置かれていた机の上にあった野球ボール位の水晶?を持ち上げて見せた。
「これは?」
「これも私の発明でね。これを持ったまま魔法を発動すると・・・このように光り出す」
右手にそれを持ったまま、左手の上に小さな竜巻を出すと水晶が光り出した。
だがその光は小学生の時、理科の実験で使った豆電球位弱々しい光だ。
「この光は発動した魔法に対して、使っている魔力が大きすぎると光る仕組みになってる。すなわち光が弱いほど魔力操作が上手く行っているということになる。試してみたまへ」
そう言って水晶を手渡されたので、俺は右手にそれを持って、左手で蝋燭位の火を出した。
すると、水晶はまるで至近距離でLEDライトを見たかのように、眩しい光を放った。
「うわっ、眩しっ!?」
「ちょっ、やめやめ! いったんやめるんだっ」
俺は言われなくとも、と急いで魔法を解除した。
「いやぁ、まさかこれ程までに下手だったとは・・・・・・」
「す、すみません」
「本来なら光の様子を見て徐々に魔力制御を覚えるんだが、これでは話にならないな」
ドアートさんは腕を組んで考え込む。
「・・・そういえば、君は何属性の魔法を使うんだい?」
「あ、全属性使えます。はい」
「・・・・・・いや、今は冗談とかいいから」
「いえ、本当に」
「え? ・・・本当に?」
俺は首を縦に振って肯定する。
それからは大変だった。
ドアートさんはまず『証拠を見せてくれ』と言ってきたので、それぞれの属性で魔法を使って見せた。
特に『光・闇・無』の三属性を見せた時には開いた口がふさがらない様子を見せ、その後に肩に手を乗せ詰め寄ってきた。
「君!? ちょっと君の体を調べさせてくれないかね!? なにっ悪いようにはしないよ! ちょっと体の中を見たりするだけだから!」
ドアートさんのマッドサイエンティストの部分を垣間見えた瞬間だった。
~~~~~
「いや、ちょっと興奮してしまって、すまなかったね」
落ち着きを取り戻したドアートさん。
目を爛々と危ない光で輝かせていたが、今は元通りになっている。
「しかし、君が異世界からやって来たとは・・・異世界の人族とはみんなこうなのか?」
「いえ、神様が言うには俺だけが特別そうらしいですね」
「ふむ」
また腕を組んで考え事をするドアートさん。
「君はこの話を他の誰かにしたのかね?」
「? はい。でも大半の人はあまり内容を理解出来ていないか、嘘をついてると思ってるみたいでしたね」
「だろうね。正直私も証拠を見せてもらわなかったら信じていなかっただろう」
苦笑いを見せるドアートさんは、真面目な顔つきになって忠告してきた。
「あまり君の生い立ちを話さない方がいいだろう。世の中には悪い奴等がわんさかいる。その中には君を利用しようとする輩もいるだろうからね」
「えぇ。この話は信用出来ると思った人だけにするようにします」
「それがいいだろう。・・・・・・さて、話を戻そうか」
手をパンッと叩いて仕切り直す。
そういえばここには魔力制御の為に来たんだっけ。
「正直君の魔力制御だが、私が用意した品々ではどうしようもない」
お手上げだ、と両手を頭の上に上げて苦笑いを見せる。
「だが、君が全属性持ちであるなら話は別だ。『召喚』をすればいい」
「『召喚』?」
「召喚は無属性と光または闇属性を持っていて、尚且つ抜きん出た魔力を持っていないと出来ない魔法だ。この魔法で『召喚獣』を呼び出す。」
ドアートさんの説明に耳を貸す
◇◇◇◇◇
『召喚/召喚獣』
無属性と光または闇属性持ちしか使えなく、さらに膨大な魔力が必要になってくる特殊な魔法。
属性は誤魔化せないが、魔力に関しては他者が介入することが出来るので、使用者の魔力が少なくても他者が補うことが可能。
召喚はこの世に存在する、もしくは存在していた生物の姿を模した召喚獣を呼び出す。
多くの場合は動物の姿だが、稀に魔物だったり、お伽噺に出てくる妖精の姿をしていることがある。
日頃はゴーストのように実体もなく、姿も見えないが呼び出しに応じて姿を見せ実体を持たせることも可能
召喚獣は呼び出した者を主と認識していて、そのサポートをする。
どんなに小さな姿をしていても見た目に反した力を持つ。
力作業も得意が、一番得意なことは主が使う魔法の補助をすること。(恐らく自分自身が召喚によって作り出された魔法生物だからだと考えられているが詳細は不明)
主である人物が死亡した場合、召喚獣も消滅する。
◇◇◇◇◇
「つまり、召喚獣に魔法の補佐をしてもらうと」
「そうだ。これなら君にぴったりだと思う。ちょっと待ってくれ」
ドアートさんは修練場の地面に白い粉で何かを書き出す。
それは所謂『魔方陣』で、幾何学模様で何が何だか分からない。
おそらく見て読めないという事は文字ではないと思うが。
「よし。準備出来たぞ。この中央に立ってくれ」
「はい」
魔方陣の中央に立つ。
すると、何もしていないのに白い粉が金色に変わった。
さらに金色になったそれは、先程の水晶とまでは行かないが、眩しく光り出す。
「これで準備完了だっ。あとは無属性と、光か闇属性の魔力球を作り出して、混ぜ合わせれば召喚完了だ!」
眩しくて手で日差し避けを造りながらドアートさんが教えてくれる。
俺は言われたように『無属性と、光と闇属性の魔力球』を造りだし、その三つを目の前で合体させた。
「っ!? うぁっ」
体から一気に魔力を吸い取られる感覚が俺を襲う。
一瞬だけだったが貧血を起こしたみたいだ。
俺は思わず足から力が抜けて、その場に尻餅をついてしまう。
「(成功したのか?)」
三属性が混ざった魔力球が大きく膨らみ、俺を包み込む。
何だか雲の中にいるみたいだ。
真っ白で何も見えない。
『―――貴方が呼んだの?』
「? 誰だ?」
どこからともなく声が聞こえた。
えらく抑揚がなく平淡だが、声からして女性のようだ。
「どこにいるんだ?」
『やっぱり、貴方で間違いない。―――これからよろしく我が主』
俺が問い返そうとした次には、目の前は見慣れた修練場になっていた。
「―――ん?」
そして、尻餅をついていた俺の前には、まるで王様を前にしているかのように片膝を着いて、恭しく頭を垂れている、透き通った羽を背中に生やしている、そう、―――妖精がいた。
お読み頂きありがとうございます^^
やっと登場した『召喚獣』!
ようするに『使い魔』ですね。
この作中では召喚獣と呼びたいと思います。
※召喚した妖精?について質問があるかと思いますが、今後作中にて詳しく書いていきたいと思いますので、ご質問はお控え頂くようお願い致します。
【次回】妖精さん、凄すぎですよ・・・いろんな意味で
※誤字訂正10/16




