外界は危険がいっぱい
活動報告にも書きましたが、諸事情により『1日2話投稿』から『1日1話投稿』程になります。
それでも空いた時間を見ては書いて、出来上がりしだい投稿します。
詳しくは活動報告をご覧下さい。
「おぉー、これが今の世界か」
200年もの間だ遺跡に引きこもっていた女性。
名前は『そうだな、これからはマギーとでも名乗ろうか』ということで、マギーさんと言うらしい。
もう見事なまでに偽名です。
本人は『私は生まれ変わったから、前の名前は不要』とのことだそうです。
まぁ、一度体を失ってゴーストになり、また体を得たから生まれ変わったといっても良いのかな?
「それにしても、やっぱりユーキの魔力は異常ね」
「えぇ。私もこれは想定外だったわ。まさか肉体の構築が成功するなんて」
「俺は肉体の構成ってのが出来るのに驚いたよ」
俺はマギーに敬語で話すのをやめた。
マギーがそうしてくれと言ったからだが、年上の女性にタメ口で話すのはまだちょっと意識してしまう。
マギーは今、ゴーストの透明な体ではなく、人間の肉体を持っていた。
これはあの指輪が原因だ。
正確には『指輪に込めた俺の魔力』か。
「本当は外に出ても平気になる、くらいの構築にするつもりだったのよ」
あの指輪は簡単に言うと外部バッテリーのような物だ。
マギーはゴーストでは外に出られないので、魔力を使って体を構築し直して出られるようにしようとした。
だが、そうなるために必要な魔力をマギーは持っていなかった。
そこであの指輪だ。
あの指輪に俺の魔力をチャージして、それを使おうとしたのだ。
そして、そのチャージされた魔力が想定を大きく越えていたため、より完全な肉体を作ったのだ。
「ユーキさんの魔力ならもしかしたら出来るかも、ってやってみたら本当に出来たという訳よ」
「ユーキはまるで歩く魔力貯蔵庫ね」
「それは言い得て妙ね、フェル」
「・・・もう何でも良いけどさ」
俺は散々な言われようだが、そんなことよりも、だ。
「マギー、いいかげん腕を放してくれないか?」
「それは無理ね。私は200年ぶりに自分の足で歩くのよ。今にも転んでしまいそうよ」
そう言ってマギーは俺の左腕にしがみつく力を更に強める。
しかも今の彼女は、フェルから借りてるローブを一枚着ているだけだ。
若干サイズが小さくて、胸の谷間も見えてるし、丈も太もも中程までで危険な香りをプンプンさせている。
そんな格好でしがみついてくるもんだから・・・・・・胸やら何やらの生々しい肉感が。
「(プニィ)きゃっ! ふふふ、エッチ」
「いや! わざとじゃな―――」
「ちょっとユーキ! なにしてるのよ!」
ちょっと腕を動かしたら、マギーの剥き出しの太ももに触ってしまった。
それに抗議したフェルは、今俺の右腕にしがみついている。
「フェ、フェルも離してくれよ」
「マギーが良くて、私はダメなの?」
「いや、だって・・・恥ずかしいじゃないか」
「~っ(私だって恥ずかしいわよ! でも・・・マギーを見てたら何だかモヤモヤしたんだもの)」
フェルのこの行動は、果たして焼き餅なのか。
まだフェル自身この気持ちをよく理解していないため、誰にも知ることは出来ない。
「ふふふ、フェルは可愛いわね」
「マギーも、いい加減に―――おや?」
「どうしたのユーキ?」
「ユーキさん?」
三人でガヤガヤ歩いていると、前方から複数の気配が感じ取れた。
でも、今まで感じた魔物の殺気のようではなく、まるで息を殺しているみたいだった。
二人は空気を読んで腕を放して警戒態勢を取る。
「いや、何だかこの先に何かが隠れてるような気配が」
「隠れてる? 魔物かしら」
「う~ん。魔物にしては、今までみたいに殺気を感じないんだよな。息を殺しているっていうか」
「そこまで知能が高い魔物がここにはいるのかしら?」
「いえ、そんな魔物いないはずよ」
いったいどうしよう。
「迂回しようか。何かあったら嫌だしな」
「そうね。私はユーキさんに賛成よ」
「私も迂回がいい思うわ」
二人も賛成してくれたので、俺たちは街への道を少々遠回りして行くことにした。
~~~~~
「―――ダメだ。先回りされてる」
迂回した先に、あの妙な気配が移動してきていた。
明らかにこちらに合わせて移動している。
「もしかしたら盗賊なんじゃないかしら」
「なるほど。その線は考えていなかったわね」
「盗賊? こんな場所に盗賊が出るのか」
街から一時間くらいしか離れていない森の中だぞ?
