7 過去を瞬殺してみた
一年前。
「勇者ルシファー! このベリアルの名の元、パーティーから抜けて貰う!」
とある室内。俺はパーティーリーダーのベリアルから追放を宣告された。ショックはない。
なぜなら、俺は日本からの転生者。この展開は漫画などで飽きるほど読み慣れた。そんなことを言われても、あっそとしか思わない。
「ちょっと待ってベリアルさん!? いきなり何を言ってるの!?」
同じパーティーメンバーのラストが割り込んでくる。
「止めるなラスト! ルシファーは不要。これは決まったことなんだ!」
「なにいってんの!? ルシファーさんがいなかったら、私たちはここまでこれなかったよね!?」
「もちろん! それは知ってるさ!」
「じゃあなんで」
「はっきり言おう! 彼の追放理由! それは僕らの名誉の為だ!」
ベリアルが俺に人差し指を突きつけてくる。
「君は魔術が使えない無能! しかし、それを帳消しにするほどの強さを持っている!」
「おう」
「そんな君が万が一魔王を倒してみろ? ボクらは無能扱いされてしまう! あのパーティーは、ルシファー以外お荷物なんだと」
「へえ」
「それを防ぐにはどうしたらいいか? そう! 君を追放することだ!」
「おお。確かに」
俺は思わず拍手をしてしまう。言い訳しないで堂々と理由を言う。その姿勢に感服した。ここまで私利私欲丸出しだと応援したくなるな。
「ルシファーさんは、こんな下らない理由に乗らないでよ!? 自分のピンチでしょ!?」
「おっそうだな」
「ふふ! 君のような愚鈍な頭でも、理解する知能はあるみたいだ!」
「いや!? ルシファーさんは聞き流してるだけだから!」
「はいはい。辞める辞める」
「本人もこう言ってることだ! ラスト! ここは大人しく従うのが筋じゃないかな?」
「何が筋だ! 二人とも頭おかしいよ! ねえ! 皆もそう思うでしょ!?」
ラストが他のメンバーに問いかける。
「うるせえ! 手柄は俺のもんだ!」
「……」
「彼がいると、チームの輪が乱れますぞ?」
「早く消えるのであります」
「あります!」
「そんな無能を庇う理由はない!」
残りの六人、誰一人庇っちゃくれねえ。俺そんなに嫌われてたのか。荷物持ちとか雑用とか率先してやってたんだけどな。人間関係って複雑で理解不能だな。
「わかったわかった。もう出ていくから」
俺は皆から背を向ける。
「あ、そうだ! 君が表舞台に戻ってこれないよう、世界中にある噂を流させて貰った!」
「噂?」
「ルシファーの強さ! それは金で雇った魔術師による、強化魔術の賜物だと!」
「ガッツリ嘘じゃん! なんでそんなことを流したの!?」
「すまない! 彼を再起不能にするには、これしか思いつかなかったんだ! ふははは!」
謝るのか。こいつ、相当なサイコだな。絶対録な死に方しない。
「わかって欲しい! これは皆の為なんだ!」
「もー、下らねえ。好きにしろ。じゃあな」
俺は扉に辿り着き、ドアノブを捻る。そのまま振り替えることなく部屋から退出した。関わるだけ時間の無駄だな。
『あ! ルシファーさん! 行かないでよ!』
『おい待てラスト! あんな男を追いかけたら、君まで汚名を被ることになるぞ!』
『悪いけど、こんなパーティーにはもう入れないから!』
あいつら。廊下の外まで聞こえる声で喧嘩してるな。
『君も皆のことを考えられないとは! いいだろう! 勇者ラスト! 君も追放だ!』
『言われなくても、こっちから出ていくから!』
ドアの開閉。それと共に誰かの駆け足。
「あ?」
背後から小さい温もり。誰かが俺を抱き締めているようだ。
「はぁ。お前まで来るのかよ」
「エヘヘ。きちゃった」
こうして俺とラストは、勇者パーティーから追放された。
◇
現在。
「それ以降、俺たちは表舞台から姿を消した。で、現在に至ると」
「へぇ? ふぅん」
話を聞いていたティアが笑顔に。その笑みには深い影。喜びという感情はどこにもない。
「そんな事情があったんですねぇ」
彼女は自身の手を握りしめる。血が出てるな。
「なるほどぉ。勇者パーティーのリーダー様はよほど死にたいようでぇ」
「落ち着きなよ。もう過ぎたことだし」
一方のラストは服の補修を行っていた。相変わらず器用だな。
「ラスト様は何とも思ってないのですか?」
「んー、あれからずいぶん時間が経ったしあまり」
「私はいつまでも覚えてますよ? そんなことをされたら」
「ティアさんよ、俺たちの過去でカッカすんな」
「しかしですねぇ? 物事には限度というものがありましてぇ」
「他者を陥れるために下らない嘘をつく。誰でもやってることだ。気にしすぎ」
「ですが!」
「そんなに怒らなくても、あいつらとは顔を合わせるだろ? 怒りはその時までとっとけ。ふああー」
眠気が襲ってきたな。過度な運動と食事をとったんだ。眠くなって当然だ。
「もう寝るわ。明日の勇者暗殺に備えて。じゃ、お休み」
俺はソファーから立ち上がり、寝室へと向かっていく。その後の記憶はない。多分、すぐに眠りに落ちたからだろう。




