幕間劇 ~囚われのフェル~
幕間劇です。
ちょっとあっさり目かな?
マギーと買い物に行こうと家を出て、突然複数の男達に囲まれた。
全員頭から足まですっぽり隠れる長いローブを着ていた。
「なに、あんた達」
「・・・・・・」
私の問いに答えるつもりが無いのか、無言で私たちを囲み出す。
だが、今の時期に襲ってくる連中の心当たりなんて一つしかない。
「(1、2、3・・・全部で7人か)」
マギーと二人ならやってやれない人数ではない。
どうやらローブの盛り上がりを見るに、下は武装しているようだが魔法が使える私たちなら問題無い。
「おい、三人ほど周囲を監視しろ」
『はっ』
一人がそう言うと、他の三人が道の向こうへと走っていく。
恐らく、邪魔者が入らないように見張るのだろう。
「舐められたものね、私たちをたった四人で相手しようだなんて」
「・・・フェル、油断は禁物よ」
マギーは既に臨戦態勢といった具合に、魔力が込められた指輪を構える。
男達はやはり武器を持っていた。
ローブの中から揃いの剣を取り出す。
「・・・(スッ)」
「いつでも来なさいよ」
先ほど命令した男が片手をゆっくりと上げる。
あれ下ろされたら襲いかかる合図だろう。
その場の全員が身構えた――――――その時。
「うおぉぉぉぉ! フェルーーー!」
『!?』
「ガンス!?」
突然ガンスが私たちと男達の間に割って入った。
手に持った斧を手近な男に振り下ろすが、悠々と躱されてしまう。
「ちっ、外したか」
「ガンス! どうしてアンタがいるのよ」
「ギルドの護衛連中と一緒に見張ってたんだよ。護衛のやつらは走っていった三人の方へ行ったぜ」
「フェル、この人は?」
ギルドから護衛が出されていたのは知っていたけど、ガンスもいたのは初めて知った。
ガンスはグインタビューでは上位の冒険者だから、納得と言えば納得だけど。
「俺はガンスってんだ。そっちは兄貴の仲間になったエルフさんだろ」
「兄貴?」
「こいつユーキのことを兄貴って言ってるのよ」
「そう、私はマギーよ。私のことは・・・そうね、姐御とでも呼んでもらおうかしら」
「「姐御?」」
「だって私はユーキのパートナーだもの」
マギーは左手薬指の指輪を見せながら言う。
ガンスは『そうなんですかい!? 分かりました姐御っ』なんて言って疑いもしない。
「ちょっとマギー! そういう冗談は―――」
「っ、来るぞ!」
突然の乱入者に驚いていた男達だが、体勢を立て直して襲いかかってきた。
「うおらっ、らぁ!」
「(スッ)・・・(スッ)・・・」
ガンスは斧を振るって迎撃する。
だがその全てを避けられる。
「マギーっやるわよ」
「えぇ」
私とマギーは魔法を放つ用意をする。
私は隠し持っていた小さな杖を、マギーは指輪を構える。
「おい。例の物を」
「はっ」
魔法で狙われているというのに、男は慌てもせず隣にいた男に何かを取り出させる。
出された物はネックレスのような物だった。
「? なにあれ」
「まさか!? あれは―――うっ!」
「マギー!?」
突然マギーが倒れた。
苦しそうに呻いていたが、やがて気を失ってしまったようだ。
「マギー! マギー! しっかりしてっ」
「ぐあぁっ」
「!? ガンス!」
マギーが倒れているのに気を取られていると、ガンスが吹き飛ばされてきた。
その体は傷だらけで、マギーと同じく気を失ってしまった。
「・・・お待たせしました。他の護衛らしき者たちも片付けました」
「わかった。――連れて行け」
「やめなさいよ! この―――んっ」
離れていた三人も戻ってきて、私は口に布を押しつけられた。
布は甘い匂いがして、その匂いを嗅いでいたら意識が遠のいてきた。
最後に見たのは、私に大きな袋が被せられる光景だった。
~~~~~
暫くして私は目を覚ました。
手足は縛られているが、背中に感じる柔らかさからベッドに寝かされているようだ。
そこは豪華調度品が置かれた部屋だったが、扉が一つあるだけで、窓が一つもなく圧迫されるような気分になった。
「おや、目が覚めたかい?」
一つしかない扉が開かれ、見たことのある人物が入って来た。
その男は、以前私を押し倒そうとしてきたジョウンだった。
「やっぱり、あんたが黒幕なのね」
「そんな人聞きの悪い言い方はないだろう。ちょっと君を僕の屋敷に招待しただけだよ」
「ふん、あんな手荒で強引な手を使って、なにが招待よ」
怖い。
目の前の男がとても怖かった。
でも我慢して平気な振りをして言い返す。
「これを外しなさい! こんなことしてギルドや領主が黙っていると思うのっ」
「あぁ、大丈夫だよ。この件にはギルドも叔父の兵も動かないからね。・・・忘れたのかい? 僕は領主の兄の息子、つまり甥なんだよ?」
「な、何言って」
ニヤァ、と気持ち悪い笑みを浮かべるジョウン。
そしてゆっくりと私の方へ近づいてきた。
「い、いや!? 来ないで!」
「くくく、良い姿だね」
ジョウンが側まで来て、手を伸ばしてきた。
そして、その手が私の顔に触れそうになった時、
コンコンコン。
「ジョウン様。例の奴が渡したアイテムについて話しがあると申してます」
「ちっ、いいところで・・・・・・わかった!」
扉がノックされ、ジョウンは手を出すことなく退出していく。
『助かった』と私はほっとした。
「あ、そうだ。この部屋には魔封じが施されているから、君の得意な魔法は使えないよ。僕はちょっと用事があるから・・・また後でね」
扉から出る際に思い出したかのように言ってくる。
試しに魔法を使ってみようとするが、貯めた魔力はすぐに霧散してしまう。
「(マギー、ユーキ)」
手足を縛られ、脱出することも出来ない私は、仲間の二人を思い浮かべることしかできなかった。
最後の最後までお読み頂きありがとうございます^^
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次回は、本編に戻ります。




