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マヤとお出掛け

実は『新作』を書くことにしました。

もう少し詳しい内容は後書きに書いてあります。

 

 

 

「―――よし、書けたぞ」



 俺は今『宿屋三日月』の一室で机に向かっていた。

 ソプレゼに来て今日で三日目を迎えた。

 お昼ちょっと前くらいだろうか?



「後はこれを行商人に渡せばいいんだよな?」



 ソプレゼでの拠点を決めたら、手紙を送るという約束をフェル達としていたので、今はそれを書いていたのだ。

 なぜ三日も経ってから書いているかというと、この世界には郵便配達やら宅配便という物がないため、何か送りたい時はそこへ行く行商人に頼むのが一般的なのだ。

 ちょうどグインタビューへ向かう行商人が今日までいなくて、結果三日もずれ込んでしまったというわけだ。



「さて、それじゃあ」

「(コンコンコン)―――起き、てる?」

「マヤか? 起きてるから入っていいよ」

「(ギィ)おは、よう」

「おはよう。って言っても、もうお昼前だけどな」



 いつのもワンピースに、真っ白なエプロンを着たマヤが姿を見せる。

 時間はまちまちだが、マヤは一日一回は俺の泊まってる部屋を訪れるようにしている。

 何故なら――――、



「―――んっ」

「はいはい(ナデナデ)」

「~、~♪(パタパタ)」



 こうして頭を撫でてもらいたいからだ。

 だが、ただ気持ちいいから撫でて貰いというわけではなく、マヤの身の上が関係してくる。



 実はマヤには兄(名前はログという。ロイさんと一字違いだ)が一人いたらしい。

 マヤとログは赤ん坊の時に里親に出され、商業大国『フェミニオ共和国』で育ったそうだ。

 二人を引き取ったのは小さくもないが大きくもない、程々の規模で展開している商家だったのだが、ある日経営破綻してしまい借金を抱えた。

 そして、その家の家人(二人を含む)は借金を返すために奴隷となり、マヤは巡り巡ってここ『セフィニア公国』のソプレゼにやって来たそうな・・・。

 家人と兄の行方は、借金返済が終われば奴隷商から教えて貰えるらしい。



 ここでようやくナデナデの話に戻るが、兄のログはよくマヤの頭を撫でてくれていたのだそうだ。

 マヤはログに頭を撫でてもらうと気持ちが落ち着くらしく、たまたまログに雰囲気が似ていた俺は身代わりになったというわけだ。 



「(まぁ、俺もマヤは妹みたいで可愛いから、嫌な気はしないんだけどな)」



 そこ!? ロリコンって言わない!



