8 双子勇者を瞬殺してみた
翌日の夜。エリゴス国の広場にて。俺たちはターゲットを遠目から目視した。
「あの二人はベリトとフェニックスか」
勇者パーティーに所属している双子。ベリトは火、フェニックスは氷の魔術を扱う。そういやパーティーにいたころ。俺は、あの二人にお試しで魔術をぶつけられたな。
うざいからやめろと言っても聞きやしない。大して痛くなかったから恨んじゃいないけど。
「姫様はまだこないのでありますか?」
「でありますか?」
最初に口を開いたのはベリト。オウム返しの方はフェニックスだな。
「それで? どっちを殺します?」
ティアが片手でターゲットたちを示す。
「ん? その質問はどういう意味だ?」
「失礼。私も戦うので、どちらと戦いますか?」
「え? お前も戦うのか?」
「もちろん。色々と鬱憤が貯まっておりますので」
ティアの目がメラメラと燃えている。因縁を果たす前の狩人のように。
「それともう一つ。修行中の私が、勇者様相手にどこまで通用するのか試したいのです」
「ふーん。ま、好きにすれば。依頼人の参加は特に止めない」
「わがままを聞いてくださりありがとうございます」
「おう。で? ラストはどうする?」
「あはは。私は戦えないからパス。見張りと地面の補修、それから二人の援護を担当するね」
「おーけー。なら、役割が決まったところで」
俺たちは広場へと足を踏み入れる。
「な、何でありますか!? お前たちは!?」
「たちは!?」
ベリトとフェニックスが警戒。無理もないか。こんな仮面をつけた連中が現れたら。
「では私はベリト様を。そちらはフェニックス様をお願いしますね?」
「うーす」
俺とティアは、それぞれの対戦相手へと向かっていく。
「悪いが殺させて貰う。仕事なんでな」
「であります!?」
フェニックスが氷の刃を出してきた。俺はそれを回避。この攻撃。前とあんまり変わってねえ。これはすぐに決着が着くな。
「お」
ふとティアの姿が目に止まる。そういや、あいつの詳しい実力は把握できてないな。
一般兵士を吹き飛ばせるゴリラなのはわかる。けど、その上限がどの程度かは不明。
せっかくだ。ビジネスパートナーとして、どこまでやれるか見物するとしますか。
「俺っちの炎魔術、とくと味わうであります!」
ベリトの炎。それはティアの体を一瞬にして包み込む。こっちも進歩してねえな。さて、あいつはどう出る?
「どうしました? その程度で終わりですか?」
燃え盛る炎の中から微かな笑い声。
「弱すぎますよ?」
ティアは炎をかき消していく。軽いやけどすらない。どうやら耐久面もゴリラみたいだな。
「魔術が効いてないのでありますか!?」
「魔術? ああ、この弱い攻撃ですね? ごめんなさい。全く効いてません」
「お、オラアアアア!」
ベリトが火球を放つ。
「もしかして焦ってます?」
ティアは指先だけでそれらを弾く。
「ああ!? 変な方向に飛ばさないでよ!?」
それをラストの出した盾が吸収していく。あまりラストの負担を増やすなよ。俺の言えた義理じゃないけど。
「オラアアアア!」
「鬱陶しいのでやめて貰えますか?」
「オラアアアア!」
「困りますよ。そんな弱い攻撃で、必死アピールをされても」
「勇者パーティーの一員であるこのベリトが! こんな怪しい奴に負けるわけにはいかないのであります!」
「はあ。勇者様の実力はこの程度ですか。これでは修行になりませんね」
ティアが足を踏み込み、一気に加速。ベリトとの距離が零に。
「な!? こんな近く」
「詰みです。さようなら」
ティアの拳。それはベリトの顔面を殴る。
「ゴッ、ハアガア!?」
ティアの攻撃を受けたベリトは回転。そのまま端に吹き飛ばされていく。素手で一撃か。やっぱりゴリラだな。
「であります!? であります!? であります!?」
俺の前にいるフェニックスが狼狽えている。そういやいたな。ずっとティアの方を見ていて、存在感を忘れてたわ。
「うるせえ」
俺はフェニックスの頭を鷲掴み。そのまま顔面へと膝蹴り。どこかに飛ばないよう、その場に固定した。
「ごがっ!? で、ありま、す……」
フェニックスの首が項垂れる。倒したみたいだな。
「お見事です」
ティアたちが俺の元に。
「お前もな。まさかあそこまでやるとは」
「ルシファー様ほどでは」
「いえいえ。そちら程では」
「いえいえ。何を仰いますか」
「いえいえ」「いえいえ」
「どっちも化け物ゴリラだよ……。私から見れば」
ラストからの発言は心外だ。俺はゴリラじゃない。ただちょっと戦えるだけの一般人だ。その辺りは勘違いしないでもらいたい。
「さて。仕事は終わったな。このまま帰って一眠りでも」
パチパチ
「グヘヘ。素晴らしい。勇者が破滅する様は」
「「「!」」」
拍手がした方に首を向ける。そこには、どこかで見た鎧の人物。こちらに歩いてくる。
「お前、誰だ?」
「我?」
鎧は自身を指差す。
「ふーむ。連日の出来事の黒幕。と言っておこうか」




