2 ギルドマスターを瞬殺してみた
「集めた情報によると、夜な夜な冒険者ギルドで奴隷売買が行われてるみたいだね」
夜。俺とラストは次の仕事先に向かっていた。目的地は冒険者ギルド。暗殺ターゲットはギルドマスター等。
「ギルドマスター主導で、他のSランク冒険者がその補佐をしているみたい」
「その取引を辞めさせるため、依頼人は俺たちに依頼したみたいだな」
「かもね。ねえ、確か奴隷売買って禁止されてたよね?」
「ばれたら死罪だな」
「んー、だったら国に突きだした方がいいんじゃない? その方が無駄に動かなくても」
「そんな単純じゃないんだろうよ」
今回の依頼。おそらく、国の上層部が関わっているに違いない。依頼書に同封されていた金の流れがそれを示していた。
仮に善意でこれを報告したとしよう。それを聞いた上の奴は面白くないと思う。そして、この件をもみ消す。これではとても正攻法では解決しない。
「だから、俺たちみたいな闇側の存在に頼んだんだろうよ」
「そっか」
ラストは悲しそうな目をする。
「なんだよ?」
「いや。この仕事を始めて一年。本当に今更なんだけどさ」
「おう」
「私達って落ちるところまで落ちたんだね」
「そうか? お前はともかく、俺は元からこんな感じだったぞ?」
「そんなことないもん! だって、前は勇者パーティーで」
「はいはい。下らない過去はそこまで。切り替えろ」
俺たちはある建物にたどり着く。
「ここが冒険者ギルドだな」
「そうみたいだね」
ラストがドアに触れてみる。ガチャガチャ。入り口は開かない。
「鍵がかかってるね」
「めんどくせーな。一気に壊すか」
「ダメだよ。物音を立てたら気づかれちゃう」
「じゃあどうするんだ?」
「こうするんだよ」
ラストがなにかを唱える。すると、鍵からカチリと音。
「開いたよ」
ラストは軽くドアを二、三度開く。
「よし、じゃあ奇襲されないよう、周りに人気がないか調べるね?」
再びなにかを唱えるラスト。
「その力、魔術か」
「そうだよ」
魔術ってのはこの世界の不思議な力だったな。才能があるやつはそれで戦闘を行う。
「俺も魔術が使えたら楽なんだけどな」
俺はその力を使うことができない。何一つ。
「仕方ないよ。特殊な才能がないと使えないし」
「特殊ねぇ。一応俺、異世界転生をしたっていう特殊な存在なんだけどな」
「イセカイ?」
おっと口が滑ってしまった。この件は俺だけの最重要機密。話したところで理解できない。さっさと流した方がいい。
「今のは寝言だ。忘れろ」
「ふーん。ルシファーさんがそういうなら。あ、外に気配はないみたい」
「ならよし。じゃ、行くか」
俺たちは慎重にギルドへと侵入していく。
「ゆっくり進むぞ?」
「わかってるよ」
俺たちは足音一つ立てず、すり足で進む。中はほんのり暗い。人気はなし。ここで取引をするのは不可能だ。となると
「隠し部屋だな。ラスト、魔術で探せるか?」
「うーん。探してみたけど反応がないね。おそらく、向こうは隠蔽魔術を使ってるかも」
隠蔽魔術。気配とかを隠す魔術か。それだと 、ラストの力で部屋を発見するのは厳しいか。
「地力で探すしかないか」
俺たちは縦横無尽に視線を巡らせる。少しの違和感も見逃さない観察眼で。
「これか?」
床に不自然なくぼみを発見。そこに手を添えてみる。これ動かせるな。俺はそれをゆっくりと上げてみた。
「ビンゴ」
床下からまばゆい光と人気。目的地はこの下らしい。
「見つけたみたいだね」
「ああ。ここからは俺の仕事だ」
「私は何をすればいい?」
「魔術で援護してくれ。音が漏れない防音魔術、この床下の出入り口を封鎖する魔術、それから」
「多いねえ。あのさあ、魔術の同時使用って難しいんだよ?」
「無理か?」
「んー、やってみる。ルシファーさんの役に立ちたいから」
「よし、なら戦闘開始だ」
まず俺から床下に降りていく。上手く着地できたな。多少高さはあったが問題ない。
「なんとか」
「キャアアア!」
「ぐお」
まさかのトラブル発生。落下してきたラストの足が、俺の首もとに命中。痛みはない。けど、このタイミングでドジを踏まれるとは。気が削がれる。
「いたた、はっ! ご、ごめんね!? 大丈夫!?」
「全然。それより魔術を使ってくれ。敵さんはもう臨戦態勢に入ってる」
俺は正面に視線を固定。目に映ったのはきらびやかな内装、鎖で拘束された人間たち、ターゲット。どうやら闇の取引があるのは事実みたいだ。ここまではいい。
けど、
「「「……」」」
奥の立派な衣装の男たちは知らないな。いかにも金払いが良さそうに見えるが。あくまで予想だが、この奴隷売買の買い手といったところか。
「なんだお前ら? どうやって入ってきやがった?」
一人の男が腕を鳴らしながら、俺たちの元にやってくる。こいつは確かギルドマスターだな。
「話す義理はない」
「なるほど。このギルドマスター、モラクスに対して舐めた口を利くと」
モラクスは拳をこちらに向けてくる。
「ずいぶんな挨拶だな」
「ははは! 挨拶だけじゃない! 冥土の土産にしてやる!」
「手加減なしか」
俺は片手を伸ばす。ペチ
「な、受け止め」
「お返しだ」
モラクスの拳を握り砕く。
「があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
「静かにしろ。耳障りだ」
「や、やめっ」
もがき苦しむモラクスに蹴りを入れる。
「がっ」
壁に激突するモラクス。呼吸音すら聞こえてこない。絶命したようだ。
「あとはSランク冒険者どもか」
息つく間もなく、残るターゲットたちが一斉に襲いかかってくる。
「確実に仕留めるのに十秒、いや五秒だな。それで終わらせる」
俺は剣を抜刀。奴らの首めがけて振り狙う。
「「「「ぐほっ」」」」
「六秒か、手元が狂ったな」
ターゲットダウン。これで依頼は完了だ。
「とはいかないか」
ここにはターゲット以外の人間がいる。次はそいつらをどうにかしなければ。




