責任は責任者がとるもの
悪役として登場させた領主やその甥。
頂いた感想・一言でいろいろ彼等について質問などされたのですが、今後の展開に影響するので、返信は控えさせて頂きました。
「くそがっ! どこまで性根が腐ってやがんだ、あの野郎は!」
俺はガンスに手紙の内容を教えた。
手紙には『ギルド長へ』と書かれてはいるが、差出人の名前は書かれていない。
だが内容を鑑みるにほぼ間違いなく領主が書いた物だろう。
「兄貴! こんな脅しなんて気にするこたぁねぇよっ。だよなお前ら!」
その言葉に周りにいた一部の冒険者も肯定し『構うことない』と、ジョウンと領主の元へ行こうと囃し立てる。
「・・・・・・本当にそう思うのか」
「? 兄貴?」
俺は熱を冷まさせるかのように問う。
「これにはこのギルドに『未来はない』と書かれている。多分なにかあればここを潰す気だろう」
「そんな脅しに怖じ気づくようなやつ、冒険者なんかじゃねぇぜ!」
「冒険者ならまだ良いが、他の奴はどうする気だ?」
「?」
ガンスと一部の冒険者達は首を傾げる。
だが、その他の者たちは俺が何を言わんとするか分かっているようだ。
「ガンスや俺みたいな冒険者なら良い。最悪違う街なり国へ行けばいいからな。・・・だが、ここで働いている職員はどうする? ここを離れられない冒険者は? 依頼を出したい住民は?」
「そ、それは・・・」
「・・・・・・つまりはそういうことだ」
ギルド長だって本当は悔しいのだ。
現に握り拳からは爪が食い込んでいるのか、血がポタポタと垂れている。
「ユーキの言った通りじゃ。儂はこのギルドを、守る責任があるんじゃ」
『・・・・・・』
ギルド長の言葉が静かになった場に染み渡る。
やがてぽつぽつとその場を去る者たちが出てきて、最後は俺、ガンス、ガーフィさんが残った。
「お主らはどうする」
「俺は一度マギーに会いに行きます。ガンス、もしよかったら案内してくれないか?」
「わかり・・・ました」
俺たちはその場で別れた。
~~~~~
「じゃあ兄貴・・・俺はここで」
「あぁ」
ガンスは案内だけして去っていった。
その背中には哀愁が漂っている。
マギーが収容されたのはモリア神父のところだ。
正確には教会に隣接して建っている診療所にだが。
この診療所は、医学の知識の他に回復魔法がつかえる神父やシスターが常駐しているらしい。
「こんにちは~」
「はい、どなたで―――おや、ユーキさんでしたか」
診療所の受付でマギーの事を聞いて、言われた診察室へやって来た。
マギーを診ていたのはモリア神父と初めてみるシスターだった。
俺は挨拶もそこそこにマギーの容体を聞いた。
「それでモリア神父。マギーはどういった様子なんでしょう」
「外傷は他の方と違ってありませんでした。細かく言うなら倒れた時の小さい擦り傷程度です。ですが―――」
そこまで言って、モリア神父は隣に立っていたシスターへ目配せする。
挨拶した時に名前はリアと聞いた。
「ここかららはわたくしが。マギーさんは『魔力酔い』の状態です。その為気絶した物と考えられます」
「魔力酔い? それはいったいどういった?」
リアさんの説明はこうだった。
『魔力酔い』
どんな種族にも量こそ違え、魔力が体の中に存在する。
その魔力は常に一定の状態を保たれているが、魔力酔いはその状態が乱れて状態を指す。
魔力が乱れると良くて体調不良、最悪だと気が狂ったかのように暴走してしまう。
魔力の強い者ほどなりにくいが、その分なった場合の影響は強く出てしまう。
「つまり、マギーの場合は軽い方だと」
「それが・・・何とも言えないのです」
「え?」
「通常は大規模な魔法を使ったり、特定の病気によって起きるのですが、今回はネックレスのようなアイテムを使われたと聞きました。そういったアイテムは聞いたことがないので・・・申し訳ありません」
リアさんは深く頭を下げてくる。
「いえいえっ。リアさんが悪い訳じゃないんで、頭を上げて下さい」
医療に精通している人でも知らない。相手を魔力酔いにするアイテム。
「いったいあのアイテムはいったい―――」
「それは、私が、説明、しましょう」
「!? マギー! 目が覚めたのかっ」
マギーは横にされていた寝台から上半身を起こす。
頭が痛いのか『俺の魔眼が!?』みたいに手を当てている。
「マギーさん、少しだけジッとしていて下さい」
モリア神父はマギーの頭の上に片手を出す。
下に向けられた手の平から黄緑色の光が振り注ぐ。
「―――はい結構です。どうやらまだ若干魔力が安定していませんが、大丈夫なようです」
リアさんはモリア神父の指示で、別室の応援に向かった。
おそらく他に収容されているギルドの護衛の元へ行ったのだろう。
「マギー本当に大丈夫か? まだ寝てても良いんだぞ」
「いえ、そうも、言ってられない、わ。やつらは危険よ。早く、フェルを助けに行かな、いと―――うっ」
「まだ動くのは難しいですよ。ユーキさんの言う通りまだ横になっていて下さい」
ふらつきながら立とうとするマギーを、俺とモリア神父で再び寝かせる。
「ユーキさん、あいつらは危険なの。フェルを助けないと」
「わかったから。わかってるから説明してくれ」
「・・・あいつらが私に使ったアイテム・・・・・・あれは『魔呪具』よ」
「魔呪具? あぁ、ネックレス型のアイテムのことか」
魔呪具と聞いた途端モリア神父の顔色が変わった。
「まさか」とか「そんな」とか言っている。
・・・・・・もしかして。
「魔呪具って、そんなに危険な物なのか」
「200年前の戦争で、ガルシュバが対イデリアに作った物よ。その効果は『対象の魔力を暴走させ、最後は自爆させる』よ」
「!?」
マギーがまだ生きていた頃には既に存在していたそうだ。
当時イデリアに属していたマギーは魔呪具への対応策を考えたが、それは自分のように抜きん出た魔力や才能がある者にしか出来なかったそうだ。
だが、今回はその対策もあり気絶するだけで済んだそうで良かった。
「魔呪具は現在、いかなる理由があろうとも製造、使用の全てが禁止されています。もし破れば極刑は免れません。それをまさか・・・・・・」
モリア神父は信じられないと力なく椅子に腰掛ける。
ただのバカ野郎の拉致騒ぎかと思っていたが・・・・・・。
――――――どうやら事は思いも寄らぬ方向へ進んでいるようだ。
お読み頂き誠にありがとうございます。
最近タイトルの小ネタを考えるのが大変な作者です。
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次回は、攫われたフェル視点になる予定。




