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Fantapia ~転移チートが異世界を行く~  作者: アズマ
グインタビューの街
3/92

森から街へ

時間があったので筆がよく進みました。

 

 

 

「先ほどは大変申し訳ありませんでしたっ!」



 只今絶賛『DO・GE・ZA(土下座)』中の本郷悠紀(ほんごうゆうき)です。

 俺の前には腕を組んで仁王立ちしている女の子がいます。



「信じらんないっ、こんなところで、は、は裸になって! あまつさえ私に見せつけてっ」

「いやいや説明したでしょ!? あれは事故なんだって!」

「信じられるわけ無いでしょ! 違う世界から来た(・・・・・・・・)なんて!」



 俺は森の中でスッポンポンだった理由を女の子に話した。

 神様にも秘密にしろとは言われてなかったし、多分問題はないはずだ。



「でも本当なんだって。それにこれ(・・)だって見せただろ?」



 地球の物は一切持ってこれなかったので、唯一神様に出して貰った日本刀――刀を見せたのだが・・・・・・。



「だからそれはアースト剣じゃない。確かにこの国では珍しいけど、『ニホントー』とか『カタナ』なんて名前じゃないわよ」



 そうなのだ。

 実はこの世界に刀とほぼ同じ『アースト剣』という刀剣があったのだ。

 アーストという国が独自に作った剣だからアースト剣。

 名前の付け方まで日本刀と似ている。



「とにかく! アンタは怪しいから一緒に来て貰うわ。もし抵抗するなら―――」



 そういうと手に持っていた杖(杖と言ってもマラソンのバトン程しかない)を俺に向ける。

 その先端は赤く輝いていた。



「わかった、わかったから。大人しく君の言う事を聞くから、もう『魔法』は勘弁してくれ」

「ふんっ、まぁいいわ。剣は私が預かるから、アンタは他の荷物を持ちなさい」

「へいへい」



 そう。

 彼女は魔術師(・・・)だったのだ。

 最初に遭遇した時も、悲鳴を上げながら俺に向かって魔法で火炎弾を撃ってきた。

 裸の俺が必死に逃げて、叫びながら魔法を放つ女の子の絵図等(えずら)は端から見たら(さぞ)かし滑稽だっただろう。




 ~~~~~




「ほらさっさと歩きなさい」

「そう言うなら手と足の拘束を解いてくれよ」

「ダメに決まってるでしょ。誰がアンタみたいな変態を自由にするもんですか」

「・・・はぁ~」



 俺は現在両腕を後ろ手に縛られ、両足首を一本のロープで繋がれている。

『荷物どうやって持つんだよ』と言ったら『背負えばいいじゃない』と返された。

『小股歩きになって転びそう』と言ったら『私は転びそうじゃない』と返された。



 実際には引き千切れない訳ではないのだが、そんなことをしたら余計に話しが拗れそうだからやらない。

 なので俺は今、大きな袋をオンブしてチョコチョコ小股歩きで歩いてます。

 ―――あ、服はDO・GE・ZAの前にもうちゃんと着てるよ。



 

 ~~~~~




「なあ、そろそろ君の名前を教えてくれても良いんじゃないか」

「嫌よ」

「俺は教えただろ」

「アンタが勝手に言ったんでしょ」



 歩き続けて三時間くらい経っただろうか。

 途中で休憩を挟んだり、相変わらず小股歩きなので森を抜けるのにも時間が掛かる。

 女の子が言うには、もうすぐ街が見えてくるそうだ。



『アンタ』呼ばわりをやめて貰うために色々手を打ってみたのだが・・・。



「別に良いだろ名前くらい」

「変態に教える名前なんか持ってない」

「だからそれは、」

「はいはい、異世界からやって来たんでしょ? 詳しくは街に着いてから聞くから」



 こんな感じてとりつく島もない。

 しかたなく、もう何度目かわからない溜息を吐きつつ歩く。



「―――ん? なんだ」

「どうしたの。早く歩きなさい」

 


