追及は実力行使で【4】
おそらくあと一話か二話でこの戦闘も終わります。
※注意※
今回『グロテスク』に当たると思われるシーンがあります。
仮面の人は手にしたネックレス―――魔呪具をジョウン父に向ける。
「な、なんのつもりだ。私ではなくあいつらに――」
「もうこの街に留まる理由がなくなりました。なのでお暇させて頂きます」
「なに?」
二人の会話をフェルと一緒に外野から聞く。
「つきましては、自分がここに居たことを隠さなければいけません。ですので、あなた方には死んで頂きます」
「よせ! やめろ!」
ジョウン父が仮面の人に駆け寄るが、それよりも早く魔呪具がブラブラと振り子のように振られる。
「ぐ、が、ぎぃ!」
ジョウン父は頭を抱えて倒れる。
額には脂汗が浮かび、歯が割れそうなくらい強く噛み締めた口の隙間からよだれが溢れてくる。
「さて、君たち二人も片付けないとね」
振り返って、俺たちの方を見る仮面の人。
「フェル、俺があいつを引きつける。その間に逃げろ」
「いやよ、私も―――」
「いいから! 言う事を聞け!」
「っ!?」
フェルは魔呪具対策をしていない。
ここに居ては危険なだけだと判断し、無理矢理にでもこの場を離れさせたかった。
「フェルには悪いが、足手まといだ。それより、街に行って救援を呼んできてくれ」
仮面の人がゆっくり近づいてくる。
「いけ! フェルっ」
「―――くっ」
「おやおや、逃がしませんよ」
「させるかっ」
駆けだしたフェルを見る仮面の人に、俺は刀を振るう。
フェルにちょっかいは出させない!
「おっと、危ないですね。雷魔法ですか。それに触ったら危なそうですね」
「フェルには手出しさせない。俺が相手だ」
「ふむ、仕方ないですね」
仮面の男の頭上に、白い魔方陣が出現する。
最初は天使の輪くらいの大きさだったが、数秒後には巨大化し、最後は消えてなくなった。
「今この屋敷全体に結界を張りました。中から出ることも、外から入ることも出来ません」
どうやら仮面の人はフェルをすんなり逃がす気はないようだ。
嘘か本当かは分からないが、ここで嘘を言っても何にもならないので本当なのだろう。
「ぐ、うぅおおWOOO!」
ジョウン父が突然叫んだ。
いや、叫んだと言うより『咆哮』と言った方がいいかもしれない。
体からは炎が噴きだし、まるで焼身自殺をしているかのようにも見える。
だが、火だるまになりながらも平然としている。
「どうやら効果が発動したようですね。私はあの少女を追うとしましょう。この場にいてはとばっちりを受けてしまいますからね」
「待て!」
俺の制止を振り切り、入口ではなく壁を円状にくりぬいて外へと躍り出る仮面の人。
後を追おうとしたが、炎人と化しているジョウン父が行く手を遮る。
「SHAAAA!」
「ちっ、邪魔だ!」
火には水を、ということで水魔法の水弾を作り出す。
「くらえっ」
「GOAAA!」
もはや人語を解さないジョウン父は、体に水弾が当たるがダメージは殆どないようだ。
ただ、水弾自体が当たるのを嫌がってか、俺から離れようとする。
「ち、ちち、うえ?」
移動した先には呆然と目の前の炎人を見るジョウンが壁際に座り込んでいた。
その声に反応したジョウン父はジョウンに近寄る。
「父う―――」
「AAAAAA!」
ブォン―――グチュッ! ペキッベキッ!―――
ジョウンは自らの親の手でこの世を去った。
振りかぶられた拳は、ジョウンの頭頂部から胴体中程までを貫いて止った。
ジョウンの体に、ジョウン父の二の腕中程までが埋まっている。
普通なら考えられない威力だが、魔呪具による効果だろう。
腕が引き抜かれると、支えを失ったジョウンの体は横に倒れた。
引き抜かれた腕には血の一滴も付いていない。
付着してもすぐに炎によって蒸発しているからだ。
だが、今まで嗅いだことのない不快な臭いは部屋に漂ってくる。
「OOOAAAA!」
「手当たり次第かっ、本当に魔呪具はやっかいな代物だな」
もうこれ以上コイツを暴れさせるつもりはない。
俺は人工魔物とやり合ったときよりも強い魔法を使うことにした。
「せめてもの情けだ。一瞬で終わらせてやる!」
まずは足を止めるため、入口の向こうに転がっている無数の剣を雷魔法で引き寄せる。
それを引き寄せた勢いのまま、ジョウン父の手足目掛け射出し、壁へと縫い付ける。
「NUGAA!?」
「まだだっ」
拘束を解こうともがいているウチに、円錐状の巨大な氷塊を作り出す。
その大きさはジョウン父の胴体より少し太いくらい。
「あいつを早く追わないといけないからな。とっとと逝け!」
「GAAA!」
ドズンッ!―――
氷塊はジョウン父の胸元から首までに大きな風穴を開けた。
首は床に落ち、両手は串刺しにした剣を支えに壁にぶら下がる。
残された下半身も今崩れ落ちた。
「―――ん?」
一応こういった物にありがちな『再生』『復活』を警戒していたが、その必要はなかったようだ。
まず床に落ちていた首が黒い炭のようになり、バラバラと崩れた。
次に手、下半身と同じように崩れ、最後には黒く汚れた剣が残された。
「終わり、か。早く追わないと」
最後に部屋の惨状を見渡し、仮面の人が開けた壁の穴から外へ飛び出す。
「・・・多分あの門だよな」
フェルが外へ行こうとするならあの門を目指しただろう。
そして、フェルを追った仮面の人も恐らく・・・・・・。
俺は身体強化の魔法を掛け直し、あの門を目指して駆けだした。
最後までお読み下さってありがとうございます。
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ちょっと『グロ』っぽいシーンを書いてみました。
ですが、作者自身がグロやホラーは得意ではないので『正直これどうなの?』と悩んでます。
次回、仮面の人と戦います!
※誤字修正9/17