普通ならもっと人里離れた場所にいるんじゃないのか。
「街に入る直前なら気も緩んでたりするし、何より確実に人が通るから」
「旅人や行商人を襲うのは、以外とこう言った場所の方が多いのよユーキさん」
「へ~」
そうか、盗賊か。
やっぱり異世界だな。
「盗賊って倒してもいいんだよな?」
「えぇ、殺しても生け捕りにしても問題無いわ」
「昔は盗賊を討伐したら、やつらが持っていた物は討伐者の物になったのだけど、今はどうなのかしら?」
「それは同じね。―――じゃあさっさと片付けましょう。このメンバーならその辺の盗賊になんて後れを取らないわ」
フェルは杖を出して、マギーは指輪を触りながら、盗賊がいると思われる方へ進んでいく。
けど俺はなかなか前に進めなかった。
「(魔物とかなら大丈夫だったが・・・・・・俺は人相手に戦えるのか)」
「ユーキ、何してるの」
「ユーキさん、行きましょう」
「あ、あぁ・・・」
俺は二人に呼ばれて小走りに駆け寄った。
だが、その時の足は感じた事がない重さを持っていた。
~~~~~
「おい! てめぇら止まれ!」
進むこと数分。
草むらから七人の男達が飛び出してきた。
手には剣やら斧やら中には弓を持ってるものもいた。
見るからに盗賊といった格好をしていて、近づいたら臭いそうだ。
「命が欲しかったら身ぐるみ置いて行きな! そうすれば命だけは助けてやるかもな」
「ふひっ。お前そう言って前皆殺しにしたじゃねぇか」
「ちげぇねぇ! げはははっ」
喋っていたリーダー格の男の言葉に、周りにいた奴等が気持ち悪い笑みを浮かべたり、下品に笑ったりしてる。
「いや待てよ・・・そっちの女はなかなかいい女じゃねぇか」
リーダーの男はフェルトとマギーの体を上から下までジロジロ見る。
他の男達も『うへぇ色っぽいな』『あのローブの下どうなってるのかねぇ』『良い体してんじゃねェか』『ここまで上玉は久しぶりだぜ』と好き勝って言っていた。
「おいそこの兄ちゃん。もしそっちの女達を渡すなら、お前は見逃してやっても良いぜ」
「いやいや、そんなことしなくても男を殺しちまえばいいじゃないですかい」
「それもそうだな。見たところ、なかなかいい装備持ってるみたいだしな。というわけで兄ちゃん、死んでくれや」
「女のことは気にするなよ。俺たちで可愛がってやるからよぉ」
『がっはははは』と男達は笑った。
何というか――――――うん。
「こいつら殺してもいいや」
人間相手に戦うのが怖かったが、こいつらは別だ。
こいつらは人間の格好をした魔物だ。
「そうよ、盗賊相手に慈悲なんかいらないわ」
「フェル、ユーキさんの気持ちも考えてあげましょう」
「いや良いんだ。もう気にしないから」
俺は刀を抜いて男達を睨み付ける。
「なんだ、その目は。女の前だからって格好つけてんじゃねぇぞ!」
リーダーの男が手にした斧で襲いかかってきた。
だがその動きは単調で、避けるのは容易かった。
「ちっ! 避けてばっかじゃねぇか! どうしたよ、びびっちまったか~」
安い挑発だとは思ったが、良いだろう。
「じゃあ、行くぞ?」
「あぁ? 何が―――(ボト)え?」
俺は振り下ろされた斧を持つ手を切り落とした。
男は失った手を、何が何だか分からないといった『ポカン』とした目で見ていた。
「て、てめぇぇぇぇ!」
「遅いよ」
「グエェ」
ようやく再起動した男は残った腕で殴りかかってきたが、俺は拳が届く前に男の喉を突き刺した。
「―――ふぅ」
男は喉の傷と口から大量の血を流しだして、地面に倒れて痙攣していた。
だがそれも徐々に治まって、最後にはピクリともしなくなった。
周りを見ると、フェルが炎で、マギーは風だろうか?
フェルの炎で男達が火だるまになり、マギーが左手を突き出すと指輪が発光し、前方の男達が吹き飛ばされ木に激突して絶命する。
「おらあぁぁぁっ」
「おっと」
二人を見ていたらまた違う男が襲いかかってきた。
二人とも大丈夫みたいだし、俺は俺で目の前の敵を片付けよう。
~~~~~
「二人もとケガはないか?」
「えぇ、むしろ物足りないくらいだわ」
「私も大丈夫よ。ただ幾らか指輪の魔力を消費したから、込め直してくれるかしら」
「それくらいならお安いご用だ」
俺はマギーの指輪に触れながら魔力を込める。
マギーはこの指輪の魔力を使って肉体を構成しているため、魔力が切れるとゴーストに戻ってしまう。
そのため指輪に魔力を蓄えておく必要があるのだ。
「これくらいで良いかな?」
「えぇ、十分よ。ありがとうユーキさん」
「さてと、じゃあ戦利品を集めましょう。・・・と言っても、お金くらいしかなさそうだけどね」
男達が持っていた武器もあるが、どれも状態が悪いため持って帰っても使用がないらしい。
服や鎧なんかも・・・・・・臭いがきつくて・・・ねぇ?
「じゃあ、さっさと済ませて帰ろうか」
「そうね。依頼の品も届けないといけないし」
腰の袋をポンと叩いてフェルは言った。
アオノソウの最後の一本は、遺跡を出る際に『アオノソウ? それなら』とマギーが案内してくれた先で確保した。
「(・・・・・・人間相手でも殺せたな)」
俺も異世界に順応してきたという事だろうか。
いつの間にか足の重みもなくなっており、いつも通りの足取りで俺たちはグインタビューを目指した。
ここまでお読み頂きありがとうございます^^
評価・お気に入り登録していただけたら作者はとっても嬉しいです!
今回は初めて人を手に掛けるシーンでした。
でも、外道だったので主人公は大丈夫みたいでしたが・・・これが外道じゃない相手だったら・・・どうなっていたでしょう。
次回は再び街での話しです。
作者的には、ほのぼの日常が書きやすいです。
※誤字修正9/5




