ハーレムとはロマン、異世界ならなおのこと
ある日、俺の身に不思議なことが起こった。単刀直入に説明しよう。異世界アニメ好きの高校生である俺、『八乙女 操太』は朝起きたら中世ヨーロッパ風の異世界に飛ばされていたのだ。ちなみに特にそれといった能力に目覚めたわけではない。そういうことで少しがっかりしていた俺だが、案外ラッキーなことがあった。それは転生者である俺が身分を得るために級籍所…まあ現実世界でいう市役所みたいなところに行き、そこで住居をもらった時のことだった。
「…シェアハウス?」
「はい。今そこしか空いてなくて」
受付のお姉さんは分厚い書類を見ながら頭をかく。
「俺は構いませんよ?人がいても特に気にしないので」
「それならよかったです。ただ一つ問題があって…」
「はい?」
「実はこのシェアハウス、つい最近まで男子禁制のシェアハウスだったこともあって今は女性の方しか住んでおられないんですよね…」
「…は?」
そう、このシェアハウス、『聖炎の宿』はつい最近まで男子禁制であった国営のシェアハウスなのだ。そのせいで俺以外の居住者が全員女子…てっきり異世界で魔王を討伐する系のものかと思っていたが、実は異世界ハーレム系のものだったというわけだ。
「…気まずいようでしたら他の物件をなんとか手配いたしますので、どうかしばらくお待ちを…」
「いや、お姉さん!最高じゃないですか!?」
「はい?ああ、そう…ですか…では、こちらの物件を手配しますね…?」
お姉さんはわかりやすく引いているようだったが、手際よく手続きを済ませてくれ、早速そのシェアハウスの鍵をくれた。鍵といっても、魔力のこもっている腕輪のようなものだ。これで素早く鍵の開け閉めができる。世界観の割に現代よりもずっと先進的ではないだろうか…俺はその鍵を受け取ると、腕にしっかりとはめ、足取りも軽く級籍所を後にするのだった。
「待ってろよ!異世界ハーレムライフー!」
級籍所からしばらく歩くと、目的のシェアハウスが見えてきた。
「…ついた」
町外れの辺鄙な場所に、二階建てのごく一般的な家が立っている。一瞬これがそうなのかと疑ってしまいそうになるが、玄関横の壁には『聖炎の宿』の文字が書かれた看板がかかっている。それを確認した俺は、意を決して戸を叩く。
「ごめんくださーい」
しばらく経ってから、「はい」という少女と思わしき人の返事が小さく返ってきた。そしてドアを開けて出てきたのは、華奢な体つきをした少女だった。青みがかった白色のショートヘアに、まん丸とした赤い瞳…俺よりも何歳か年下だろう。
「…えっと、どなたですか?なんのご用ですか?セールスならお断りですよ」
「いやいや、俺は八乙女 操太、今日から君の同居人になる者だよ」
俺がそういうと、彼女はひどく怯えた表情をして体を少し引いた。
「なっ、何のいたずらですか…?ここは男子禁制ですよ、早く帰ってください」
「ええ!?聞いてた話と違うんだけど」
俺が困惑しているとそこに、彼女の後ろから少し歳が上と見られる黒髪のロングヘアがなんとも綺麗な女性が顔を覗かせた。
「こーら、シラノちゃん。この間男子禁制は解除されたでしょ?私たちの家族を困らせないの」
「あ、ホド姉さん。そうでしたね、男子禁制は解除されたんでした…確かに同居人が増えるとは聞いていましたが、早速男の人が来るとは思わず…はぁ…ホド姉さんが、来てからのお楽しみだなんて言って情報をギリギリまで話さないでおくからですよ」
「ええっと…」
「ああ、ソウタくんだっけ、ごめんね?シラノちゃんは慎重なだけだから許してあげて?あ、この子はシラノちゃんっていうの。シラノ・シヴァルーベル。で、私はホド・ヤヌデル。ホド姉さんって呼んでね。多分君より年上だろうからさ?」
なかなか人当たりのいいお姉さんキャラが出てきた。遠慮なくホド姉さんと呼ばせてもらおう。それに無口で毒舌な妹キャラ…分からせがいがある。これはなかなか幸先のいいスタートになった気がする。
「よっ、よろしくお願いします。ホド姉さん…?」
「ようし!それじゃ、今から私が君の部屋に案内してあげる。ついてきて!」
俺はホド姉さんに連れられ、二階の隅っこの方にある部屋へと案内された。中は思ったより狭くなく、一人で過ごす分には申し分ない広さだ。
「おお、結構広いんですね」
「でしょ?実は他のみんなの部屋よりも一畳だけ広いんだっ…準備が出来たら下に降りてきて。早速歓迎会を始めるから」
「あ、はい。どうも…」
ホド姉さんは歓迎会をやると言ってそそくさと階段を駆け降りていった。歓迎会などというものは慣れていないので気恥ずかしさはあるが、ホド姉さんがあまりに乗り気なので俺はそれに大人しく従うしか無かった。俺は改めて辺りを見回してみる。すでに机やベッドなどの家具は配備されているようだった。俺がここに転移してきたのは今日のことなのだが、とてつもない早さで準備したのだろうか、それとも前からあったものなのだろうか…
「何はともあれ、順調に行きそうで何よりだ」
俺は少しの間だけベッドで横になり、この幸せを噛み締めることにした。
…一方その頃一階では…
「…ねえシラノちゃん、どう男の子は?」
「それを聞いてどうするんですか?」
「だって、シラノちゃんは生まれて初めて男の子を見るんでしょ?どう思った?」
ホド姉さんがどことなく気味の悪い笑顔でシラノに尋ねる。
「どうって…なんていうか、がっしりしてて、あと声が低かったです。ちょっと怖いっていうか」
「そんなのミュインちゃんだって一緒じゃない。…ふーん…私はあの子可愛いと思うけどなぁ…なんていうかぁ、食べちゃいたい。フハハッ」
ホド姉さんは不気味な表情で笑う。それを見ていたシラノは思わず唾を飲み込んだ。
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