表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/7

4 姫の依頼を受けてみた

「では、依頼の話をする前に改めて自己紹介を。私はティア=フィクサー。この国で王女をしております」


 ティアがペコリと一礼。


「お久しぶりです。ティア様」


 ラストは深々とお辞儀をする。


「勇者ラスト=サタナエル様。お久しぶりですね」


「勇者はお辞めください。私たちはパーティーを追放された身。それを名乗る資格はないので」


「でしたら、私に敬語や様はなしで。気安く話しかけてもらえれば」


「は、はあ。じゃあ、ティアさんで」

 

「はい。それと」


 ティアが俺の方に体を向ける。


「ルシファー様もお元気そうで」


「ああ。しっかし、あんたが俺たちの依頼人だったとはな」


「驚きました?」


「まあ。それより俺たちに関わるのは、これが最初で最後にしておけ」


 ここは闇の世界。光の象徴たる姫様が来るとこじゃない。痛い目を見る前に、とっとと立ち去ってもらう。


「ん? 別にお二人との接触は、今回が初めてではありませんよ?」


「「は?」」


「この事務所の隠蔽、情報の遮断、仕事の斡旋」


「おい。まさかそれ全部」


「全てとは言いません。しかし、出来る限りのサポートはしてきました」


「まじかよ」


 不自然だとは思っていた。俺たちがこの仕事を初めてはや一年。いくら慎重に動いているとはいえ、周りに気づかれないのは順調すぎだと。


 まさか、俺たちの成功にそんなカラクリがあったとは。


「本当は直接サポートしたかったのですが、周りを誤魔化すのに時間を要してしまいました」


「ふーん。で? なんで俺たちのサポートを?」


「私、ルシファー様のファンですので」


「ファン?」


「城で初めてあなた様を見た時から、惚れ込んでしまったのです」


 ティアは目を輝かせ、鼻息を荒くする。


 初めてというと、俺たちが勇者パーティーだった頃。この国の城に行った時か。確か城の兵士相手に力を出したような。


「よくわからんが、それなら他の奴に執着すればいいだろ? 俺みたいな闇に固執しないで」


「他の方々は語るに値しません。実力、人柄、将来性、内心、過去。全てが腐りきってます」


「そこまで言うか」 


「挙げ句の果てには、お二人を追放する始末。正直、彼らに勇者を名乗る資格はないと思っています」


「ずいぶんと口が回るな」


「ええ。私にとっての勇者様は、ここにいるお二人だけですので」


「言いすぎだろ」

「そんなことはないかなー」


「ご謙遜しなくても。お二人が凄いのはよーく知ってますので」


 この勢い。嘘を言ってるようには見えないな。


「で? そんな勇者オタクなお前が何の用だ?」


 姫様がわざわざ出向いてくるんだ。きっと録な内容でないことは間違いない。


「差し詰め、お茶会の誘いか?」


「いえ。これからお二人には私の依頼、勇者パーティー七人の殺害を受けて貰いたいのです」


「「ぶほっ!?」」


 すごいこと言ってきたなこいつ。いくらあいつらが嫌いだからって、殺す騒動まで発展するのかよ。さすがに冗談だよな? 


「一年前。お二人が追放されたあと、彼らは悪事に荷担し始めました。例えば、昨日の奴隷売買」


「あいつらが昨日の依頼に関わっていた、ね。証拠は?」


「こちらです」


 ティアは資料をテーブルに広げる。そこには、目を覆いたくなる事柄が列挙。どれも死罪に該当するものばかり。


 これが勇者パーティーの悪事ね。噂には聞いていた。手段を選ばないやり方を実行していると。実際、仕事の関係で奴らの所業を目にしたことがある。


 だから、この証拠は本物だろう。


「彼らは裁かれるべき悪。野放しにしては、世に負をもたらします。ですので、この依頼を」


「ちょっ!? ちょっと待って!?」


 勢いよく立ち上がるラスト。


「ティアさんの言ってることはわかったよ?

彼らがあれなのも理解した」


「話が早くて助かります」


「けど、勇者パーティーは世界を救う役目、魔王を倒す使命を持ってるんだよ!?」


 魔王ってのは、この世界を支配する闇。勇者と敵対している存在だったな。


「ですね」


「そんな彼らを殺す!? これがどういうことかわかってるの!?」


「どうともなりませんよ? 彼らでは使命を果たすことはできませんので」


「いやいや!? それだと誰が魔王を」


「ご心配なさらずとも」


 ティアは俺にゆっくりとウインクをする。


「最も確実で、最高の代案を用意していますので」


 なんで俺の方を見た。すごく嫌な予感がするぞ。


「とにかく魔王の件はご心配なさらず。お二人はこの依頼を受けてもらえたら」


「そーは言われても」


「もしや未練がありますか? 同郷かつ元パーティーメンバーたちを手にかけることに」


「あー、いやそれは」


「あなた方を追放した彼らに同情する必要はありますか?」


「えーと」


 ラストは俺の方に一瞬だけ目線を送る。自分じゃ決められない。最終決断を俺に委ねたいか。


「おいティア」


「ルシファー様、なんでしょう?」


「俺たちは闇側の人間。つまり、勇者パーティーと同類。裁かれるべき悪って奴だ」


「お二人は悪とはいえ、ある程度の良心は線引きしているでしょう?」


「一応。けど、それで正義になるわけじゃない」


 罪の大小は関係ない。俺も向こうも悪だ。


「わかっています。ですが、お二人は勇者パーティーよりも信頼に値する方々です」


「ずいぶんと買ってくれるんだな?」


「もちろんです。ルシファー様のファンですから」


 こいつ。何を言っても聞かなそうだな。やれやれ。とんだ依頼人が来ちまったもんだ。


「わかった。そこまで言うなら、お前の依頼を引き受けてやる」


「ありがとうございます」


「ただし、わかるな? 引き受けたら最後、お前も罪の共犯者だ」


「もちろんです」


「依頼中の裏切りとかはなしな?」


「私が裏切った時は、容赦なく切り捨てて下さい」


 この目。本気だ。命を捨てる覚悟。それを真っ直ぐと示している。やれやれ。ここまで言わせた以上、受けない選択肢はないか。


「そういうことだ。この依頼を受ける。ラスト、かまわないか?」


 迷いの意思を見せていたラストに同意を求める。


「はぁ……いいよ。ルシファーさんが決めたなら、それに従うだけだし」


「悪いな」


「でしたらさっそく仕事を。今夜、勇者アモン様の屋敷に向かって下さい」


 アモン。俺の元パーティーメンバーだな。


「なんのために?」


「アモン様を殺害するためです」


 いきなり今日かよ。ティア様はせっかちなようで。


「奴はこの国に帰ってきているのか?」


「アモン様及び勇者パーティーは、このエリゴスに帰郷しております」


「ちょうど良いタイミングってやつか」


「ええ。ですので今夜、アモン様の殺害をお願いします」


 ◇


 夜中。俺とラストはアモンの屋敷に潜入していた。


「ここか」


 現在、ターゲットのいる部屋前に到着。


「やるんだよね?」


「まあな」


「未練とかは」


「ねえな。それに、あいつらとは仲が良かった訳じゃないし」 


「そっか」


「もういいか? さっさと終わらせたい」


 俺はゆっくりと部屋の扉を開く。


「ん?」


 扉の先。アモンの部屋内。視界にあるものが映る。中央の床。やや大きな影。正体不明のそれが横向きで倒れている。


「なんだ? あー、まじか」


「うそ……」

  

 俺たちはそれを間近で確認。なんなのか一発で理解した。影の正体。それはアモンの死体だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