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Fantapia ~転移チートが異世界を行く~  作者: アズマ
グインタビューの街
17/92

危険の後には注意が必要

トール&マギー回。

 

 

 

 盗賊との戦闘以外、魔物も出てこないまま街に到着した。

 既に日が傾き、オレンジ色に街が染まっている。



「―――ん? あっ! フェルさ~ん!」



 出る時はニック爺が立っていたが、今度はトールが門番として立っていた。

 俺たちの姿を見つけると、『お~い』と手を振ってくる。



「なにかしら? あなたの名前を呼んでるみたいよ?」

「自警団の知り合いよ。見知った顔だから挨拶してるんでしょ」

「・・・」



 哀れトール。

 お前の気持ちはかけらもフェルに伝わってないぞ。



 ニコニコしながら手を振っていたトールだが、俺たちが近づくにつれて振るスピードが落ちていき、最後にはダランと下がってしまった。

 顔も笑顔だったのが、今は・・・あれだムンク作の『叫び』みたいな顔をしている。



「なにか面白い顔をしているわね」

「どうしたのかしら?」



 不思議がっている二人。

 だが、俺は理由を何となく知っている。



 ドドドドドッ!

 門から駆け寄ってくるトール。



「走ってきたわね」



 ドドドドドッ!

 全力疾走のトール。



「真っ直ぐこっちに来るわ」



 ズザザァッ。

 俺たちの前で足を滑らせながら急停止するトール。



「ちょ、ちょっと! な、なんで、う、腕なんか、組んでるんですか!?」



 はい。

 俺の両腕には前と同じく、右腕にフェルが抱きつき、左腕にマギーがしな垂れかかっている。

 ―――だからマギー、密着しすぎだってば。



「トール。これには深~い訳が――」

「それは私がユーキさんのパートナーだからよ」

『『『えぇ!?』』』



 見事にマギーを除く三人の声がシンクロしました。



「これがその証、ふふ」

「それ魔力を込めた指輪だから! 別に婚約指輪とかじゃないから!」

「でも、左手の薬指にはめる時何も言わなかったわよね」

「この世界でもその指は特別なんですね!?」



 ちょいちょい地球の文化が混ざってるな。

 偶然か?



「マギー! 出鱈目言うんじゃないわよ!」

「あら? 羨ましいの? だったらあなたもユーキさんから貰うと良いわ」

『『『なっ!?』』』



 シンクロパートツー。



「ダ、ダメです! フェルさんには自分がっ」

「へ? トール?」

「はうわっ!?」



 つい口走ってしまった言葉にトールは真っ赤になり、フェルはトールの方をただただ見ているだけだった。



「えぇと! その! ですから―――」



 しどろもどろになるトール。

 その目にはうっすらと涙が貯まっているようだ。



「―――もう、トールったら。マギーの悪ふざけに乗り過ぎよ」

「ですから――――――はい?」

「まったく。悪乗りした後に困っちゃうくらいなら、最初からやらなければいいのに」

「え? え?」

「私なんかじゃなくて、ちゃんと好きな人にそういうことは言いなさいよ。私なんかに言うなんて―――ありえないわよね」

「      」



 おぉう。

 フェルさん、そこまで言いますか。

 トールのやつ真っ白に燃え尽きちゃってるぞ。



「そうだトール。ふざけてないでオリオさんかニック爺を呼んでくれない? ちょっと用事があるのよ」

「ハイ。ワカリマシタ。フェルサン」



 トールはそのまま回れ右して、門近くにある自警団宿舎に入っていった。

 その背中はまるで疲れ切ったサラリーマンのようだった。



「・・・・・・ねぇユーキさん。彼ってフェルのこと」

「マギー。世の中にはそっとしておいた方がいいことがたくさんあるんだよ」

「・・・そうね」

「何の話よ」



 俺とマギーはもう見えないが、トールの背中を思い浮かべて祈りを捧げる。

『ドンマイ』と。



「ねぇ、仲間外れにしないでよ」

 