「?」

「何でもないぞ」



 ~~~~~



「おやユーキ。出かけるのかい?」

「えぇ。ちょっと行商人に手紙の配達を依頼しに」

「そういえばそんなこと言ってたね」



 パーラさんには宿泊初日に手紙の出し方を聞いていたのだ。




「ユー坊! 行商んところに行くんだって? どこ行きのだ?」

「グインタビュー方面です」

「じゃあ丁度いいっ、この手紙も頼むぁ!」



 カウンターに座っていたパーラさんと話していると、ロイさんからついでにとお遣いを頼まれた。

 ここ三日で慣れたが、パーラさんはともかく、ロイさんは俺の事を客と思っていない節がある。

 まぁパーラさんのご厚意で宿代は無料にしてもらっているので文句は言わないが。



 ちなみにロイさんが言った『ユー坊』とは、俺の事だ。

 決して潜水艦ではない。

 もう二十にもなるのに、まさか坊や扱いされるとは思わなかった・・・。



「了解です。では行って―――」

「私も、行く」

「―――きま、す? マヤ?」



 エプロン姿のマヤがキュッと服の裾を握ってアピールする。

 さらに上目遣い(本人は無意識)でキラキラした視線を向けていた。



「別に遊びに行くんじゃないんだぞ? それに仕事はいいのか?」

「お遣い、いつも、私が、やってる。宿は、今は、ない。大丈夫」



 えっと。

『お使いはいつもは私がしてる仕事』『宿での仕事は今はないから大丈夫』ってことだよな?



「ん~どうするかな」

「なんだいマヤ。ユーキとお出かけしたいのかい?」

「ん」



 悩む俺を無視して、パーラさんの問いに頷いて肯定するマヤ。



「じゃあ行っといで。ユーキ、マヤを頼んだよ」



 そう言い残してパーラさんは奥の従業員スペースに引っ込んでしまう。

 ロイさんはロイさんで『ユー坊・・・マヤに何かあったら・・・承知しねぇからな?』と、厨房から持ち出したと思われる馬鹿デカイ包丁?で何かの肉を骨ごと断ち切っていた。



「・・・じゃあ、行くか?」

「んっ」



 エプロンだけ外し、マヤは今度は俺の右手を取って宿の外へと歩き出した。

 扉を開けると『こっち』と言ってグイグイと、その小さな体に似合わない力で引っ張っていく。

 さすが竜人だ。



 ちなみに、宿の入口の扉は既に直ってる。

 ホールインワンした男が『ワタシガコワシタノデスカラ、ナオスノハアタリマエデス』と言って直していった。

 ・・・・・・ちょっと危ない目をしながら平坦な声で言っていたのだが、連れて行かれた後、あの男に何があったのだろう?



