無駄遣い厳禁!
PCモニターが逝きました。
省エネで良いやつだったのに・・・
急遽古いモニターを引っ張り出してきて使ってます><;
ちゃんとしたの買ってこないと
服屋を出てから歩くこと二十分ほど。
街の中心地方面へ歩いていた俺たちの目の前に、一件の屋敷が現れた。
大きさはグインタビューの三分の一程度だが、落ち着いた色合いの建物に雰囲気の良い小さな庭があり、住んでる人物の趣味の良さが伝わってくる。
「ここが師匠の屋敷です。奥の敷地に修練場があって、普段はそっちにいます」
「・・・おっき、い」
「そうだな。んじゃ、師匠さんに会いに行きますかね」
「こちらです」
マヤは屋敷に一歩入ったら緊張したのか、繋いでいた手に加わる力が強くなった。
俺はそれに対してこっちからも握り返してやる。
「っ・・・」
「大丈夫だよ。俺が一緒だろ?」
「んっ・・・・・・あ、の」
躊躇いがちにマヤがボソボソと何かを喋る。
「なんだ?」
「あ、の・・・・・・・・・お兄、ちゃ、ん(ボソ)」
「? お兄ちゃん?」
マヤの小さな口から確かに『お兄ちゃん』と聞こえた。
「お兄、ちゃん、って、呼んで、いい?」
「・・・・・・」
マヤの顔はもちろん耳まで真っ赤だ。
目には涙も溜まっているように見える。
「(お兄ちゃん、か。やっぱり兄弟と離ればなれは寂しいんだな・・・)」
―――この時ユーキは『家族恋しさ』にそう言ったと思っていたが、実際にはマヤはそんなの関係なくユーキを『お兄ちゃん』と呼びたかったのだが、そんなこと知るよしもなかった―――
「おういいぞ。こんな兄貴でもよければ、いくらでもそう呼んでくれ」
「! んっんっ!」
いつもより一オクターブ高い声で嬉しそうに頷くマヤ。
その様子が可愛くて麦わら帽子の上からポンポンと軽く叩く。
「あの~。お取り込み中すみませんが、到着しましたよ~」
俺とマヤの空気を呼んでいたリンディであったが、目的地に着いたので声を掛けた。
「悪い」
「ごめん、なさ、い」
「ふふ、いえいえ~」
リンディは同時に頭を下げてきた二人に少し笑ってから修練場の扉を開ける。
「師匠! 連れてきましたよ~! 私が言ってた男の―――」
「危ないぞー!」
「「へ?」」
扉を開けたと思ったら、黒い物が沢山俺たちに向けて飛んで来た。
それは無数の矢で、眼前を覆い尽くすほどの数だった――――――。
「きゃあああ!?」
「っ!」
リンディは頭を庇うようにしゃがみ込み、マヤは矢を睨め付けながらもその場に棒立ちになっていた。
『このままではサボテンになっちまうっ』と、場違いなことが頭をよぎったが、俺は反射的に魔法を使っていた。
「くそっ! このぉっ!?」
使ったのは土魔法。
ありきたりな土の壁を作り出し、『(』の形にして俺たち三人の前に盛り上がらせた。
湾曲させたのは、矢を弾かせるためだ。
どのくらいの威力を持っているか分からないため、垂直では貫通するかもと一瞬で判断しこのようにした。
「―――止まった、か?」
ガスッ、ガサッ、バキッ、などの音を大量に鳴らしていた矢の雨だったが、数秒もしたら途絶えたようで、辺りの音が一切なくなった。
「魔法を解除してっと・・・ってうわ! 凄い量だなっ」
丁度土壁があったところを堺に、矢の絨毯が出来ていた。
「いった何が何だか・・・なぁリンディ。これって」
「師匠! 私たちを殺すつもりですか!?」
復活したリンディは、手練場と呼ばれた場所の一角を睨み付けて怒鳴る。
するとその方向から誰かが走り寄ってくる足音が聞こえてきた。
「す、すまん! ちょっと発明していた兵器が完成したんで・・・丁度いい的もなかったので、扉に向けて試してみたんだ」
「的を倉庫から出す労力くらい惜しまないで下さい! そのせいで今死にかけたんですよ! 結果的にはユーキさんに助けてもらいましたけど!」
リンディは頭から湯気が出るのではないか?、という剣幕で捲し立てる。
さっきまで俺の名前を呼ぶたびに恥ずかしそうにしていたのに、ショック療法だろうか、すんなりと『ユーキさん』と呼べていた。
「そうだ! さっきの魔力はいったい何だ!? 物凄い質と量を感じたが・・・って、そうか君がリンディの言ってた男の子か! いやぁ視てみたら納得だなっ」
俺の体を上から下までジロジロ見ながら男性が近づいて来る。
身長は俺と同じ位、金と言うより黄色に近い髪の色、後頭部辺りでちょこんと髪を縛っていて、いわゆるオールバックになってる。
顔は笑顔がデフォルトなのか常に笑っている。
糸目であることがよけいにそれを強調していた。
歳は見た感じ二十代後半から三十位だが、話し方の印象はもっと上に感じる。
「そうでしょう! 師匠っ。ユーキさんは本っっっ当に凄いんだからね。今だってあんな凄いまるで雨みたいな矢を・・・・・・って! 話を逸らそうとしてもダメですよ師匠!?」
