10 最終決戦の舞台に行ってみた
ベリアルの屋敷にて。俺たちは客人として、応接室に招待されていた。
そんな現在。俺とラストが隣合わせでソファーに着席。向かい側には、ティアが三人の勇者に囲まれている。ハーレムかよ。
「本来は他の四人の勇者も出迎えるところを申し訳ございません!」
「いえいえ」
「あ、そうだ! もしも魔王を討伐した暁には、是非とも我々の武勲を語り継いで頂きたい!」
「そうですねぇ。考えておきます」
今ティアと話しているのはベリアル。勇者パーティーのリーダー。俺たちを追放した張本人。皆の為と言って、ありがた迷惑を振り撒く異常者だ。
「グヘヘ! ティア様はいい女だな! この後、俺んちにこないか?」
「あ、結構です」
こいつはセーレ。パーティーの副リーダー。性格はチンピラ。何かにつけて、俺を無能だなんだと言っていた。お前もそんなに大したことないだろうに。
俺、知ってるんだぞ? お前がいつも後ろで傍観してるだけなのを。
「……」
「……」
最後はオロバス。性格は無口。誰に対しても口を開くことはない。こいつのエピソードは特に思い付かないな。
以上がこの三人の情報。俺たちはこいつらを暗殺するのが目的。そして、この中には俺たちを利用する異常者が存在していると。
全く見当がつかねえ。もう、面倒だからこの場で終わらせたい。けど
「まだ、殺しちゃだめなんだよな?」
俺はラストに小声で話す。
「うん。ティアさんの情報によれば、彼らはこの屋敷の地下で何かをしているみたい」モグモグ。ゴクン
「何かってなんだっけ?」
「そこまでは。ティアさんも知らないみたい。ただ、よからぬ物だろうから絶対に勇者と共に葬るべきだって」モグモグ。ゴクン
「なるほど。ちなみに奴らを殺して、俺たちだけで地下に行くのはだめなんだよな?」
「地下の入り口は彼らにしか開けられない。無理に開ければ、ここら一帯が吹き飛ぶ魔術が作動するんだって」モグモグ。ゴクン
こいつずっと仮面の隙間から菓子食ってんな。まあ、茶菓子に手を付けないのは不自然。敵を欺く演技なんだろう。
「あ、おかわりで」
屋敷の使用人へ腕を上げるラスト。食いすぎ。こいつ、無心で菓子を頬張ってる。よく敵地で喉が通るよな。この食いしん坊め。
「はあ。つまり、奴らを殺すと同時に、地下の何かを破壊。これが今回の依頼か」
「そうだよ」モグモグ
「面倒だが、依頼人の指示なら従うしかねえな」
「だね」モグモグ
「お前なあ。なんでそんな呑気にバクバクと食べるんだよ?」
「ん? そこにお菓子があるから?」
哲学?
「あのさあ。毒とか入ってたらどうするんだよ」
「ん? 解毒魔術を使えるから別に」
解毒手段があるからお構い無くと? 思考がぶっ飛んでるな。
「それよりルシファーさんも食べなよ。依頼は食わねばなんとやらだよ」
「むぐっ」
ラストに無理やり菓子を詰め込まれてしまった。上手いなあ。
「ズズッ。はあ」
ラストのやつ、茶まですすってやがる。もうこれただのお茶会だろ。
「あ、そうだ。ところでベリアル様」
勇者たちと雑談をしていたティアが、真剣な顔つきに。ようやくか。
「他の貴族様から聞いたのですが、ここの地下には凄いものがあるのだとか?」
「はて?」
「とぼけなくても。それを見世物に、貴族様から資金を徴収しているのは知っております」
ティアが無数の資料をテーブルにばらまく。そこには、この屋敷に来訪した貴族たちの出入り。資金の流れ等が記載されていた。
「やれやれ。どうやらティア様は、我々の悪戯に興味があるようで」
「ええ。ぜひ、私達にもお見せしていただきたいのです」
「「「……」」」
三人が顔を合わせる。
「もちろん口外は致しません。そして、少額ではありますが」
ティアは大きな銭袋をテーブルに置く。音からして、かなりの大金が入っているのだろう。
「あれ、報酬の何倍あるんだよ」
「んー、十倍くらいじゃないかな?」
くれ。それを俺たちに。
「この大金を我々に?」
ベリアルの首はお金とティアを行き来。
「もちろん。その代わり、こちらの要求を飲むのが条件ですが」
「「「……」」」
「これでも足りないようなら、そうですねぇ。あなた方の望む物を何でも一つ、差し上げましょう」
「「「何でも?」」」
「ええ。何でも」
「「「……」」」
三人はコクンと頷き合う。この反応、釣れたみたいだな。
「事情を知られている以上、ティア様に隠し事は出来ない、か。良いでしょう!」
ベリアルたちは立ち上がり、部屋の入り口へと向かって行く。
「我々の秘密兵器! ティア様が見たいなら、お見せしましょう!」
「まあ。提案を受けてくださり感謝します」
「いえいえ! ですが、この事は他言無用で! そちらの方々も!」
俺たちは適当に頷く。
「では了承したところで、地下に案内致しましょう!」
◇
「ここが地下の入り口です」
屋敷を歩いて数分。俺たちは巨大な扉前に来ていた。
「はあ!」
ベリアルが扉に手を添え、魔術を唱える。扉が赤く点灯。ベリアルの魔術という鍵が、それを開門する。
「さて、この先はやや暗い! 僕がティア様をエスコートしますよ!」
「ありがとうございます」
ティアはベリアルからの手を取る。俺にはなんとなくわかる。ティアのやつ、ベリアルのことを激しく嫌悪してやがる。その証拠に口元が小さく引き吊ってるし。
「では、いきますよ!」
俺たちは地下へと足を踏み入れていく。数分後。
「これがあなた方の秘密兵器とやらですか?」
俺たちの前に現れたのは、黒い球体。
「ええ! これは闇の力! それを凝縮したものです!」




