新しい街に到着
新章『ソプレゼの街』に入りました!
「着いたぞ!」
俺は街の入口、門を視界に捕らえて思わず声を上げる。
空はちょっと赤みがかってきて、夕方よりちょっと前と行ったところか。
「普通なら歩いて三日なのに、一日掛からずに着いたな」
改めてチートな自分の魔力を実感した。
「ん? そこの者! 止まれ!」
門に近づくと、銀色に輝く鎧を着た男二人が槍を構えて停止を促してくる。
俺は素直に指示に従い、さらに両手を上げて『降参』のポーズを取る。
グインタビューでは自警団が門番をしていたが、ソプレゼは騎士がしているのかな?
「すみません。俺は旅人でして、ソプレゼに入りたいんですが」
「しばし待て」
男の内一人が俺に近寄り、まずは刀と杖、そしてリュックを取り上げる。
取り上げると行っても乱暴ではなかったが。
どうやら荷物検査のようだ。
次いでボディタッチで身体検査もしてくる。
・・・・・・まさかアソコまで触られるとは思わなかったが・・・。
「ふむ、怪しい物や危険な物は持っていないようだな。協力感謝する」
「いえいえ」
武器と荷物を返してもらう。
「だが、身分を証明する物はなかったようだが? どこかのギルドや商会には属していないのか」
「えぇ、どこにも」
どうやら街への出入りは身分証がいるようだ。
グインタビューでは最初フェルの手引きと、オリオさんの機転で入れたからな。
今やギルドにも登録していない俺。
この場合どうすれば良いんだろう?
「手数料を払ってもらうことになるが、街への通行証を発行出来るが? いかがする」
「あ、じゃあお願いします」
「では小銀貨五枚だ(五千円相当)」
俺は財布代わりの袋から銀貨を取り出し手渡す。
ちなみにだが、俺は全財産を財布とは別の袋に入れ持ち運んでいる。
ギルドに入っていれば、銀行のように預けておけるのだが・・・・・・しかたない。
「確かに。ではこのプレートが通行証だ。街を去る際返却は無用だ。だが、もし街を去る際に返却すると、小銀貨三枚を返すぞ」
「そうなんですか? わかりました」
街に入る準備も整い、閉じていた門が人一人分開く。
俺は門番二人に挨拶をして街の中へと入った。
「おぉ~、これがソプレゼの街か」
まず目に入ってくるのは、石畳で整地された噴水のある広場だ。
グインタビューは整地こそされていたが、地面が全て剥き出しだったので新鮮な感じがする。
更に建物も違っていた。
グインタビューは森の近くという立地もあり、木造建築ばかりだったが、ソプレゼではレンガ造りの家が大半だ。
「(グインタビューは西部劇の街、ソプレゼは昔のヨーロッパって印象かな)」
我ながら的確な例えをしたと思う。
「それにしてもでっかい街だな、人もグインタビューの何倍いるんだろう?」
「おや、あんちゃん旅人さんかい? どうだい! この串焼き美味しいぞ~」
噴水広場(仮名)でお上りさんのごとく『ほえぇ』としていたら、近くの出店の親父さんに声を掛けられた。
「う~ん、確かに良い匂いだな・・・一本ちょうだい」
「まいど! 小銅貨二枚(二百円相当)だよ」
「はいよ」
お金を払って、串焼きをもらう。
「これ何の肉?」
「ニードルラビットの肉だよ。初めて食うかい?」
「串焼きでは初めてだな」
自分で狩りをしたこともあるし、ミィルさんの『安らぎの宿』で肉を食べたこともある。
その時は唐揚げだったが、柔らかく、肉汁があふれ出し、ほのかに甘く感じた・・・・・・おっと、思い出したら口の中に唾が。
「(ぱく、もぐもぐ)うん! うまいな!」
「そいつはどうも」
照り焼きに近いだろうか?