「いやいやリンディ。君が勝手に食いついてきたんじゃないか」
まさにその通り。
俺は目の前の男性に話しかけることにした。
「貴方がリンディの言っていた『師匠』で間違いないんですよね?」
「あぁ。名はドアートという」
「はじめまして、ドアートさん。俺はユーキ、こっちはマヤ。今日は彼女から誘われてやって来たんですが」
「はじめ、まし、て」
「うむ。話はリンディから聞いている。・・・前にも聞かれただろうが、再度君に問おう。『君はもっと強く』なりたいか?」
いきなり本題か。
話をするにあたって『立ち話も何だね』と言うドアートさんの勧めで、修練場の一角にある小屋(屋根はあるが壁がない、公園の休憩スペースみたい)へと向かい、そこにあった椅子に皆座る。
「そのこと―――『強くなりたいか』ってことについてなんですが、いきなりのことなので、ちょっと聞きたいことが」
「なるほど。それで。何を聞きたいのかね?」
「はい。もし俺がリンディみたいにあなたの弟子になった場合、どうやってもしくはどのように強くしてくれるんですか?」
「ふむ」
糸目の片方だけが少しだけ開かれた。
その目は俺を見ている・・・・・・ようなのだが、視線を感じないという変な感覚を覚える。
「視た限りでその質問に答えるなら、私は『魔力制御』をもっと上手くさせて見せようじゃないか」
「『魔力制御』? それはそのまんま、魔法のコントロールする技術のことですか?」
「そうだね―――んっゴホッゴホッ!」
「あっ師匠っ!?」
「んんっ、大丈夫だよリンディ。ちょっと咳き込んだだけだ」
ドアートさんは痰が絡まったような音のする咳をつく。
リンディは『お茶を用意してきます』と中座して、屋敷へと向かった。
そしてその後をなぜかマヤが付いていこうとしていた。
「どうしたんだマヤ?」
「・・・お手伝、い」
「手伝いって、リンディの?」
「ん」
どうやら自分がお客様として扱われているのに違和感があったようで、仕事(手伝い)をしたそうにソワソワしているマヤ。
「でもここは三日月じゃないんだから迷惑に―――」
「構わんよ。マヤ君。リンディは屋敷に入って左に進んだ突き当たりの部屋にいる。そこがキッチンだ」
「んっ」
マヤはドアートさんに丁寧にお辞儀をしてからリンディの後を追う。
必然的にこの場には俺とドアートさんの二人きりとなる。
「さて。さっきの続きだが、魔力制御を修練する理由は君の魔力の使い方にある」
「使い方?」
「さっき土魔法を使った時に感じた魔力なんだが、それに対して発動した魔法が弱かったのだよ。あの時感じた魔力量なら、もっと強力な魔法が発動する筈なんだがね」
ドアートさんは腕を組んで『う~ん』と考える。
そしておもむろに手をポンと叩き、人差し指を一本伸ばしながら良い笑顔でこう言った。
「要するに君の魔法は『無駄』が多いんだよ。まるで鍋一つのお湯を沸かすのに、街中の薪を燃やしているみたいだ」
「そうなん、ですか? 自分ではよく分かりませんが・・・」
「君は魔力量がそもそも桁違いだからね。おそらくだがこの効率の悪さでも残量がタップリありすぎて、感じられないのだと思う」
『そこで』と、ドアートさんは椅子から立ち上がり、何かの宣言するかのように俺を指さしてきた。
「君にはその無駄という無駄をなくす修練を用意する! これにより魔力制御も上達し、魔法の威力増加、消費魔力の減少を実現させようじゃないか!」
「えっと」
「さてこれから忙しくなるな! ・・・アレはどこに置いていたかな?(ブツブツ)」
「ドアートさん?」
「(ブツブツ、ブツブツ)」
俺の声など右耳から左耳に抜けているかのように反応を見せない。
そのまま席を立って屋敷へと足を向ける。
その途中戻ってきたリンディとマヤともすれ違ったが、やはり気付くことなくそのまま中へと入って行ってしまった。
「なにか、あった、の? お兄、ちゃん」
マヤが俺の手をキュッと掴んで心配そうに見上げてくる。
「あ~、ドアートさんが暴走したというか、俺の修練決定というか」
「?」
苦笑いを浮かべるリンディを視界の端に捉えつつ、俺はキョトンとしているマヤの頭をポフポフする。
まぁ悪い話じゃないし良いかもしれない。
あとは、魔法以外に剣も教えて貰えないか聞いてみよう。
「―――とりあえず。お茶を飲もうか」
お読み頂きありがとうございました!
師匠搭乗時に使っていた新兵器は、簡単に言うと『矢を同時に大量に射る』という兵器です。
ロケットポッド、フレシェット、ショットガンみたいに『一度に大量の~』と考えて頂ければ。
【次回】ついに登場?助さん格さん的な奴!
※加筆・誤字修正10/14