 抱きついたままだった腕を揺さぶるフェルだった。




 ~~~~~




「はぁ~。異世界人の次は古代人ってか」



 結局、ニック爺は団員の訓練指導で都合が付かず、街の巡回をしていたオリオさんと連絡を付けて貰った。

 トールはオリオさんの代理で巡回に行った。

 その時に『トールのやつ、何か生気が感じられないんだが』とオリオさんに言われたが、『そっとしてやって下さい』と言うと『何か分からんが、そうした方が良さそうだな』と言って追求はしてこなかった。



 それよりも今は目の前の問題である。



「古代人は無いのではないかしら。たかが200年前よ」

「いやいや。アンタみたいなエルフ(・・・)とか、ドワーフとかの長寿な種族ならそうかもしれんがな」



 そう、先ほど分かったのだがマギーは『エルフ』だった。

 長い髪に隠れていて気が付かなかったのだが、ちゃんと長く尖った耳もあった。



「お前さんもつくづく厄介事に巻き込まれるな。・・・いや、お前さんが厄介事を招いているのか?」

「そんなつもりはこれっぽっちもないんですがね」



 オリオさんの言葉に苦笑いを返す。

 


「そういえばフェルはまだですかね? お金がたりなかったかな?」

「そんなこたぁねぇだろ。女物の服は確かに俺等男よりは値が張るがよ」

 


 フェルは今この場にはいない。

 いったん宿舎に入り、オリオさんが来る前に『マギーの服を買ってくる』と言って街へ繰り出した。

 俺も早急に服を着せたかったので『今回の報酬、俺はいらないからその分で買ってきてくれ』と言ってフェルの背中を押した。

 フェルは今頃ギルドで報酬を受け取って、その報酬で買い物中だろう。



 早く帰ってきてくれ、フェル。

 本当に切実なんです。

 マギーさん半端ないんです。



「ちょっと熱いわね(胸元パタパタ)」

「そうかな? 俺はそうでもないけど」

「そう? 私だけかしら?(裾バサバサ)」

「・・・はしたないぞ、マギー」

「ん? 何の事かしら(谷間チラ、太ももチラ)」

「お前ら・・・一人もんの俺への当てつけか? あぁ~ん」



 マギーの『対男用女性専用兵器』のせいで、オリオさんが物凄くドスの効いた声を出し、俺のことを斜め下から睨んでくる。

 俺のせいじゃないよ。



「お待たせ~って、なに? どうしたのオリオさん?」

『『フェル! 早く服を渡してやれ!』』

「え、う、うん?」



 フェルは頭に?を浮かべながらマギーを伴って別室へと移動する。



「さてと、本題だが」

「はい」

「遺跡の未確認区域があって、人工魔物がいたってことだが」

「えぇ、それは」



 ・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・。

 ・・・・・・。



 ~~~~~



「そうか、そんなことが」

「えぇ。最後に盗賊まで現れて、本当に色々あった一日でしたよ」



 掻い摘んで話したにも関わらず、窓の外はもう薄暗くなってきている。

 オレンジ色の割合も減った街は、もうすぐ月あかりが照らし出すことだろう。



「大変だったな・・・・・・ところで、あいつら遅くねぇか」

「そういえばそうですね」

 


 あれかな。

 女性の買い物と身支度には、男の想像以上に時間が掛かるというやつ。



「―――おまたせしました」

「マギー、随分と時間、が、かか、った・・・ね」

「ほほぅ」

「私はそんな格好はやめなさいって言ったのよ。」



 俺はマギーの格好を見て思考が停止してしまった。

 一言で言えば、マギーの格好は『遊女』のそれだった。

 遊女で分からなければ『花魁(おいらん)』と言えば分かるだろうか?



 着物ような服を着崩していて、お腹と腰辺りを何本かのベルトで止めているだけで、例の兵器が零れてしまいそうだったり、見えてしまいそうだったりする。

 ローブを着ていた時よりも、肌色多めになってしまっている。



「マギー・・・その格好は?」

「とても開放感があって良いんですよ」

「いや、いくら何でもそれはありすぎよ」

「ユーキさんはこの格好がお嫌いですか?」

「へ? いや・・・はっ!?」

「ユーウーキー?」



 始まってしまった三人のごたごたに、一人蚊帳の外のオリオはどこか遠い目をしていた。



「あー、もういいわお前ら。その女もいいよ。街入っちゃって。俺はこれから一杯引っかけてくるからよ」



 そうオリオは言ったが三人は気が付かずギャーギャー騒いでいた。

 俺たちが気付いた時にはオリオはいなくなっていて、ただ机の上に『マギーの街への出入りを許可する』と書かれた木版が置かれていた。



「じゃあ、もう遅いし今日は解散にしよう」

「そうね。また明日集まりましょう。また私が安らぎの宿に行くから」

「わかった。じゃあまた明日」



 人影は二人と一人の二つに分かれた。

 フェルが一人、俺とマギーが二人の方の陰だ。



 この後、マギーが俺の部屋に泊まると言いだし、俺は違う部屋を取れと言い、フェルは私の家に来なさいと言い、道端でまた騒ぐことになったのだった。



 結局フェルの剣幕にマギーが抑えられる形で、マギーのフェル宅お泊まりが決定した。








『どうして部屋を借りるのじゃダメだったんだ? フェル』

『マギーのことだから、絶対ユーキの部屋に忍び込んでくるわよ』

『チッ(ボソ)』

 



 ・・・・・・フェル。

 ホントグッジョブ。



 そしてマギー。

 もう最初の頃のあなたはいないんですね。





 

最後までお読み下さってありがとうございます。


評価・お気に入り登録して貰えたら感激です!



トールの恋路は険しいどころの話しではない!

負けるなトール!

次回はこの世界についてお勉強などなど

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