釣り
釣り好きの父子が見つけた、釣りの穴場とは・・・?!
父子が仲良く釣り糸を垂れている。
「釣れないね、お父さん。」子供が大きなあくびをしながら、父親を見た。
「釣りは我慢が第一なんだ・・・。」
父親は子供の言葉に、自分自身に問いかけるように呟いた。
「これだけ広いうみだもの、場所を変えてみようよ?!」
子供はもう一度あくびをした。
母親は夕食の支度をしながら、二人の帰りを待っていた。
夫の釣道楽には、ほとほと愛想が尽きていた。
”どうせ今回も釣果はないだろう”
「ただいま~!」
元気よく子供が駆け込んできた。
「釣れた?」
「ダメ・・・!」
「お父さんは何処?」
「あっちだよ。」
子供は後ろを振り返りながら、家の奥に消えていった。
母親がそちらを見ると、トボトボと帰ってくる夫の姿が見える。
”はぁ~、情けない!‘
母親は大きくため息をついた。
「あなた、釣りのせいでお仕事に影響が出てるそうね・・・!?」
夕食時、妻が皮肉な目を向けた。
「そんなことはないよ。」
「この前、釣りに夢中になっていて、仕事に遅刻したでしょう!?」
「誰がそんな事を・・・?!」
夫がうろたえながら言った。
妻はそれには答えずひとり言のように呟くのだった。
「格下げだけは嫌ですよ。」
「お父さん、次は場所を変えてみようよ。」
気まずい空気を察して子供が口を挟んだ。
「そうだな、次は場所を変えてみるか!」
夫は子供の助け舟に、妻の顔色を伺いながら笑顔を見せるのであった。
「また釣りですか?」
妻は呆れたように夫と子供を見た。
「ああ、良い穴場を見つけたんだ。今日は大漁間違いなしだ。」
「ほんと?お父さん!」
子供が顔を輝かせた。
父親は子供の方に向き直って力強く頷く。
「今夜は大事なお仕事が、今度ミカエ・・・・。」
「分かっているさ、それまでには帰るよ。」
妻の言葉を、途中で遮りながら夫は言った。
「さあ行くぞ!」
「ほんとに釣れるのかな?」
「ああ、今度は間違いないよ」
「楽しみだね!」
夫と子供の声が遠のいていく・・・。
「ほんとに分かっているのかしら?今度、神聖議会に遅刻したら、神から天使に格下げになることを・・・。」
妻は心配顔で呟くのであった。
「さあ着いたぞ、太陽系のあの辺第三惑星に釣り糸をたらしてごらん、餌は・・・。」
父親の言葉に子供は釣竿を振り上げた。
「り・・臨時ニュースを申し上げます。突然人が空中に舞い上がり、消えてしまうという事件?が続発しています。目撃者によりますと、消えた人達が落ちていたお金を拾ったところ、空中に舞い上がり・・・。それは、まるで何者かに釣りあげられたみたいであった・・・・・・と。」
終わりです
私も昔はよく釣りをしたものです。釣れなくても何時間も我慢できる不思議なレジャーですよね。