表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/92

10万パワーな女の子

タイトルの元ネタが分かる人はいるかな?

 

 

 

 あっちへフラフラ、こっちへフラフラ寄り道しつつ、屋台の親父に教えてもらった宿を目指す。

 もう2の門の広場を過ぎて、広い道を歩いている。



「う~ん、広場からどのくらいの距離か聞くの忘れたな」



『青い看板に三日月』が書かれた看板という目印だけしか教えてもらってなかった。



「もしもの場合は誰かに聞けばいいか」



 幸いにもこの道には多くの人がいる。

 商店街やアーケードと言った雰囲気だ。

 そこかしこから、店員の威勢の良い呼び込み、奥様方の井戸端会議の声、飲み屋から『がっかかかっ』と独特な男の笑い声が聞こえてくる。



「(キョロキョロ)―――おっ、これじゃないかな」



 暫く歩くと『これじゃないかな?』と思われる建物を見つけた。



「うん、間違いない。親父の言ってたのと同じ看板だし、三日月って書いてある」



 ようやくたどり着いた。

 グインタビューを出て丸一日経っていないとは言え、初めての野宿と旅(と言って良いか分からないが)で体はもとより精神的にも疲れた。

 早くフカフカのベッドで横になりたい。



「ではさっそく」



 建物の入口にある扉を開けようと手を伸ばす。

 伸ばした手が木製の扉に触れようとした、その時―――、



「―――ぉぉぁぁああっ!?」

「へ? ぶぅっ!?」



 扉の向こうから声が聞こえたと思ったら、勢いよく扉が中から開いて、俺は吹き飛ばされてしまった。



 ゴロゴロゴロ!



 そのまま道の中央程まで後回りで転がる。

 俺、後回りなんかしたの小学校時代のマット運動以来じゃないか?



 一緒に吹っ飛ばされた扉と、男の人?が、俺よりも後ろの方に転がっているのが視界の端に写る。

 この男が宿の中から飛び出してきて、俺はそれに巻き込まれたとみる。

 不運としか言いようがない。



「・・・お客でも、礼儀は、必要」



 ふと、舌足らずな声が聞こえた。

 ちょっとクラクラする頭を抑えつつ上半身を起こし、扉が吹っ飛び風通しが良くなった宿の入口を見る。

 そこには女の子(・・・)が一人立っていた。



 少し紫色に見える腰程まである黒髪。

 透き通った海のような綺麗な青い瞳。

 そして、嫌でも目に止る『頭から生えた二本の短い角』と、着ている青いワンピース(幼稚園や小学校の制服みたいに見える)の下から伸びる『尻尾』。



 間違いない。

 女の子は俺がこの世界で初めて見る『竜人(・・)』だった。



「? ・・・どう、したの?」



 その女の子は俺の方を見て首を『コテン』と傾げて聞いてくる。

 


「あ~、扉を開けようとしたら、いきなり開いて吹っ飛ばされたんだよ」

「そう・・・ごめん、なさい」



 どうやらこの女の子はあまり喋らない子のようだ。

 一応俺の目を見て話してくれているが、会話が続かない。

 というか、何で謝るんだ?

 


「うぅ、くそっ、この餓鬼がぁ!」



 俺の背後からドスの効いた男の声がする。

 どうやらさっき飛ばされてきた男のようだが、その顔はどう見ても酔っ払っている顔だった。

 ふと近くで『トン』と地面を踏むような音がしたかと思うと、女の子が俺の隣へとやって来ていた。



「ケガ、ない?」

「え? んと、大丈夫だぞ。体は人一倍丈夫なんだ」

「そう。・・・ん」



 俺は無事をアピールするため立ち上がり、思わず女の子の頭を撫でてしまう。

 女の子の身長は大体140ほどで、ちょうどいい高さにあったからついやってしまった。



「あ、ゴメンな。いきなり撫でたりなんかしちゃって」

「ん、平気・・・(ジー)」



 手を退かすと女の子は『ジー』と穴が空くのではないかと言うくらい、俺のことを見てくる。

 ・・・・・・もしかすると。



「・・・(ナデナデナデ)」

「・・・(フリフリ)」

「(おー、尻尾が揺れてる。まるで犬みたいだな)」



 心なしか目も細めているように思う。

 どうやら俺の『頭ナデナデ』を気に入ってくれたようだ。



「テメェらぁっ、シカトこいてんじゃねぇぞ!」



 男は顔を真っ赤にして、さっきより大きな声で怒鳴る。

 『テメェら』と、いつの間にか俺まで対象に入っていた。



「思い知らせてやるっ」



 男は懐から包丁くらいの短剣を取り出して『あなたを殺して私も死ぬ!』みたいに、腰溜めに構えて突っ込んできた。



「あぶ―――」



「マヤ。やっておしまい」

「ん」



 ドンッ!



「ごふぁっ!?」

「―――ない、ぞって、あれ?」



『危ないぞ!』と言おうとしたら、女の子の小さな拳が酔っ払いの男の腹にめり込んでいた。

 その威力は信じられないほど強く、男は通りを挟んだ向かい側まで『水平』にすっ飛んでいった。

 しかも狙いすましたかのように、建物と建物の間にあった丸い隙間に入った。



「・・・ホールインワン」

「? なに?」



 多分アレは煙突なのかな?

 土管はこの世界にないと思うし、何より隣接する建物が『湯屋(銭湯)』で現在建設中だったからおそらくそうだろう。

 俺の言葉が理解出来なくて、女の子はまた首を傾げていた。

 その背後から一人近づいて来る人物がいた。



「マヤ、ご苦労様だったね」

「ん、大丈夫」



 竜人の女の子を『マヤ』と呼んで、先程の俺のように頭を撫でているおばさん。

 足が悪いのか杖をついている。



「えっと、失礼ですがあなたは?」

「あんたは冒険者かい? 私はこの宿『三日月』の女将、パーラだよ」

「・・・私の、ご主人様」

「あ、そうですか・・・・・・? 『ご主人様』?」

「マヤ、それは止めなって言ってるだろう。私のことはお婆ちゃん(・・・・・)で良いんだよ」

「・・・私は、パーラの、奴隷。だから、ご主人様」

「まったく、この子は」



 今度は先程よりも強く『ガシガシ』と竜人―――マヤの頭をなでるパーラさん。



「(初めて竜人を見たと思ったら、奴隷でもあったってか)」



 頭を撫でられているマヤの右手の甲には、モリア神父仕込みの知識で知っていた、『奴隷』を示す焼き印が押されているのに今気付く俺だった。




今回『竜人』が初登場、さらにその竜人は『奴隷』でした。

※この作品で出てくる竜人は、竜やドラゴン形態に変身することは出来ません!


タイトルの元ネタは、本当は『パワー』ではなく『馬力』にしようとも思ったのですが、さすがにどうかと考え直してこうなりました(汗)



【次回】竜人の女の子に続き、重要人物初登場!


※一部修正10/1

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