味は茶色いタレの印象よりも薄く感じるが、これはこれで美味い。
「あんちゃんはソプレゼには初めて来たのかい?」
「あぁ、そうなんだよ。それにしてもでっかい街だよな。人も多いし、今までで一番の規模だな」
実際にはグインタビューの一つしか街を知らないが。
「そりゃそうさ。なんせこの街は、王都に次いで二番目にでっかい街だからな」
「そうなの? なるほどな~」
屋台の親父はこの街について丁寧に教えてくれた。
◇◇◇◇◇
『ソプレゼの街』
王都に次ぐ規模の街。
この国『セフィニア』の貿易拠点と言える街で、規模こそ王都に次いでいるが、人口は王都より多いとされている。(住民+旅人や商人など外からやって来た人)
街の周囲には見上げるほどの高さの城壁が張り巡らされていて、五角形の形を描いている。
五角の頂点部分に門があり、それぞれ『1~5の門』と呼ばれている。(一番北にある門が1の門。俺が通った門は『3の門』で、今いる広場は『3の門前広場』と言うらしい)
有事の際、または王族に何かあった時の緊急避難先になっているという事もあり、この街の治安維持には自警団ではなく、王都のように全て騎士が取り締まっている。
今までに『緊急事態』で王族がこの街を訪れたことはなく、年に数回視察として訪れるのみ。
ここを治めている領主は『ナダン・ホーネット伯爵』といい、数多くの良政を行い、また平民や貴族といった身分に固執しないため、平民からの人気は高い。
だが、やはり貴族の中には身分にこだわる者もおり、そういった輩からは煙たがられている。
現王から信頼されており、それが後ろ盾となっているため不満のある貴族もおいそれと手が出せない。
総じて『住みやすい良い街』と言える。
◇◇◇◇◇
「(なるほど、これだけの街なら俺一人を捜し出すのも大変そうだな)」
ガーフィさんの勧めとは言え、最初はこんな近くの街で大丈夫かな、と思っていたがこの様子なら目立たなければまず大丈夫だと思う。
俺以外にもちらほらと黒髪っぽい人を見かけたし、手配がこの街まで回っても平気そうだ。
「へぇ~、勉強になったよ。ありがとう」
「いやぁ、どうってことねぇよ」
説明を聞いている内にいつの間にか串焼きを食べ終えていた。
俺は串焼きの串を屋台の横にあったゴミ箱に捨て、新しくもう一本購入した。
「あとついでと言っちゃ何だけど、どこかオススメの宿ってない?」
「ん~、なら2の門の方にある『三日月』って宿はどうだい? 宿代は他と変わらないが、建物も綺麗だし、飯も美味くて、なんと言っても女将が美人だぞ!」
親父は鼻息を荒げながら身を乗り出してくる。
「そ、そうか。じゃあそこに行ってみようかな」
「おう! そうしろそうしろっ。道順はこの城壁に沿って歩いて、広場に出たら一番広い道を街の中心目指して歩け。途中で『青い背景にに三日月』が書かれた看板があるからよ。そこが『宿屋三日月』だ」
親父は指を差して城壁沿いの道を指さす。
2の門はあっちの方という事だろう。
「わかったよ。ありがとな」
別れ際にいろいろ教えてくれたチップとして、小銀貨を三枚渡して親父と別れる。
『また食いに来いよ』と手を振ってくれたので、こちらも振り返す。
「さてと、観光しながら行きますか」
城壁沿いの道にも屋台が出ていたり、店があったり、中には大道芸をしている人もいる。
完全にお上りさんの観光という感じで俺は歩き出した。
お読み頂きありがとうございます^^
評価・お気に入り登録して頂けたら嬉しいです!
お金の価値を()で書いてみました。
この方が分かりやすいかと思いまして。
この小説のタグに『ハーレム』とありますが、これは『主人公が多くの女性を侍らせる』のではなく、『気が付くと女性から好感を持たれていて、身近にいる』という意味合いのハーレムです。
(酒池肉林・・・には今のところならない予定。ただ、今後の展開では×××もあるかも? プロットも何も決めず書いているので全て未定です><;)
【次回】新しい街、主人公は強烈な出会いをする
※誤字訂正9/27