 なんだか誰かに見られているような感覚が頭の警鐘を鳴らす。

 気配、とでも言うのだろうか。

 これもなんとなくだが、魔力によって感覚が研ぎ澄まされたとかそんなチート感がする。



「何かいるみたいだ。でも何処にいるかが分からない」

「なに言ってるの。ご託は良いからさっさと―――」



「WOOOOON!」



 突然、犬の遠吠えに似た動物の鳴き声が木霊した。



「「―――OOOON」」



 それも一つや二つではなく複数もだ。

 森のあちこちに反響してどこから聞こえるのかは見当が付かない。



「まさかデスドッグ!? 何でこんな街の近くにっ!」

「デスドッグ? 魔物か?」

 


 ドッグと付くくらいだから犬の魔物なのだろう。

 そして、女の子が狼狽していることから、強い魔物かここには普段いない魔物なのであろう。



「デスドッグは一匹ならまだ良いけど、群れならキングボアと互角にやり合えるのよ! でも普段はお互いに警戒し合ってるから、森の奥から出てくることなんて無いのに」

「・・・・・・(汗)」



 やばい。

 心当たりがありすぎる。

 きっと俺が倒したキングボアが話に出てきたやつだろう。

 そして、俺が倒したことによりデスドッグ達が動き出した・・・と。



「(あれ? これって俺のせいだよな)」



 神様が用意したとは言え、俺が倒したことに変わりはないのだから。



 女の子の慌てている様子から、デスドッグは彼女にとって格上の相手なのだろう。

 でも俺は一人で、しかも二撃でデスドッグと互角のキングボア倒してるし・・・・・・よし。



「(ここはきちんと責任とりますか)」



 俺は手足を拘束していたロープを力任せに引きちぎった。



「ちょ、ちょっとアンタ! なにしてるの!」

「いや、そのデスドッグとやらを倒してこようかと思って」

「何考えてるの!? というかそのロープどうやって、それ魔法で強化されてたのに」

「多分楽勝だよ。ロープは無理やり力任せで」

「・・・・・・」



 何も言えず口をパクパクさせ、腰が抜けたかのように地べたに座ってしまった女の子。

 俺はその脇に袋に入った荷物を置き、女の子が持っていた刀を返して貰ってから、女の子の前に一人立った。



「―――どっか等でも掛かってこい!」



 そう言うやいなや、前後左右から合計四匹の犬っぽい魔物が飛びかかってきた。

 デスドッグはポニーくらいの大きさで、第三の目みたいに額にもうひとつ目があった。



「漠然と飛びかかってくるだけじゃだめだな!」



 俺はほぼ同時に仕掛けてきた四匹に対して、刀を横にして水平に突きだし、その場で駒のように回転した。

 結果『スパッ』や『スポーン』と言った風に、四匹の顔や首を切り裂いた。



「―――予想以上に弱かったな」



 先ほどの一撃で四匹全てが息絶えてしまった。

 首が飛んだヤツはいいとして、顔を斬ったやつも死んだのには驚いた。

 俺は刀を振って血振りしてから鞘へと戻す。



「さてと、大丈夫かい? 立てる?」

「ぇ?」

「ほら座ったままだと服が汚れるよ。さあ立って立って」

「ぁ」



 俺は女の子の手を引いて立たせてあげた。

 この世界に来て力が増しているという事もあるだろうが、女の子はまさに羽のように軽かった。



「な、楽勝だっただろう? それと―――はいこれ、預けるよ」

「・・・・・・」



 女の子は心ここにあらずといった感じに惚けており、刀も預けようとしたのだが受け取らない。



「もしも~し? 君? 大丈夫?」

「―――フェル」

「?」

「私の名前・・・フェルって言うの」

「そうか」



 名前を教えてくれた女の子――フェルは真っ直ぐに俺を見て聞いてきた。



「もう一度、あなた(・・・)の名前を聞いても良い?」

「もちろん」



 フェルは刀を押し返してきたので、俺はそれを腰に差して向き直る。



「俺の名前は本郷悠紀。悠紀と呼んでくれ」



 フェルに笑いながら自己紹介した。



「―――うん。ありがとう、ユーキ(・・・)



 フェルも俺に笑いかけてくれた。



 今度は二人で並んで街へと歩く。




 出会いは最悪だったけど、今となってはもう過去の話だ。




最後まで読んで頂きありがとうございました。


誤字脱字指摘、評価、感想お待ちしています。


※誤字修正9/8

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