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第一話:プロゲーマーのチートでイキったらバグ敵にフルボッコ!脇役が強すぎて俺、必要?


タケルの意識は暗闇に沈んでいた。

「クソ…なんで俺がこんな目に…」

佐藤タケル、30歳。プロゲーマーとして『戦嵐紀』のeスポーツ大会で優勝を重ね、ゲーム知識は神の領域だった。マップ、敵、アイテム、すべて頭に叩き込んでいる。だが、妻の美咲は違った。「ゲームで遊んでないで、まともに働け」と冷たい目。彼女は大手企業の経理で、バリバリ稼ぐキャリアウーマン。タケルが大会で賞金を獲っても、「子供じみてる」と鼻で笑った。

裏切りは静かにやってきた。美咲の浮気――同僚との密会をタケルは水(見ず)に流した。知ってたけど、黙ってた。だが、彼女の横領がバレた時、事態は一変。会社の数千万の不正をタケルに押しつけ、「お前なんか無職同然よ」と離婚届を叩きつけた。捨てられた夜、原因不明の病がタケルを襲う。身体は鉛、息は途切れそう。それでも、最期に『戦嵐紀』を起動。ピクセル調の戦場、刀と魔法の乱舞、仲間との絆――それがタケルの世界だった。

「せめて…ゲームなら…無双できたのに…」

モニターが白く光り、意識が呑まれた。

目を開けると、タケルは戦場に立っていた。

「は!?何!?ここ、どこ!?」

血と鉄の匂いが鼻をつく。剣戟の響き、遠くで燃える城の炎。視界にはピクセルが粗く乱れるゲームグラフィック、なのに風の冷たさ、土の感触は生々しくリアルだ。

「まさか…戦嵐紀の世界!?転生した!?」

タケルは拳を握り、笑いが止まらなかった。目の前に浮かぶステータス画面――攻撃力9999、防御力9999、スピード9999。プロゲーマーのデータがそのまま、ぶっ壊れチートスペック。

「ハハッ!なろう主人公じゃん!俺、最強!」

頭には『戦嵐紀』の全知識。敵の弱点、隠しルート、アイテムの位置、完璧。さらに、必殺技「嵐斬」まで使える。

「美咲も横領もクソくらえ!ここで無双して天下取るぜ!」

タケルは戦場に飛び込んだ。目の前に現れたのは、ボロボロの鎧の雑魚兵。ゲームならLv1で一撃のザコだ。

「楽勝!くらえ、嵐斬!」

剣を振り上げ、光の奔流が地面を抉り、雑魚兵を直撃。爆音と土煙が戦場を包んだ。

だが、煙が晴れた瞬間、タケルの笑顔が凍りついた。

雑魚兵、ノーダメージ。

「は!?お前、HP10万!?雑魚なのに!?」

ステータス画面に映る敵の数値はバグってる。HP10万、攻撃力5000、AIがまるでプロゲーマー。雑魚兵がニヤリと笑い、戦術的な動きでタケルを囲んだ。

「待て!こんな雑魚、俺の知識なら瞬殺のはずだろ!?」

次の瞬間、雑魚兵の槍がタケルの腹を貫いた。防御力9999が紙のよう。血が噴き出し、地面に叩きつけられる。

「ぐはっ!なんで!?俺、チートなのに!」

雑魚兵の連撃が襲う。槍の嵐、魔法の爆炎、タケルのステータスは意味をなさない。HPバーが赤く点滅、視界が揺れる。

その時、戦場に影が閃いた。黒い鎧の女、刀が月光のように輝く。彼女の目はタケルを一瞥し、「みっともない」と吐き捨てた。

一閃。

刀が空を裂き、HP10万の雑魚兵がピクセルの欠片となって爆散。衝撃波が戦場を震わせ、ゲームの物理法をねじ曲げる力。

「サクラ」と彼女は刀を納め、名乗った。「ここにいるのはプロか雑魚か。どっちだ?」

タケルは這いつつ立ち上がり、腹を押さえた。「お、俺はタケル!プロゲーマーだ!攻撃力9999、防御力9999のチート持ち!」

「数字はゴミだ。使えなきゃ」とサクラは鼻で笑い、タケルを値踏み。「プロなら実力を見せろ。一対一でな」

「決闘!?今!?」タケルの声が裏返ったが、プロの血が騒いだ。サクラは剣豪系、動きは強いが癖がある。『戦嵐紀』を1000時間やり込んだ知識なら勝てる。

「受けてやる!」剣を構え、ステータス画面で「嵐斬」を選択。「プロの意地、見せたる!」

戦場が静まり、兵士たちはフリーズしたスプライトのよう。サクラの構えは緩いが、目は燃えるように鋭い。タケルは突進し、「嵐斬」を放つ空気が裂け、エネルギーの奔流が地面を抉った。完璧な一撃。

サクラは動かず、刀が閃いて攻撃を弾く。反撃は電光石火。タケルの防御力9999が紙のように破られ、地面に叩きつけられる。

「な、なんだこれ!?」タケルは転がり、次の斬撃を回避。サクラの剣技はゲームの枠を超え、まるで大会決勝の読み合い。

「遅い」とサクラが言うや、刀がタケルの頬をかすめ、血が滲む。ピクセルの世界なのに、痛みがリアルだ。

タケルはプロゲーマーの頭をフル回転。剣豪の弱点は構えの癖。サクラの刀は高く、前に重心――速攻向きだが、広範囲の斬撃は隙だらけ。1000時間の経験が蘇る。

わざとよろめき、サクラを誘う。彼女が広範囲の斬撃で突っ込んだ瞬間、タケルはスピード9999でかわし、カウンタースキル「嵐返し」を発動。彼女の力を利用し、剣がサクラの肩をかすめた。浅い傷だが、十分。

サクラが動きを止め、目を細めた。「…やるじゃん、プロ」と、初めて笑った。「お前、面白い。ついてく価値はあるかも」

タケルは息を切らし、HPが10%。「仲間になるのか?マジで?」

「調子に乗るな」とサクラは刀を納めた。「この世界、敵がバグってるし、私みたいなのもおかしい。お前、ゲームの何か知ってるだろ?あと…昔のコスプレ写真、絶対バラすなよ。eスポーツ会場でバズったやつな」

「コスプレ?大会!?」タケルが呆気に取られると、「黙れ」とサクラが一喝。遠くで新たな敵が現れ、ステータスが無限に膨れ上がる。

タケルは剣を握り直した。美咲の裏切り、横領、病、クソくらえの世界。あの地獄を思えば、このバグった戦場は自由だ。敵は神レベル、仲間は化け物級、チートも不安定。でも、プロゲーマーの意地がある。

「この世界、ぶっ壊れてるぜ」とタケルは笑った。「でも、俺は俺のルールで生きる。サクラ、一緒にこのゲーム、ぶち壊そうぜ!」

サクラが片眉を上げ、微かに頷いた。「口だけなら死ぬぞ。ついてこい」

戦場が揺れ、敵のステータスが無限に膨れ上がる。タケルはニヤリと笑った。この命、プロとして燃やすだけだ。

第一話、END



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