 ~~~~~



「それじゃあよろしくお願いします」

「お願い、しま、す」

「はい、承りました。それでは失礼します」



 無事に自分の手紙とロイさんの手紙を行商人へと渡し終わった。

 商人は出発の準備のため足早に立ち去っていった。



「さて。もう用事は終わったんだけど」

「・・・(ジー)」

「ちょっと街をブラブラしようかと思うんだ。どうかな?」

「んっ」



 俺のその言葉を待っていたとばかりに頷くマヤ。

 あの無言の視線はやっぱりそういう訴えだったか。



「じゃあ行こうか」

「ん」


 俺は再びマヤと手を繋いで街の散策を開始した。



 ~~~~~



「こんちわ」

「はいよ! いらっしゃ―――って、あん時のあんちゃんじゃねぇか」



 俺とマヤがやってきたのは、ソプレゼについて最初にお世話になった串焼き屋だ。

 三日月に着いてからまだ来てなかったので、今回丁度いいと思いやって来た。



「それにマヤちゃんも。なんだ~、デートか」

「ははは、まぁそんなもんかな」

「・・・っ」



 親父と俺の会話を聞いて、マヤは頬をほんのりと赤く染めた。

 手を繋ぐ力も少し強くなったようだ。



「マヤちゃんみたいな可愛い子となんて羨ましいね~・・・ところでよ、どうだった?」

「? どうって?」

「何だよ忘れたのか? 三日月の女将だよ! 俺の言った通り美人だったろ!」

「あー、そんなこと言ってたっけ」



 確かこの親父に三日月を勧められた時に『女将パーラさんが美人だ!』って力説された。

 別にそこがポイントで三日月を選んだわけではないけどな。



「で、美人だったろ」

「そ、う、です・・・ね!」

「だろう! ははははっ!」



 親父は俺の肩を叩きながら、さらに女将パーラさんの良さを俺に教えようとしてくる。

 話をするのはいいけど、夢中になりすぎて串焼きが炭焼きになってきてるぞ。

 そして――――、



「(い、言えない。今更『美人とは思わなかった』なんてっ)」



 パーラさんの容姿を説明すると、一言でまとめるなら『女性力士』だ。

 恰幅のいい体に、プリプリなお肌。

 初めて会った時に杖を使っていたのだが、パーラさん曰く『歳だから』と言っていたけど・・・実は体重が原因なのではと俺は密かに思っていたり思ってなかったり・・・。



 俺が今言えることはただ一つ。

 この親父はおそらく『デブ専』というやつである。



「(それを否定するつもりは全くないけど、俺には理解出来ない・・・)」

「―――でよ! その時の女将と来たら―――ん? どうしたマヤちゃん?」



 親父のマシンガントークを右の耳から左の耳に流し聞きしていたら、マヤが唐突に『はい』という感じに挙手した。



「なんだマヤ?」

「・・・これ、火事?」

「へ?」



 マヤが指さした先にある、串焼きスペース上の串達は火達磨になっていた。

(ちなみに屋台は向かって左半分が調理と会計スペースで、右半分が串焼きスペースとなっている)



「うおわぁぁぁ!?」

「親父落ち着け! 消せ! 早く消せ!」

「お、おう! って、あれ!? 瓶に水がねぇ!」



 常備していたはずの水瓶が空っぽで、親父は屋台の後ろに置かれた荷物から追加分の水を取り出そうとしている。

 が、慌てているため上手く取り出せないようだ。



「もう俺がやる! ふっ!」



 俺は親父を待つことなく、水属性魔法で火達磨になった串を消火する。

 手でピストルの形を作って、人差し指から水鉄砲のようにして。



 ほどなくして全ての消火は終わった。

 だが、串焼きの火種まで消してしまったのは悪かったかな。



「おぉ!? あんちゃん水属性の魔法が使えたのかっ。ありがとう!」

「いや、実は火種まで消しちゃったんだ。すまない」

「気にするな。屋台が燃えちまうよりいいさ」



 だがこうもビシャビシャでは、もう一度火を付けるのも不可能だろう。

 俺は今度は人差し指から極小火炎放射器のように火属性魔法を使って、強引かつ時間短縮で乾かしにかかる。



「今度は火属性!? あんちゃん、いったいいくつ属性が使えるんだよ」

「全属性だよ」

「がはははっ! 面白ぇ冗談だな!」



 親父は俺の言ったことを冗談だと思ったようだ。

 こういった反応は、グインタビューで知り合った人で経験済みだったので、特に気にすることもない。

 隠すつもりもないが、何としてでも知って欲しいって訳でもないからな。



 そうこうしているうちに串焼きスペースの乾燥は完了した。

 ついでにそのまま魔法で火を付けてやる。

 これで元通りだ。



『ほう? あの男、面白い魔力を持っているな』



 その時、俺もマヤも親父も気が付かなかった。

 広場の片隅からこちらを観察するかのように、ジッと見ている騎士風の身なりをした一人の女性に。



『これは師匠に伝えるべきかな?』



 その人物は身を翻すと、三日月とは反対に位置する『1の門』方向へと歩いて行く。

 その口元は何だか楽しそうに笑っていた。





お読み頂きありがとうございます!


『マヤとお出掛け』はまだ続きます。

最後に出てきた女性が新たなヒロインとなるのか!?


【次回】マヤと街中散策・・・だったけど!?


※誤字修正10/7



『新作について』

どんな物語かというと、

―――最終戦争『ラグナレク』に備え、天界の『ヴァルハラ』に軍神オーディンが集めている、英雄の魂を集めた神の軍団『エインヘルヤル』

そこに英雄として加わった主人公(故人)。

だが、いつまで経ってもラグナレクは起こらず、軍団員が増えるばかりで、もう定員一杯!

そこで、英雄として格が低い順に『リストラ』することになり、主人公はリスト入り。

リストラされた主人公は天界から下界へと降り立ち、第二の人生を謳歌する!―――


(ファンタジー、シリアス少なめ、日常系、冒険有り、学園有り、主人公は半神、変則不老不死、非無敵)


上記のようなものを予定。(以前活動報告に書いた物から少し弄ってます)


今少しずつ書き溜めしています。

一定以上溜まったら投降しようと考えてます。


そして誠に申し訳ありませんが、新作と同時進行での執筆になるため、この作品の更新頻度が亀さんになるかも・・・申し訳ありません。


新作投稿日は未定ですが、決まったら『活動報告』とこの作品の『後書き』にてお伝えしたいと思います。



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