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Fantapia ~転移チートが異世界を行く~  作者: アズマ
グインタビューの街
34/92

さらばグインタビュー

アンケートにご協力いただき、誠にありがとうございます^^

(アンケート内容は32話『指名手配された』の後書きに記載しています)


※アンケートの回答は本日9/22の23:59までで締め切らせていただきます。

 

 

 

「・・・よし」


 少しだけ扉を開けて、通りの様子を見る。

 どうやら通行人も、見回りの兵士もいないようだ。



 時刻は・・・時計が分からないから不明だが、月あかりが照らす夜になった。

 もう街の人々は大半が夢の中で、極少人数だけが飲み屋でまだ飲んでいる。



 俺は昼間の内に宿を引き払い、ガーフィさんが用意してくれた家―――地下通路の出入り口がある家に移っていた。

 『安らぎの宿』のミィルさんにはお世話になった。

 今度戻ってきたときには何かお土産でも持っていこうかな。



「よっと、おっとっとっ。やっぱり重いな~」



 用意しておいた荷物を詰め込んだリュックを背負う。

 俺一人分の荷物だが、三日分の旅用荷物と私物が入っているので凄い量になった。



「ま、身体強化すればいいけど」



 もうお馴染みとなった身体強化の魔法を使う。

 さっきまでバランスを崩すくらい重かった荷物が、今は背負ったまま反復横跳び出来るほど軽くなった。



「さてと、行きますか」



 扉を人一人分通れるだけ開けて、その隙間から滑り込むように外に出―――



「ぐえぇ!?」



 ―――れなかった。

 荷物のことを考えてなくてつっかえた・・・・・・。



 まるでコントみたいな事をしてしまって恥ずかしい!

 もう一度誰にも見られていなかったか確認して、改めて荷物も通れるくらい(・・・・・・・・・)扉を開けて外に出た。




 ~~~~~




「待ってましたよ、ユーキさん」

「トールか」



 門まで誰にも見つからずに到着出来た。

 そこには手筈通り、自警団のトールが待ち構えていた。



「すまないな、こんな茶番に付き合わせて」

「いえいえ、お気になさらずに」



 『自警団の人に、黒髪の男が街の外へ出て行った』と証言してもらう、という計画のため、トールはここに居るのだ。

 約束通り、ガーフィさんが手を回してくれた。



「短い間だったが、楽しかったよ」

「それじゃあまるで『一生の別れ』みたいじゃないですか。縁起でもない」

「ははっ、そうだな」



 本当はすぐにでも門を抜けて、街道沿いに進んでいくべきだが、トールと軽口を交わしてしまう。

 


「さぁ、早く。後のことは自警団とギルドに任せて下さい」

「あぁ、頼んだぞ」



 俺は笑みを浮かべながら、同じように笑みを浮かべるトールの肩を『ポン』と叩く。



「じゃあ、俺は行く―――」

「「待ってっ」」

「? フェルに、マギー?」



 さぁ門を出よう、というタイミングでフェルとマギーが姿を現した。

 トールにアイコンタクトで『どういうこと?』と聞いたが『知らない』と首を横に振られた。



「どうしたんだ二人とも? あ、俺何か忘れ物でもしたのか」

「いえ、違うわユーキさん」

「そうよ、ただ『見送り』に来ただけよ」



 見送りはしなくていいって言ったんだがな。

 あんまり大勢でいたら目立ちそうだし。



「言いたいことは分かるわ。しなくていいって言われてたけど・・・やっぱり私たちはしたかったの」

「私たちはパーティ―――仲間だからね」

「二人とも・・・」



 トールは空気を察して、少し離れた場所に移動していた。

 そして俺たちの代わりに周囲の警戒をしてくれている。



「・・・それで、ユーキに渡したい物があるの」

「渡したい物?」

「えぇ、コレ(・・)よ」



 フェルは肩から提げていたバッグから、一本の棒を取り出す。



「これは、フェルが使ってる『杖』じゃないか」



 そう、それはよくフェルが使っていた、マラソンのバトン程の長さの杖だった。

 初めて出会った時や、一緒に依頼を受けた時も使っていたのでよく覚えてる。



「ユーキ、ギルド長から『剣術を身につけるまでその剣は抜くな』って言われたんでしょ」

「うっ、よく知ってるな」



 実は刀を研ぎ直してもらった時、ガーフィさんに説教され『その剣にふさわしい使い手になれ』とかなんとか言われた。

 緊急時は躊躇なく抜くつもりだが、俺もちゃんとした剣術は覚えたいと思う。

 なので『刀使用禁止』は遵守(じゅんしゅ)するつもりはないが『使い手になれ』は守ろうと考えている。 



「だから、これで魔法を使うようにしなさいよ」

「俺は杖なしでも使えるぞ」

「ユーキさん、杖を使うと魔法の精度や威力が上がり、制御しやすくなるんですよ」

「へぇ~」



 そんな効果があったのか。

 凄いな杖。



「でもいいのか? これ愛用品だろ」

「べ、別に大丈夫よ! もう一本お揃―――予備! 予備があるから」

「そうか・・・なら、遠慮なくもらうぞ?」

「えぇ、はい」



 フェルから手渡された杖を握る。

 重さは見た目通り軽い。

 指揮棒とか、ドラムのスティックぽくも見える真っ白な杖だ。



「ありがとうな、フェル」

「ふふ、どう致しまして」



 俺はフェルにお礼を言い、腰のベルトに付いてるフック部分の穴に杖を差し込む。



「ユーキさん、あっちの通りで何かが光りました。多分兵士の鎧が月灯りで反射した光です。まだ遠いですが、なるべく早くっ」



 離れた場所で警戒していたトールが、小走りに近寄り小声で伝える。

 どうやらもうそろそろタイムリミットのようだ。



「もう時間がないみたいね」

「そうみたいだ」



 マギーが他の二人より一歩前に出て言う。



「どうせならもっと落ち着いた雰囲気が良かったけど・・・しかたないわよね」

「? マギー?」



 さらに一歩、二歩と前に出るマギー。

 俺とフェル、マギーは向かい合うように立っていたので、必然的に俺の目の前に歩み出る形になった。



「私からの贈り物よ」

「へ? んっ! んむー!?」

「「あぁっ!?」」



 マギーは俺の顔を両手で固定すると、キスをしてきた。

 唇と唇が『チョン』とくっつくのではなく、口を開けて俺の唇を『はむっ』っと覆うようなキスだ。



「んっ、っっん」

「$%”&@’!?」



 突然のことで体が動かない。

 俺はマギーにされるがまま、濃厚なキスをされていた。




「――ん、はぁ・・・これが贈り物よ。しばらく会えないから、ね」

「な、ななっ、な!?」

「「・・・・・・」」



 唇を舌でペロリとひと舐めする、頬を染め満足そうに微笑むマギー。

 俺は口が回らずオロオロし、残り二人は思考が停止していた。



「―――はっ、マギー!」

「ふふふっ、ごめんなさいフェル。でも、早い者勝ちよ」

「ううううっ」



 顔を真っ赤にしたフェルがマギーに詰めかかる。

 だが大人の余裕とでも言うのだろうか。

 マギーは悪びれることもしなかった。



「っ、ユーキ!」

「はいっ」



 今度は俺の方に詰めかかる。

 その両手は固く握りしめられて、白くなっている。



「グ、グーパンですか?」

「・・・・・・」



 無言で、だけど俺の目をずっと見ながらずんずん歩くフェル。

 そして、さっきのマギーと同じくらいの距離まで近づき―――、



「えいっ」



 と、小さなかけ声と共に『俺の頬にキスをした』。

 ・・・・・・・・・・・・え。



「フェ、フェル?」

「これはおまじないよ!」

「えっと」

「旅の幸運を祈るおまじない! おまじないだからね! わかった!? 分かったら返事!」

「イ、イエスマム!」



 とっさに敬礼してしまった。



「ふふ、頑張ったわねフェル。さ、ユーキさん。今度こそ早く。ちょっと騒ぎすぎましたわ」



 あれだけ大きな声で『あぁっ!?』やら『ななな!?』とか出していたのだ。

 トールが言っていた通りの方から『ガチャガチャ』と小さく聞こえてくる。



 その時トールはと言うと、地面に両手両膝を付くポーズを取っていた。

 例えるなら『orz』だ。



 マギーはいつも通りだが、フェルはまだ顔が赤い。

 月灯りの夜に見て取れるほどだから、きっと相当真っ赤っかなんだろうな。



「よ、よしっ、じゃあ行くよ。―――またな! 二人とも」



 ちょっとおかしな展開になったので気を取り直す。

 俺は二人に手を振り門の向こうへ、街の外へと駆けだした。

 身体強化のおかげでグングン門から離れていく。



 フェルとマギーは『気をつけてねぇー!』『幸運を祈っているわ』を手を振り替えして見送ってくれた。

 最初は見送りはいらないと言っていたが・・・・・・やっぱりしてもらって良かった。



 

 こうして俺はグインタビューを旅立った。

 近くにある街『ソプレゼ』を目指して。






 俺が完全に視界から消えた後、門までやって来た兵士が地面に伏すトールを見て『なにがあった!?』とフェル、マギーに聞いた。

 二人は『今外に出て行った、黒髪の男がなにかした』と答え、その結果、目が虚ろになっているトールは、しばらく診療所の厄介になることになるが、これはまた別の話だ。





最後までお読みいただきありがとうございます^^


評価・お気に入りをよろしくお願いいたします!



『ベルトについて』

多くの冒険者が使う、多機能ベルト。

ベルトと言ってもズボンに使う物ではなく、服の上から巻くある意味腹巻きのような物。

剣をぶら下げるためのフックがあったり、試験管や銃弾を差すような穴が空いてたり、ポケットが付いてたり、バックル部分にワイヤーが仕込んであったりといろんな機能が付いてます。



※前書き追記、加筆、誤字訂正9/22

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